第3話 キャインと元勇者パーティー双剣使いのミシェル

魔物の大群は以外と早く片付いたな。

俺は、魔法を使って魔物を殺した後、後に居た

この村の民の元に向かい再び歩き出した。


「怪我はないか?」

俺は神ではなく邪神の類だと思うんだがな。


「おぉ!神よ。」

この村の民達はちょっと反応がオーバー過ぎるん

じゃないだろうか?

この村の人間は俺を神と認識しているようだ。

それは、間違った認識なのにな。


「君達………お前達に言っておく事がある。

俺は神ではなく邪神だ。

お前達にとって俺はいい神にはなり得ない。

もう……分かっているだろ?

俺の翼の色は黒……真っ黒だ。

神の………勇者の裁きを受けたからだ。」

俺がここまで言ってもこの人間達は理解してくれない。こんなに言ってもまだ俺なんかに頭を下げる。


「どうしてお兄ちゃんは神の裁きを受けちゃったの?」

小さな少女にそう聞かれるが俺は正直に答える

べきなのか?


「…………俺は」


「君は」

ここに居たんだな。そりゃそうだよな。

人類最後の砦であるアレンスター領にこの者が

居ない訳がない……か。


「久しいな。元勇者パーティー。

双剣士、エルフのミシェル・ヴァール。」


「そう……ね。まさか貴方に会える日が来るなんて

思ってなかったわよ。キャイン。」

ミシェル・ヴァール。

エルフの王女もここに居ると言う事は本当に

この世界の人類は終わるのだな。

あの勇者がやられるなんて未だに信じられん。

それ程に邪神は強いのか。


「貴方は、あまり変わらないのね。

その、綺麗な翼以外は。」

綺麗?笑えない冗談だな。


「お前は随分と見ない内に目が腐ったようだな。

俺の翼の何処が綺麗なんだ?

こんなの薄汚いだけだ。

……………お前が居ても………駄目……なんだな」

ミシェルは、勇者パーティーだ。

様々なモンスターと戦って来ただろう。

経験はそこらの冒険者よりも上だろう。

実力だって最高クラスのS級は間違いなくある。

エルフ族は人族よりも魔力が桁違いに高い。

魔法が最も得意な種族である。

それは、ミシェルも例外ではない。

扱う武器は双剣だが遠距離からの魔法も得意と

していた。今は魔法が使えないだろうが……

だからこそ今のアレンスター領には、ミシェルが

必要だろう。



「そうね。私では敵わないわよ。

邪神の配下ですらランクB以上。

そんなのがうじゃうじゃ居るのよ。

勝てないわよ、魔法すら使えない人類……嫌、この

世界に居る種族ではね。

今更、貴方はどうしてここに?

私達を嘲笑いに来たのかしら?」

嘲笑いに……か。嘲笑えたらどんなに楽な事か。

今の俺にそんな余裕はないし、今回は民達の祈りが

天界に届いてこの世界を唯一見ていた俺だけが

召喚されてしまっただけだ。

本当はこの世界に来るつもりなんてなかった。

これる筈がない。一度民達を死に追いやった

張本人だぞ?先代からあまり良い環境とは

言えなかったし、税もかなり多く民から取っていた。それを俺がもっと酷くした。

既に酷かった状況を悪化させた。

どんな顔して民に会えと言うんだ?

俺はずっと後悔している。

あの時はまだ小さい子供だからと言い訳なんて出来ない、出来る筈がない。

人を殺したんだ。


「冗談よ、貴方が嘲笑う為なんかに私に顔を見せる

訳ないわよね……助けに来てくれたんでしょ?

貴方は外見もだけど、中身も変わってないのね。

少し安心したわよ。」

ミシェルは、何を言ってるんだ?

何故、俺に笑顔を見せるんだ?

嫌、ミシェルも疲れているんだろう。

けど………俺の事を理解してるみたいに

話されるのは不愉快だ。


「まるで……俺の事を理解しているかの様に言うんだな。」

俺の事なんて何も知らない癖に。

俺の何を知ってるんだよ。


「えぇ、少しなら知ってるわよ?

旧友の話だもの。」

こいつは、何を言ってる、旧友だと?

俺がミシェルの旧友?


「お前は俺を馬鹿にしてるのか?

