おまけ集 使い所のないオマケを消化しようのコーナー



小話1 料理と戦う近衛騎士


城では白い悪魔と呼ばれているゲッカでも強敵はいる

そのひとつが…料理である

丸焦げの何かを見つめ、ゲッカは項垂れる


「くそ……どうしてこんなことに……」


『遡ること数十分前』

「ゲッカちゃんってなんでも出来そうだよね!」


紅葉の唐突な言葉にゲッカの表情が凍る

紅葉と愛華の会話に聞き耳を立てる


「そりゃあそうでしょ……いい大人なんだし」


グサッと心に深い傷を負う

言えない、剣術以外何も出来ないなど


「料理とかめちゃくちゃお洒落なんじゃない!?食べてみたいな〜!」


「ここの世界の料理、あまり食べたことないし、確かに興味あるかも。ね、ゲッカ」


愛華に急に話を振られたゲッカは

凍った表情をすぐに溶かし、固まった脳をフル回転させる


「そうだな……機会があれば、作ってやろう」


この言い方で、逃げ切れる……!

ゲッカが心の中で上手く言えたとガッツポーズをすると


「あ、そういえば、ここの宿屋のおばちゃんと仲良くなったんだ!言ってみれば料理させてくれるかも!」


今度はゲッカの表情が石化する


「紅葉さん……ほんとに誰とも仲良くなれるね」


「えへへ〜あ、もちろん、 親友は愛華ちゃんだけだからね!」

「いや、別に嫉妬してる訳じゃないし」

「え〜?じゃあなんで、髪先いじってるのかな〜?」

「うっさい」


「じゃ、そゆことでよろしくゲッカちゃん!」


『時は戻り、キッチンにて』


本当に作る羽目になるとは……

作る工程を2人見られなくて安心した

しかし、今更作れないとは言えない……


「ゲッカ?失礼しますね」


そんな考え事をしてるとベリーが入ってくる

「姫、これは、その」

と言い訳しようとすると

「フフ、分かっていますよ。ゲッカは剣術だけだなんて、ガーラから何回か聞かされましたから」


「す、すまない姫…まさか手伝いに?」


「ええ、お姉様達に美味しいもの、食べさせてあげましょ♪」


その後、ちゃんとした料理が提供できたらしいが

ベリーは流石にしばらく料理したくありませんね……とこぼしたという




小話2 寝室に潜り込む怪しい姫


姫は今、窮地に立たされている

愛華とモネが寝ている寝室に忍び込んだはいいが…


「キュ?」


モネが起きてこちらを見ていることだ

叫ばれて起きてもらっては困る

ベリーは人差し指を立てて「しーっですよ!しーっ!」と小声で頼む


せっかく、意を決して部屋に入ったのに

モネに邪魔をされたくない

そう思ったベリーだが

問題は、モネが愛華の腕の中にいることだ

モネを抱き枕にしていることは知っていたが

なんとも羨ましい……とジェラシーを隠しきれない


「キュ?キュキュキュ?」


モネは何かベリーに聞いているようだが

残念ながら何を言ってるか分からなかった

ベリーは「出来れば、そこを……私に譲って欲しいというかぁ……」とお願いしてみる


「キュ!」


モネは理解してくれたのか

スルりと愛華の腕の中から出てくれる

これで……!とベリーは試しに隣に寝転んでみる


(はあぁぁ♡お姉様がこんな近くに♡♡)


ベリーは愛華を見つめ

うっとりと見惚れていると

愛華が手探りで何かを探し始めた

もしかしてモネを探してる?とベリーが気づいた瞬間

ベリーを掴みそのまま抱きしめる


(ひゃわーーーーー!!!?!?!?)


驚いたがギリギリで大声を出さずに済んだ

(お姉様がこんなに近くにぃ!?)

興奮で息が荒くなる

愛華は起きる気配がなく

さらに抱擁が強くなる


(も、もしかして、このまま一夜を過ごしてしまうのですか!?ま、まだそこまで心の準備が!も、モネ!助けて〜!)


「キュ♪」


モネは面白がってるのか一切助けてくれなかった

その次の日の朝、気絶した状態でベリーは見つかったという


「……ねえ愛華ちゃん、言い訳があるなら聞くけど」

「い、いや、私は何も…」

「アイカ君……まさかそんなやつだったとは」

「違うって、ていうか、なんでベリーが私の部屋に…」


「愛華ぁ〜昨夜はお楽しみでしたね〜」

「だから違うって!!!」



小話3 無口ちゃんはイチャイチャしたい


私は悩んでいる

どうやったら紅葉さんのように素直になれるのか


「え?どうしてそんなに素直かって?」


実際に本人に聞いてみた

紅葉さんは考え事するように指で顎をつかむ動作をする

「ん〜〜〜考えるより先に動いちゃうからな〜」


思った以上の脳筋に、ため息が出る

「相談しといてため息つかないでよ!」と紅葉さんに突っ込まれる


「もうちょっとこう……あるでしょ」


「ないよ〜だってあたし難しいこと考えるの嫌いだもん!」


相談する相手間違えたか……?

かといって、ベリーやゲッカに相談する訳にもいかないし

その日は結局解決せず、眠りについた


『なにか悩んでるようね』


夢の中で鈴のような声に目を覚まし、女の子に会った

『また会ったわねアイカ♪』とウインクしてくれる

悩んでること自体は見抜かれてるため

話すこともないし、と相談してみる


『そうね、あなたはいつも、センセイと絡む時と、他の人と絡む時じゃ全く違うのを直した方がいいんじゃない?』


そんなつもりはなかったため驚いてしまう

というかこの子、私の事どこまで知ってるんだ…


「そんなに違うかな?」


『あら、自覚なかったの?モミジには普通だけど、ベリーやゲッカにはすっっごく優しいじゃない?

後、センセイはあなたに会いに来たんでしょ?もっと優しくしなくちゃ♪』


確かに、最近は先生と一緒にいることに慣れてきてたけど

そもそも先生は無理やりここにきたんだった

あの独りだった期間は本当に辛かったし……


「分かった、先生にまた感謝伝えないと。あと今度こそデート誘う」


『うんうん、その意気よ♪またなにかあったら、いつでも相談乗ってあげる♪』


「ありがとう……ねえ、君には夢以外でいつ会えるの」


「うふふ、焦っちゃダメよ?時が来たら、ちゃんとあなたに会いに行くわ」


「そっか……ありがとう」


小話6に続く……

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