■VS。宇宙句点戦争【掌編小説】

著者:玉棟上下

キャッチコピー:■と。の戦いはカイテヨンデ星系を揺るがす一大戦争となっていた……!



 カイテヨンデ星系の防衛線上のとある区画に、旧句点記法を信条とする一派の戦闘艇が集結していた■。


「抵抗勢力を確認■戦闘配備に移行します」


 デッド句点記法派の新型戦闘艇が一斉に旗艦から展開され、宇宙空間での戦闘準備が開始される■


「旧式の盲信者どもが――このデッド記法PV装填式の新型銃砲に敵うとでも!」


 デッド句点記法艦隊の火器手パイロットたちが気を吐く■


 虚空を糧にしてPVPower Verbと呼ばれる言語論的エネルギー体を銃砲に装填できる新技術を擁したデッド句点記法派は、カイテヨンデ星系の勢力を完全に塗り替えつつあった■

 デッド句点記法派の艦隊は、カイテヨンデ星系の主要な経済圏であるランキング宙域を新型兵装による武力をもって早期に制圧し、残りの宙域にもその支配の手を伸ばさんとしていたのである■



「奴ら、来やがったな……」


 旧句点派のベテラン火器手パイロットたちが、無線で出撃前の最後の会話に興じていた。


「虚空だか何だか知らねえが、奴らの好きなようにはさせねえ。俺の書くハーレムの句点は『。』じゃなきゃ締まらねえんだ」


 スローライフとハーレムの名手であった彼の呟きに、つい先日まで畑で純文学を育てていた志願火器手パイロットが同調する。


「私たちは、自分の表現したいものをただ大事にしたいだけです。ランキング宙域が陥落したことは衝撃的でしたが、しかし、こんな辺境までデッドで染めようなどとは――断固として抵抗します」

デッドの連中に持っていかれてるせいなのか、最近じゃ同じようにやっててもPVがロクに溜まらねえ。昔からPVは神様の声だなんて言われてたが、ついに神様にもそっぽを向かれてるのかねえ、俺たちは。それでも、やれるだけのことをやるしかねえ」

「――ええ、火器手パイロットの誇りにかけて」



 戦闘が始まった■。 

デッド句点記法派と旧句点派、それぞれの戦闘艇の銃砲から、PVを込めた句点弾パンクチュエーションが放たれる■。


 ■■■■ 。。。。

 ■■■■ 。。。。

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  ■■■■。。

    ■■■。。。

   ■■■■。。

    ■■■■

  ■■■■。。。

    ■■■。


「奴らを死の色に染めろ! デッドでカイテヨンデの歴史を塗り替えるのだ!」

「ううっ、押される――私たちはただ、今までと変わらない執筆生活を送りたいだけだったのに――」

「愚かな旧句点の盲信者よ! PVの枯渇とともに消えてゆけい!」

「それでも、それでも、私たちは――」


 この戦いにどう終止符が打たれるのか――まだ誰も知る者はいない■。(了)

 

 

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