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■ダンジョンのモンスターを闇魔法で殲滅したので俺好みに改築して住んでたら、ラスボス扱いされてました 第11話(1)

著者:■天刀有

キャッチコピー:■これは闇によって照らされる物語――快適ダンジョンライフ、開幕!



蓮人れんとがパーティーを組んで俺を倒そうと向かっているとはね■どうしたもんかな……」


 闇に満たされた無天廊の地下35階で、俺は玉座に肘をついてぼんやりとしながらそう呟いた■

 多分、蓮人は俺がここでこうして生きているとは知らないだろうし……何か勘違いをしているんだろうな、と思う■だけど、どこからどう説明したものだろう■何だかんだで楽しくやっているから放っておいてくれ、なんて言ったらややこしくなりそうだ■


「僭越ながら、ここは私にお任せいただいては」


 とイズミさんが玉座の前に膝を突いて言った■


「うん……それが良いかもしれない■ちょっと今は蓮人と会って話せる状況じゃないから、一旦それとなく追い返してもらえるかな■手間をかけるね、イズミさん」

「御意――」


 イズミさんが、無天廊で見つけた魔力の込められた戦闘用のドレスに着替えていく■鍛えられた、筋肉質でありながら艶めかしい肢体が、俺の視界に入ってくる……■闇の中でも俺には見えてるって、いつも言っているのに……■

 最初の探検隊の隊長を務めた女傑「天雷のイズミ」が、こんなところで俺に忠誠を誓って動いているというのも説明に困ってしまう部分だ■行きがかり上、仕方のないことではあったのだが……■


「俺も後方から闇魔法で支援させてもらうよ」

「感謝いたします」


 地上から地下35階までのモンスターは、既に俺が殲滅したか眷属化しているので問題にならない■もちろん、イズミさんの強さも折り紙つきだしね■

 イズミさんが蓮人と出会うまでの間に、俺は適当なモンスターを蓮人のパーティーに送り込んで、蓮人以外のメンバーを入り口に帰還ロールバックさせておく■

 “闇を見る目オクルス”で様子を確認しつつ、ダンジョンウルフや蟲毒サソリの群れを操って、低層階で蓮人の仲間たちをあっさりと追い返すことができた■どうも急造パーティーらしく、蓮人以外はレベルが低いようだった■

 これで蓮人も諦めてくれれば話が早いんだが……と思っていたのだけど、蓮人は一人になっても地下を目指すことをやめなかった■


 蓮人が地下10階まで来たところで、俺は因縁深いモンスターであり、蓮人にとって相性が悪いであろう吸血コウモリの群れを差し向けた■


 「吸血コウモリ!? チッ……“千糸万鋼せんしばんこう”!」


 鋼鉄のように硬くなった糸を結界のように張り巡らせる魔法で、蓮人は吸血コウモリたちを難なく始末していた■蓮人、格段にレベルアップしている……■

 それは本来、嬉しいことのはずだったけど、今の俺にとっては厄介なことだというのも事実だった■このレベルの侵入者となると、やはりイズミさんに任せるしかないか……■



 地下15階で、ついに蓮人とイズミさんが出会う■


「っ……あなたは……まさか、『天雷のイズミ』さん……?」

「お初にお目にかかります、蓮人様」

「どうして俺の名前を……それに、何か、雰囲気が」


 カンテラの灯に照らされたイズミさんは、妖艶な黒の戦闘用ドレスに身を包んでいる■闇の刻印が刻まれた瞳といい、かつての「天雷のイズミ」のイメージと今のイズミさんは大分違って見えることだろう■


「蓮人様■あなたに遺恨はありませんが、我があるじの命により、あなたを排除させていただく!」

「何だと!?」


 イズミさんの雷魔法が機先を制し、蓮人の持つカンテラを破壊した■

 無天廊の地下15階が暗闇に落ちる■


「おい、何のつもりなんだ!」

「――“閃雷スパーク”」

「ぐああっ!?」


 イズミさんの雷魔法が蓮人を襲う■心が痛むが、仕方がない■


「くそっ……“飛竜糸ひりゅうし”!」


 掌から雷魔法を受けた方向に鋭い糸の束を放つ蓮人■だが、闇の中で既にイズミさんは別の方向に移動している■蓮人の糸は空しく虚空を切った■


「ぐううっ!」


 その隙に、イズミさんの追撃の“閃雷スパーク”が蓮人に命中していた■


「大人しく帰還ロールバックなさい■既に勝負は決しました」

「ふざけるな! 俺は、俺は衛人えいとの仇を取らなくちゃいけないんだ!」


 あっ……蓮人、もしかして今地下35階にいる俺のことを、俺を殺した仇だと勘違いしているのか……? これはややこしいぞ……■


「――”千糸万鋼せんしばんこう”」


 蓮人は静かに、自分の周りに糸の結界を張り巡らせた■まだ、イズミさんとの戦いを続けるようだ■


「愚かな■糸などいくら張ったところで、稲妻を避けることは叶いません!」


 イズミさんが更に“閃雷スパーク”を放つ――だが、放たれたその稲妻は、何と蓮人の糸に吸い込まれるようにして消えた■


「“避雷糸ひらいし”■雷属性の魔力を吸い寄せて無効化する魔法を糸に込めた――そしてその稲光で、あんたの場所も掴めたぞ――“飛竜糸ひりゅうし”ッ!」


 蓮人は掌で操った糸の束をイズミさんの方に向けて撃ち込む■


「……見事なものですね■相当に修練したものと見受けました」


 イズミさんは蓮人の攻撃を身体を捻って器用に避けていた■だが、間一髪だったというところだろう■


「あんたの雷魔法はもう通じないぞ■それに、光を発するたびに居場所もわかる」


「なるほど、厄介ですね……■その力、我が主にとって邪魔なものであると判断しました■では『光を放たぬ雷』をご覧に入れましょう」

「何だと?」

――」


 無天廊の闇が――力の喜びに震えた■

 まずい――イズミさん、その魔法は!


「――”闇の雷テネブリス・トニトゥルア”」

「ギィィヤアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 闇の中で、いかずちの轟音と、蓮人の絶叫が響いた■

 無天廊に満ち、俺が支配する闇の力を稲妻に変え、対象に向けて炸裂させる魔法■

 俺がイズミさんに授けた魔法だ――■

 駄目だ、こんな威力、蓮人が――■


「今の私は『闇雷えんらいのイズミ』■衛人様の忠実なるしもべ■主を脅かす者は――永遠とわの闇に落ちていただきます」


 蓮人の肉体が、闇の雷の衝撃に耐えきれずに崩壊を始めていく■

 四肢の筋肉が裂け、両腕が落ち、絶叫する蓮人の全身がびくん、びくんと大きく震えていた■

 そうして、機能を失った蓮人の肉体は、徐々に暗黒の闇と同化していき……闇の中に溶け落ちて、消えた■



「…………そん、なっ……」


 蓮人が…………死んだ?


「お申し付けに背き申し訳ありません、衛人様■ですが、この者はいずれあなたを苦しめる存在となりましょう■然らば、ここにて排除させていただきました■……闇はいつも、あなたのお傍に」


 イズミさんは、俺のために……?

 俺の命令で……蓮人が死んだ?


 蓮人、俺は……■

 俺は…………■

 (続く)

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