第4話 つながる想い

彼女の誕生日が近づいていた。


キャバクラでは誕生日は客を呼ぶ絶好の機会だ。

彼も例外ではない。

彼女から「来てほしい」と言われたが、言われなくても行くつもりだった。


その夜、彼は花束を手に店を訪れた。


少しして、彼女が現れる。

花束を受け取った彼女は、嬉しそうに微笑んだ。


彼もまた、嬉しかった。


誕生日とあって、他の客からの指名も入り、彼女は何度か席を離れた。

分かってはいたが、彼は動揺してしまう。


彼女が離れた間、代わりに別の女の子が席についたが、彼の心は上の空だった。


彼女の前では、いつものようにウィッグを外す気にはなれなかった。

格好をつけたかったのかもしれない。


やがて彼女が席に戻ってくる。


「お帰りなさい」と彼が言うと、「ただいま」と彼女は笑って返した。


少し会話を交わした後、彼は意を決してアフターに誘った。


短い沈黙のあと――


「良いですよ」


彼女はそう言って、ふわりと笑った。


その笑顔が、たまらなかった。


僧侶として心を落ち着けることには慣れているはずだったが、この時ばかりは胸が高鳴った。


思わず小さなガッツポーズを取ると、それを見た彼女がまた笑ってくれた。


彼にとっては一大事。

だが、彼女にとっては営業の延長なのかもしれない。


それでも、彼は嬉しかった。


何気ない会話を交わしながら、夜の街を歩く。

普段は一人で歩く夜道も、今日は彼女が隣にいる。


「やっぱり、アフターってよく誘われるの?」


彼がそう尋ねると、彼女は少し俯きながら答えた。


「アフターなんて、行くことないです…」


「えっ…」


「貴方だから、断らなかっただけです」


彼女はそう言って、笑った。


思いもよらぬ返答に、彼の頭は真っ白になった。


けれど、思考が追いつくまでに時間はかからなかった。


その夜、ふたりの想いが、静かに繋がった。

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