第2話 ツールの誕生:中間トロープの組み合わせという発見
きっかけは、物語創作の研究だった。
物語の要素を「トロープ」という。
たとえば、桃太郎を構成するトロープは「異界から来る存在」「正義と悪の戦い」「仲間の集合」「達成して帰還」などが含まれる。
鶴の恩返しなら「人外の存在との接触」「恩恵を与える」「恩返し」「約束を破る」「報いを受ける」となる。
このように、物語をトロープに分解する概念は、神山重彦氏による「物語要素辞典」という書籍にもまとめられているので、小説界隈ではおなじみかもしれない。
トロープには、上位、中位、下位といった、序列がある。
上位トロープは、「秩序と混沌の対立」「善と悪の対立」みたいな、大きな枠組み。
下位トロープは、「猫」「手紙」「幽霊」みたいな、小道具。
その間にある中位のトロープを、中間トロープと呼ぶ。
例えば、「24時間以内に起きる出来事」「記憶が毎日リセットされる」「互いの正体を隠している二人」「異世界に転生する」など、物語を構成する要素やシチュエーションのことだ。
物語理論では、上位、中位、下位のトロープを配置することで物語を設計する、ということになっている。
そこで、これらのトロープを適当に選んで、AIのClaudeに「このトロープでお話を作って」と言ってみた。
結果、あっという間に、それらしいお話が生成された。
これには驚いた。
しかし、何度かやってみて、すぐに飽きた。面白みがないのだ。話が定番すぎる。
そこで試行錯誤の末、「中間トロープだけを、2~3個無作為に選ぶ。それを元に、AIに話を作ってもらう」というのが、一番面白い、という結論に至った。
上位トロープや下位トロープはAIにお任せしてしまうのだ。
トロープ版の三題噺みたいなものだ。
ちょっと無茶振りぐらいの方が面白い。
もちろん、外れもある。面白いのは1割ぐらいかもしれない。
でも、話を生成するコストがほぼゼロであることを考えると、これは、手縫いとミシンぐらいの違いがある。
小説の産業革命だ。
中間トロープのリストは、Geminiに作ってもらった。
所要時間は、1分ぐらいだった。
この話の最後に中間トロープのリストを付ける。356個ピックアップした。
僕はこれらの中間トロープをランダムに2つ組み合わせて、物語生成のプロンプトを生成するStreamlitアプリを、Claudeに作ってもらった。
これも、5分ほどでできてしまった。
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