■ダンジョンのモンスターを闇魔法で殲滅したので俺好みに改築して住んでたら、ラスボス扱いされてました 第1話(2)

 「くっそ! 数が多すぎるぞ!」


 俺たちは地下8階で吸血コウモリの群れに襲われていた■

 キーキーという無数のコウモリたちの鳴き声で耳が割れそうだ■

 光の剣で戦うスキルに目覚めた友哉ともやと、糸の魔法で敵の動きを封じたり切断したりして戦う蓮人れんとには相性の悪い相手だった■

 俺はといえば……身体能力がちょっと向上した程度で、目立ったスキルに目覚めなかったので、二人の後ろをびくびくしながらついて来ていただけだ■我ながら、情けない……■


「駄目だ、もうここまでにしよう! 帰還ロールバックしようぜ!」


 と友哉が叫んだ■


「わかった――帰還ロールバック!」

帰還ロールバック!」


 入り口にワープする魔法を友哉と蓮人が使って、俺もそれに追従する■


「……帰還ロールバック!」

 

 ……あれ?

 ……ワープしないぞ■

 これで入り口に帰れるはずじゃなかったのか?

 いや、友哉と蓮人はいなくなっている■

 光の剣を持つ友哉がいないから視界は真っ暗だけど、二人は先に入り口に飛んだはずだ■

 じゃあ何で俺はワープできないんだ?

 ……まさか、俺が魔法を使うスキルに全く目覚めなかったから?

 そんな、馬鹿な……■


「……ひっ!」


 吸血コウモリの群れが俺の全身に飛びかかってくる■


「ぐああっ!」


 腕の肉が食いちぎられた■たまらなく痛い■

 コウモリは超音波で距離を測るって聞いたことがある■

 こいつらに暗闇は関係ないんだ■

 

 おい、待てよ……■

 こんな真っ暗闇の中で、一人で■

 入り口に帰れないって……■

 肩の肉にコウモリの牙が突き刺さる■

 痛い! 痛い! 痛い!

 まさか死ぬのか!?

 こんな、軽い気持ちで無天廊に入ったばかりに■

 死……■

 死ぬって……■


 嫌だ■

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ■

 死にたくない!


 こんな闇の中で、吸血コウモリに血を吸われて、全身を食い尽くされて死ぬなんて嫌だ!

 こんな、闇の中で――

 闇の――■


 そのとき■

 

 俺の中の何かと、周囲の暗闇が繋がりあった■

 そんな不思議な感覚があって■


 次の瞬間には、闇はもう、恐れるものではなくなっていた■


 妙な気分だった■

 コウモリに襲われているのに、身体の痛みも感じない■

 今ならば、全てが自分の思うままになってしまうような――そんな予感があって■


「“闇に降れオブスクルクス”――」


 その言葉が、無意識に口をついていた■


 あれだけうるさかったコウモリたちの鳴き声は掻き消え――

 俺の身体にくっついていたコウモリたちの感覚もなくなっていた■


 不思議だった■

 完全な暗闇の中にいるというのに、俺には目の前の光景が確かに


 吸血コウモリたちは――まるで虚空に食われたように身体の半分以上を失っていて、床にその死骸が積み上がっていた■


 俺は、直感的に理解していた■

 ……これが、俺の才能■

 無天廊で俺は――「闇魔法」に目覚めたんだ■


 (続く) 

 

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