第48話

「"てん仇敵きゅうてきほろぼしなさい"……『七支刀しちしとう七天八討しちてんばっとう』!」


 ミコトの討魔兵装『七支刀』はその刀身で傷付けた相手の感覚を無作為に狂わせる能力を持っている

 五感、第六感、平衡感覚の内何か一つ無作為に選ばれる為ランダム性は強いがそれだけ多数の相手の戦いでは場を乱すことが出来る能力だ。

 ちなみに味覚と嗅覚は戦闘においてはハズレらしい。


 そして、討装解放とうそうかいほうによりその能力はさらに強化される。

 枝分かれしていた刀身が一つずつ離れていき、まっすぐな刀身が7つになる。

 1つはそのままミコトの手に残り、6つはミコトの周りを浮き意のままに空を舞った。


 討装解放した七支刀の能力はその刀で斬りつけられる事に五感と第六感を完全に失い、7度目斬りつけられた場合は平衡感覚をも失うというもの


 手数も増え、相手の妨害も強力になるという今の数を相手にする場合これ以上ない最適解と言えるだろう


「いきますわよ!お覚悟ーーーッッッ!!!!!!」


 魔鬼の群れに7つの刀を振り回しながら突っ込んでいくミコト。


 霊力消費の激しい討装解放で能力を使える時間は短い、ミコトは数十秒程だろうか

 その時間の中でなるべく多くの魔鬼を無力化させるため、とにかく縦横無尽に魔鬼の群れの中を駆けていた。


「ん、私も混ざってくる。」


「オレは動かなくなった魔鬼をトドメ刺してくるぜ」


 それにカムイとタクミも続いた、アタシ達はもう魔鬼のことを気にせずグレーターデモンだけを相手しなくてはいけない。


「任せた!アタシらはあのクズ鉄野郎だ!」


「あ〜しらもいいところ見せるんだー!」


「西国乙女連合、本気出しちゃうわよぉ!」


 三人でグレーターデモンへと距離を詰める、当然向こうは砲撃を撃ち牽制してくるがアタシら三人には当たらない。


 アタシら西国乙女連合の三人は互いの動きをほぼ完璧に理解し合っている、だからこそこの三人しか気にするものがいないのであればいくらでも互いにフォローし合える


 攻めに転じる動きをしつつ瓦礫を障害物にしたり避けたり、この三人であれば阿吽の呼吸で造作もないことだった。


<フッ、ようやく攻めてきたな。ついに覚悟を決めたか……!>


「ああ……ッ、オメェをスクラップにする覚悟をなっ!」


<どちらかといえば、我はあの討装解放した討魔剣士と戦いたかったが……なっ!>


「ミコトちゃんは可愛いけどっ、ギャルもいいもんだよ〜っ」


「そうそう、お姉さんの誘いを断るなんて連れないじゃなぁい?」


 チカは身の丈を越える大きな刀身の大太刀……討魔兵装『牛刃丸ぎゅうじんまる』でグレーターデモンの身体に切り込んでいく、それはもう刃物というよりも鈍器をぶつける感じでグレーターデモンの身体を大きく揺らす。


 リナはそれに合わせて左腕に装着している3本の爪のような刃が突き出た小手……討魔兵装『三矢砕打みつやさいだ』を振るう、その度にグレーターデモンの装甲との間に火花が散った。


<フハハハハハ!痒い!痒いわぁ!>


 しかしそれもグレーターデモンに効いてはいなかった、しかしそれは想定内だ


「射出!」


 リナが持つ三矢砕打みつやさいだから3本の刃が飛び出した、一見鉤爪のついた小手のような武器なのだがその本質はいしゆみのようなものであり霊力の糸が繋がっていることによりリナの意思で自在に相手を追尾する。