いつから俺とお前は旧友になったんだ?」

旧友と言う言葉に少しイラッとしてしまい、

目を鋭くしてしまった。

表情にも出ていたかも知れない。

でも、仕方がないだろ?

あの時、俺を助けてくれる人間なんて居なかった。

俺に友と呼べる人間など、一人も居ない。


「あら、それはごめんなさいね。

気を悪くさせたのなら謝るわ。

でも、私は貴方を友と呼ぶわよ?

貴方は、少し誤解してるようだから伝えておくわ。

私だけじゃないわよ?

他の勇者パーティーの子達も私と同じ気持ちよ?

これは私が勝手に語ってる訳ではないわよ?

あの子達の口から聞いたわよ?」


「俺と友だと?俺を殺した癖にか?

俺を殺した事については何も怒っていない。

怒れる立場に俺はいない。

あれは、俺の自業自得だからな。

だが……俺の友を語るのか?俺を殺した奴が?

俺を馬鹿にしているとしか思えないぞ?」


「確かに馬鹿にしていると思われても仕方ないわよね。でもねキャイン、私達は貴方の追い求めた物に

とても興味があったのよ。

だから調べたわよ、貴方の屋敷全てを。

貴方を殺した時に勇者が見たのよ。

貴方の思い出の全てを、貴方の思いを。

きっと勇者の力なんだと思う。

貴方は、先代とは違う、根本から違ったわよ。

貴方には信念があった。

絶対に村を発展させたいと……そう本気で願って

いた。貴方はやり方を知らなかっただけ。

本当に貴方は村の民の事を思って居た。

勇者に何度刺されようとも立ち上がる貴方の事を

勇者は好いていたわよ?

妹の事まで貴方は考えていた。

だから、妹を王都の学園に送った。

村を守る為に必要な筈の全ての兵を妹の護衛に付けた。領主としては絶対にあってはならない事かも

知れないけど、兄としては正しい行いよ。

貴方は死ぬ間際に言ったわよね?

勇者………アイル・ソルトに。

友になって欲しいと。

私達はそれに答えたまでよ。」

本当に友になろうとする奴があるかよ。

民達から必要のない税を取ろうとする屑だぞ俺は?


「後!税を取った理由も貴方の日記に記されて

いたわよ?孤児院に送ってたんでしょ?

貴方は自分に出来る事を全力で頑張った。

私達の勘違いで貴方の全てを無駄にしてしまった。

貴方が望むなら首を差し出すわ。

王の事を信じ貴方を勝手に悪者だって誤解してた。

貴方と本気で話し合えばあんな事にならなかった。

だから……貴方が罪を背負う必要なんてないわ!

本当に罪を背負わなければいけないのは私達よ。」

何で俺の思ってる事が分かるんだよ。

でも……そうか。友……か。

俺にも友が出来たのか。


「お前達には何の罪もない。

お前達はすべき事をしたまでだ。

俺のやり方に問題があったのは事実だし、沢山の民が死んだのも事実だ。

俺に問題があったんだよ。俺が領主じゃなければ

生きた命だって多くあった筈だ。」


「それは違うんじゃない?

貴方が救った命も必ずあるわよ。」


「ミシェル様!立ち話はいけません!

神を立たせて話をするなど駄目ですよ!

早く村の城に行きましょう!」

気付けば俺とミシェルの間に修道服を来た金髪の

女が居た。そして女が言うには村には大きな

城があるらしい。そこには勇者やこの村の英雄が

住んで居るとか。そしてその城の所有者は俺の

妹だったメリア・アレンスターだと言う。

妹の城か。それは少し気になるな。

だがそうか、この村には英雄がまだ居るのか。

まだ、人類は終わってないのだな。


「そうね、アレンスター城に行きましょうか。

貴方の妹も貴方に会いたいでしょうし。」

妹に会う?今の俺は妹とは、関係ない。


「俺は会わんぞ。」


「何を言ってるんだ!妹だって貴方に。」

妹は俺に会いたくないだろ。

家でめっちゃ虐めてる記憶があるぞ。


「とにかく会わんったら会わん。」

会わせる顔がないし、こんな顔見たくないだろ。


「な、何を言ってるのよ!

子供見たいな事言わないでくれる?!」

と言うか俺が死んでからそんなに立ってないのか?

天界に1000年間は居たけどなぁ。

多分地上と天界の時間の流れは違うんだろう。











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