第20話 打ち上げ


「どうだった?」

「はい!大丈夫です!」

「よし!なら行こうか」

 親に電話で許可をもらい、車を発進させ、さっき予約した寿司屋に向かう。

「ナツメはどこの探索者学校なんだ?」

「国立海星探索者学校です」

「へぇ、有名なのか?」

「お前は……海星って言ったら有名ランカーの母校だぞ?」

「その有名ランカーってのがよく分からなくてな」

「「えぇー」」

 2人してハモる事ないだろ?

「ランカーって言ったら、ランキング上位の事で、そのランキングは各国別、世界ランキングと2種類あります」

「その中でも世界ランキングの上位を有名ランカーっていってるんだよ」

 ほうほう、そんなランキングがあるのか。

「で?日本人は?」

「まずは『栄光』のアタッカー、齋藤昴サイトウスバルが、日本1位で世界第18位にランキングされてるな!」

「ですね、後、『閻魔』のデスサイズ、愛内健人アイウチケントさん、日本2位で世界26位」

 へぇ、結構上位に食い込んでるんだな。


「よし着いたぞ」

「まぁ、有名なクランは誰かしらランキングに載ってるな」

「はいはい、んじゃ行くぞー」

 まぁ、俺には関係ないしな。

「お前から聞いといて、まぁいっか」

「え?ここですか?高そうですけど」

「ルカの奢りだ、沢山食べようぜ!」

 と店の中に入る。

「予約した里見です」

「いらっしゃいませ、カウンターにどうぞ」

 結構客が入ってるな。予約が取れてよかった。


「はわわ、こんな高級なところで」

「あはは、沢山食べな」

 まぁ、俺も来るのは初めてだけどな。

「生一つにノンアルと」

「こ、コーラで」

 と店の雰囲気に合わせ小さく乾杯をする。

 もちろん俺はノンアルだ。運転手だしな。


「あはは、それで?」

「ゴブリンに殺されかけました」

「よく頑張ったな」

「えへへ、なんとか」

 とナツメの話を聞きながら寿司を食べる。

「里見さんに助けてもらわなかったらどうなっていたか」

「まぁ、あいつらも捕まっただろうし、今のナツメには勝てないだろ?」

「はい!」

「ナツメはこれで卒業できるのか?」

 そうだった、それ大事だな。

「はい!勉強はできる方なので問題ありません。本当にありがとうございます」

「良かったな!」

「はい!」


 たらふく寿司を食べ、車で家まで送る。

「ほら、大事な牙だ」

「はい、ありがとうございます」

 と片腕ほどある牙を渡して、

「また、会えますよね?」

「おう、いずれまたな!」

「だな」

「はい!ありがとうございました」

 と言って別れる。


「いい子だったな」

「そうだな、まさか化けるとはな」

「レアジョブだし、ランカーになるかもな」

「あはは、そりゃいいな!」

 と今度はマー坊を家まで送る。

 昔の話をしながらドライブだ。

 あっという間に到着したな。

「今日はありがとな!」

「こっちこそいい経験になった。まだ借りは返しきれてないしな!」

「おう、また頼るかもな」

「了解!またな!」

「じゃーな」

 とマンションから出てようやく1人になる。


 音楽を聴きながら運転し、途中でコンビニに寄って雑誌とコーヒーを買って、帰り道をドライブだ。

 ようやく着いたマンションの駐車場に車を駐める。

 もう夜の23時を回ってしまった。

 部屋に入ってビールをようやく飲めるな。

「クハァ!たまにはこんな日もいいな!」

 と言いながら、ソファーに座り雑誌を開くと今週のランキングが載っている。

「へぇ、お!『golden eagle』って属性武器を買ったとこか、世界第9位に上がったんだな」

 と知ってる名前はそれくらいだ。

 誰がランキングしてるのか気になっていたが、ランキングストーンと呼ばれる星5ダンジョンで見つかったアイテムを参考にしているらしい。

 ネット情報だから分からんがそんなものがあるんだな。


 探索者情報誌を買うのは最初のゴブリンを倒した時以来か。

 あの時はビールで濡れて読めなかったが、色々と載っている。

 探索者になってようやく必要な情報だな。


 初心者向けの情報から、有名ランカーの話まで、まぁ、知らなかったことが知れて良かった。

 雑誌を読みながらビールを一本飲んで、シャワーを浴びてベッドに横になる。

 今日はいい夢が見られそうだな。


 翌日はベッドでゴロゴロ、スマホで動画を見ていると、画面が切り替わりミドリからの着信だ。

「よぉ」

『よぉ、じゃないわよ。私も借りが出来たわね』

「あぁ、ニュース見たのか」

『12億?しかも2本だし流石に払えないわよ』

「まぁ、貸し1つだな」

『まぁ、2つでも3つでもいいわよ、とりあえずパパに相談して税理士紹介するわ』

 ほぉ、パパ呼びなんだな。

「おぉ、ありがたい!」

 と、税理士の番号を教えてもらう。

「探索者専門にしてる税理士だからちゃんとしてるわよ」

「おう、ありがとな」

「こうやって少しずつでも借りを返さないとね」

 と少し喋り電話を切る。


 新しい人に電話するのはちょい緊張するな。

「あ、もしもし、木下翠さんに」

『あぁ、里見さんね。新宿にある事務所までこれる?』

「はい、場所さえわかれば」

『じゃ、メールするから』

 と切られた。

 ん?客は俺だよな?

 “ブブッ” とスマホが鳴る。

「……早いな」


 しかし雑な対応だったな。

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