<フン、そんなモノ爪楊枝ほどにも気にせぬわぁ!>


 それもグレーターデモンの装甲には弾かれ通用していないが、リナが撃ったその3本の矢には別の狙いがあった。


「あ〜しのこと、無視すんなっての!」


 弾かれた3本の矢はチカが掴んでおり、その矢からはリナへ霊力の糸が繋がっている。

 そしてそれに挟まれる形になったグレーターデモンの周りを二人は回り始めた


「「そ〜れそれそれ〜!」」


<む、むぅ……!これは……!>


 矢に繋がった霊力の糸でグレーターデモンはぐるぐる巻になり、その場に拘束してしまった。


<拘束だと?こんなもの、直ぐに引き千切ってやるわ!>


「あらあら……私の霊力はねちっこいからねぇ、そう簡単に千切れるかしらぁ?」


「そうだそうだー!リナはスッゴいねちっこいんだぞー!性格も!」


「……チカちゃぁん?」


 リナの言う通りその糸は簡単には千切れないようだった、しかしそれも長くは保たないだろう。


 それにグレーターデモン自体のパワーであれば、糸で繋がっている物ごと容易に振り回せる。


「力比べってなったら私じゃ無理だからねぇ、チカちゃんどおぞ」


「よ〜しまかせろ〜〜〜!」


<ムッ、ぐぅ……っ!?>


 糸の繋がった武器ごと、リナはチカに手渡した。

 そしてそれを受け取ったチカはそのまま綱引きのように糸で拘束されたグレーターデモンを引きずる。


 チカの膂力りょりょく、腕力はカタコを除く討魔剣士の中では飛び抜けている。

 こうした単純な力比べであれば、あのグレーターデモンにも引けを取らない程であった。


「う〜〜〜!!!ソウにゃん!」


「よくやったチカ!リナ!」


 チカとリナが奮闘している間に、アタシは討魔兵装『国落砲ごくらくほう』をチャージしていた。

 霊力を集中し溜めたこの武器は、瞬間的に種子島たねがしまに劣らない威力を出せるはずだ


 絶対に当たる至近距離まで詰め、銃口をグレーターデモンに向ける


「食らいやがれーーー!!!」


 轟音を放つその砲撃はもはや爆発に近い、グレーターデモンに直撃しその場には目映い炎と黒煙が立ち昇る


「やったか!」


 至近距離での直撃だった、現時点でアタシらが出すことのできる最大火力を叩き込んだはず……これでやられてくれないと他に有効打はない。


<……それで終わりか?少し期待して損したな>


「……マジ?」


 炎と煙の中、全く動じることなくグレーターデモンはその場に立っていた

 装甲はところどころ煤けて黒くなっているが、目立った損傷もない様子だった。


「は、反則だ〜〜〜!」


 思わずチカが叫ぶ、そう叫びたくなる気持ちもわかる。


 アタシの砲撃、しかも溜めに溜めた一撃……その威力は現代の討魔剣士の中で最高火力と言っても過言ではなかったはずだ。(もちろんカタコは除く)


 これで有効打にならないということはすなわち、アタシらの誰もこの相手にダメージを通せないということ……


「あらあら、困ったわねぇ〜……」


「くっ、なら何度でもぶち込んでやるよっ!チカ、リナ、また拘束してくれ!」


<フン、貴様らの曲芸には飽きた……終わらせてやる>


 グレーターデモンが動き出した、至近距離にいたアタシ目掛けてその剛腕を振るう


(まずっ……撃った反動で痺れてて避けられねえ!)


「ソウちゃん!きゃあっ!」


 その瞬間、リナがグレーターデモンの一撃に割って入り体を張ってアタシを守った

 吹き飛ばされ地面を転がるリナ、そのままぐったりと動かなくなってしまった……気を失ったらしい


「リナ!?くっ、アタシを庇いやがって……!」


<フン、鬱陶しいコバエが一匹いなくなったな>


「よくもリナを……おりゃあ〜〜〜!!!」


 チカがグレーターデモンへ飛びつき、締め上げる……しかし相手は機械の体でまるで意に介していない。


(クソっどうする?魔鬼の方はどうなってる?助けは期待できるか……!?)


 横目で魔鬼を対処しているミコト達の方を見た、魔鬼は半数ほど減りどうにか抑え込んでいるといった様子……こちらへの助力は期待できそうにない。


 そしてアタシ達がここでグレーターデモンに負ければ、次の標的は向こうになるだろう……ならばアタシ達がこのまま倒さないといけない


<えぇいうっとおしいっ!>


「きゃあっ!」


「チカ!」


 グレーターデモンにひっついていたチカが、とうとう引き剥がされこちらに飛ばされてきた


「いてて……へーき!まだ動けるからっ!」


「とは言っても、もう打つ手が……っ」

 

 どうする、攻撃はできるがこちらが出せる最大の一撃は通用しなかった。


 アレを越える反撃など、思いつかない。


(ちくしょう……アタシじゃ無理なのかよ、アタシには……っ)


 カタコであれば、力でねじ伏せていた。

 せめて、ミコトのように討装解放を実戦で使えるレベルであれば……アタシだって


 現代最強とまで言われた討魔剣士、カタコ……そして中央の守護者ミコト


 羨んで、憧れた、強き者の世界だ。


(……いや、諦めてたまるか!アタシだって、やれる……!やれるんだ!)


 ナメるなよ、アタシだって……


 そっち側に行けるんだよ!


「"討装とうそう解放かいほう"……ッッッ!」


「ソウにゃん、マジ!?」


 身体から限界まで霊力を搾り取られる感覚、それと同時に討魔兵装『国落砲ごくらくほう』が一際大きく膨張した。


「"国崩くにくずし、國落くにおとせ"!……『国崩國落砲こくほうごくらくほう』!」


<……ほぉ、まだ何か打つ手があったとはな>


 討魔兵装『国落砲ごくらくほう』の討装解放した能力は、自身の霊力を纏わせた他の物体を砲弾として撃ち出す事が出来るというものだ。


 アタシは討装解放だけで霊力に余力はない、何か弾になりそうなものに霊力を纏わすことすらままならない……ただ一つを除いて。



───アタシの身体こそが砲弾になる



 討魔剣士であれば当然、自分の身体には自分の霊力が流れている。

 討装解放によって限界近く霊力を消費しているが、幾ばくかの霊力は身体に残っていた。


 グレーターデモンの、魔鉄の装甲を貫くための砲弾として……鍛え上げたこの肉体以上のものもない。


 アタシの身体、信念の硬さが……あんな鉄くずに負けるわけがねぇっ!


「チカ!お前が砲身を支えろっ!」


「はいよ!ソウにゃんも無茶するんだから〜」


 砲身の前に立つ、アタシがやろうとしていることの意図は直ぐにチカに伝わった。


 チカはその場に大太刀である討魔兵装『牛刃丸ぎゅうじんまる』を地面に突き刺し、銃架じゅうかのようにしてその砲身を支える。


「ソウにゃん砲!いっけ〜〜〜!」


「うおおおおおおおおーーーッッッ!!!」


 飛び蹴りの要領で砲撃と共に撃ち放たれたアタシの身体は、霊力と空気の摩擦により一筋の光となる。


<フン、そんな見え見えの直線……わざわざ当たる必要もない!>


 グレーターデモンはその攻撃に大きく下がり回避を試みた


 しかし、意識を失ってもなおリナが残した霊力の糸がグレーターデモンの身体に残りその気配が弾道を狂わせないマーキングとなっている


<なっ、軌道が曲がっ……ッッッ!?>



西国乙女連合さいごくおとめれんごうを、ナメるんじゃねぇーーーーーッッッ!!!」

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