第37話

 そのまま車は僕らが出発した建物へと戻ってくる

 キドウの遺体は調べるために専用の部屋に持ち運ばれ、長官はそれについて行った。


 そして僕らは円卓のある部屋でたっくんと神宮寺さんと合流した。


「お疲れ様です、皆さん。魔鬼討伐ご苦労さまでしたわ、ハーブティーを入れたのでどうぞ」


「ん、貰う。ミコトのハーブティーは絶品。」


「ありがとうございますミコトさん、あっ……お砂糖いただけますか?」


「あれ、カタコって無糖派じゃなかったか?」


「センパイがお砂糖入れないと飲めなくて」


「……お前さぁ」


「な、なんですか……!甘いほうが美味しいでしょうがっっっ」


「あと熱いと飲まないから少し冷ましてあげないと……ふー、ふー……はい、どうぞセンパイ♪」


「ご苦労……うーん、マンダム。」


 とても美味しいハーブティーだ、茶葉が良いのだろうか

 カタコちゃんが温度調整してくれたおかげで程よく温かくて最高だ。


「……おーちゃんさぁ、恥ずかしくないの?」


「ムッ!カタコちゃんっ!僕の株が大暴落してる気配が!オウカショックが起きる前にどうにかしてくれっ」


「ん、もう無理かも」


「あはは……」


 キドウの死、事件の裏にいる犯人、さっきまでは色々な事がありすぎたことで気持ちがいっぱいいっぱいだったけど……神宮寺さんの入れてくれたお茶のおかげでようやく落ち着けた気がする。


