デリバリーの子と出会いたい

命野糸水

デリ飯

今年も半分が終了して早1ヶ月が経った8月。


夏休み真っ只中の大学生である咲也はスマホのアプリストアからデリバリー飯、略してデリ飯というアプリをインストールした。


このアプリは名前からも分かる通り食べ物を届けてくれるアプリだ。


このアプリの存在は大学内でも話題になっていたため前から知っていた。実際に使っているという人も多く聞いた。


咲也は話題になっていたそのアプリを入れていなかった。なぜなら今まで特に必要と思っていなかったからだ。


お腹が空いたのなら近くのスーパーやコンビニに行けばいい。それかファミレスやファストフード店に行って食べればいい。


ピザをデリバリーするのは分かる。それは分かるが、わざわざ買いに行くことが出来るものをデリバリーしなくていいではないか。そう思っていたからだ。


しかし状況が変わってアプリを入れることにした。その心変わりのキッカケは昨日、友人の石須から放たれたとある発言だった。


「フードデリバリーでたまたま出会った男女が付き合うっていう話がうちの大学生だけじゃなくて他の大学生でも起こっているらしいぞ」


咲也はこの話を聞いた時冗談を言われているのかと思った。配達員と客という場面は想像つく。


荷物を受け取る。その荷物が本当に自分あての物なのか確認した後に伝票を書く。その後客側はドアを閉める。


この受け取りからドアを閉めるまでの2人の間に恋に発展する流れなんてないのではないかと思った。


しかも、この場合の偶然の恋の出会いは配達員と客が異性だったときに限定される。


どの配達アプリ、宅配便とかもそうだが、配達時間は決められても配達人の性別までは決められない。


ましては指名も出来ない。配達では行きつけ美容院の美容師指名のようなことは出来ない。


なぜそんなことが起こっているのか。俺は石須に聞いた。


石須が言うにはフードデリバリーに関しては同じ人が届けに来ることがあるらしい。


なんでも配達側は届ける範囲を市ごとに個人で決めることが出来るらしい。


そもそもデリ飯のようなフードデリバリーサービスは、この会社と飲食店が契約していて、契約された店舗がデリバリーサービスに載る。


配達人はデリバリーサービス会社に雇われるため、その都度運ぶものが異なるらしいのだ。


ある日はハンバーガーを配達しらある日はピザを配達する。そばを配達することもあれば寿司を配達するとこもある。


配達人は配達することが出来る範囲を市ごとに決めて待機して置き、配達範囲内で注文が入ったら配達するらしい。そのため同じ人に配達するという偶然が発生するとのこと。


一度なら偶然に過ぎないが二度三度会うとそれは運命に思えてきてしまう。そして恋愛に発展するという流れに行きつくのだ。


それを聞いて咲也は石須にデリ飯の登録の仕方、注文のやり方を聞いた。同性が配達に来る可能性もあることは分かった上で咲也自身もその偶然の出会いというやつを経験してみたくなったからだ。


石須はアプリの入れ方、登録の仕方、注文のやり方、さらにおすすめの店まで教えてくれた。さっそく咲也は教えてもらったとおりに電話番号を登録した。

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