第3話
車内アナウンスが、電車の中を駆け巡っていた。もう終わりか、と感じる自分と、もう少しだけ続いてほしいと思う自分がいた。
「時間があるなら、どこかでお茶でもしない。」
言葉は詰まっていたはずなのに自然と出てしまった。言わないと決めていたのに、心には逆らえなかった。そういうやつなのだろう。求めている物は手に入らないと分かっているのと自分に問いただした。
「珍しいじゃん、良いよ。久しぶりに会えたから。それに金曜だから良いよねたまには。自由にやっていい日だし。」
惹かれた理由でもある、あの笑い方をしていたから、耳が赤くなっていた気がした。そして虚しさが電車のホームの北風と一緒に伝わった。
「それでさ。どこに連れてってくれるの。」
改札を出ると、嬉しそうな声が聞こえた。。それは、最初にかけられた声と同じ響きを持っていた。だからか自然と言わないようにしていた言葉が出てしまったのは。
「少しだけ歩くけどいい。こっちらへんにあったはずだから。」
少しだけ嘘をついてしまった。本当はすぐ近くにあるのだけれど、少しでも時間が欲しかったから。少しだけ、心臓をつかまれたような痛みが走った。
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