「……ふぅ、美味しいお茶でした。ええと流石はオレンジペコーの……」


「あの、カモミールです……ハーブティーなので……」


「センパイ知ったかぶるのやめてください、恥かくだけなんだから」


「くっ、お茶に詳しいカッコいい男ということで株を上げる作戦が……!」


「ん、猿知恵。」


「ウキャーーー!!!」


「やべぇおーちゃんがお猿になっちまった!!!」


(よかった……センパイ、さっきまでは思いつめてたけど……あの様子なら、ひとまず平気かな。お気遣いありがとうございます、ミコトさん。)ヒソヒソ


(……えぇ、少しでも気分の切り替えなったのならよかったですわ。……それにしてもカタコさん、男性の趣味は改めたほうがよくてよ……?)ヒソヒソ


「……ふぅ、戻ったよ。」


 僕たちがお茶をして一息ついていると、長官が戻って来る。


「長官お疲れ様ですわ、ハーブティーをどうぞ」


「あぁ、ありがとう……。そうだオウカくん、山国キドウの遺体だが……しばらく後になるが事が済めばしっかりとこちらで埋葬するよ」


 キドウの遺体……事件の後はどうするかと思っていたが、きちんと埋葬してくれるとのことだ

 ……まぁ、この人に任せるのは大丈夫だろう。


「山国キドウの遺体引き取り先は、本来なら山国一家となるが……あぁなっては引き渡すわけにはいかないからね。でも安心してくれ、葬式は乙森君の家でしっかりと挙げるよ」


「えっ、乙森さんの……?そういえばそれっぽい格好してたけど……」


「乙森さんの家は教会なんですよ、乙森さん自身も敬虔なキリシタンですし」


「あの人、地元では普段シスターをやってるんだよ。結構有名だぜ、テレビにも出たことあるらしい」


「ん、あの性格でシスターやってるなんて不思議。」


「か、カムイさん!失礼ですわよっ」


「そういえば乙森さんたち、大丈夫ですかね……グレーターデモンと交戦中なんじゃ」


「む、そうだね……向こうから救助要請は来てないから上手くやってくれていると思うが、念の為カタコ君を向かわせても……」


 彼女たちの安否を心配していたら、その時丁度通信の報せが来た

 どうやらグレーターデモンを相手していた西国乙女の皆さんからみたいだ。


「……分かった、すぐに迎えを出すから戻ってきてくれ」


 長官さんが戻るように指示しているが、その声色から無事なようだけどあまり良い報せではなさそうだ


「……グレーターデモンとの交戦終了、大きな怪我はないが取り逃がしたそうだ。」


「長官、追跡は?」


「警察や軍の各所に連絡済みだ。しかし移動速度がかなり早いな、素直に追跡させてくれるかどうか……」


「私、行きましょうか?私のスピードなら追いつけるかも……」


「いや、最高戦力であるカタコ君をそこに割いてはここが手薄になる。せっかく手に入れた重要な手がかりを奪われるかもしれないからね。」


「ん、行くならカタコ以外で?」


「……いや、やめよう。後手後手で仕方ないが、少なくとも西国乙女の皆が戻るまではここの守りを固めることに注力したい。」


「……まぁ、広域の追跡なんてオレ達がやることじゃねぇわな。効率悪すぎ。」


「組織の皆さんを信じましょう、私たちは何かあってもすぐに動けるようにしておかないといけませんわ!」



………


……



 しばらくして、西国乙女の三人が部屋に入ってくる。

 戦闘した後で少し汚れているが、大きな怪我とかは無さそうだった。


「お疲れ様です、西国乙女の皆さん」


「オウカきゅん♡もぉ〜大変だったんだよ〜グレーターデモンの相手!そっちも大変だったんだってぇ〜?♡」


「お・と・も・り・さん?センパイは疲れてるんです!ちょっかいかけるのやめてください!」


「ソウにゃんやめてよ〜みっともないよ〜」


「ソウちゃんは疲れ知らずねぇ……」


「おほん、戻ってきて早々で悪いが報告を聞かせてくれるかな?こちらも、魔鬼討伐の報告をしよう。」


 そうして互いに今回の報告をし合う、キドウのことを話すと乙森さんたちは心を痛めて憤ってくれた


「きーちゃん、良い奴だった……良い奴だったんだぞ……っ!」


「酷い話ねぇ……許せないわぁ」


「外道が……こういうことする奴ァ、アタシが神に代わってブッ殺す!」


「も〜!さっさと見つけてヤっちゃおうよ〜!」


「皆さん!憤る気持ちも分かりますが、今は冷静に報告を!」


「……フン、リナ!こっちの報告!」


「はいはい、任せてねぇソウちゃん」


 瓜本さんが部屋のモニターを操作すると、交戦時の映像が流れる

 激しい動きで映像に乱れがあるが、グレーターデモンの姿をしっかりと映していた。


「こいつがアタシらが交戦したヤツだ、グレーターデモンってので合ってるか?」


「……細部が少し違いますけど、あの赤い金属装甲……グレーターデモンに違いないです。」


「そうね、前に報告のあったデータよりも改良されているんだと思うわぁ」


「凄かったよ〜、背中からブワーッてジェット噴射したりして!」


 確かに写っていたのは、あの時みたグレーターデモンと同じような見た目だが細部は少し違っているようだ

 大きく目を引くのは武器を持っている事か、僕らが見たのは素手だったがアレはバズーカ砲のような大口径の重火器を装備している。


「それで、まったく刃が立たなかったのかね」


「……まぁな、流石は魔鉄の装甲だ。ありゃまともに戦っても傷つけられねぇよ」


「て、撤退はさせたもん!任務は果たしたし!」


「あぁ、すまない責めているわけではなくて戦力分析だよ。君たちはよくやってくれたね。討魔剣士3人が掛かって倒せないほどか……やはりグレーターデモンに勝てるのは現状、カタコ君のみか。」


「次現れたら、そのときは私が出ます。」


「できればきれいに持って帰ってきてくれよな、また馬鹿力でスクラップにすんなよ」


「ん、カタコの力はゴリラ並。」


「し、失礼なっ!あの時は仕方がなかったの!」


「おっ、珍しいなカタコがイジられてる」

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