ガチ恋オタクアイドルになる
長濱こうき(元作家を目指す浪人生)
第1話
「久しぶりだな瑠璃。この前のライブの歌声可愛かったぞ」
「ええ、そう言ってもらえて嬉しいよ。私の声って批判もされることが多いし」
「瑠璃の可愛さを知れば、そんなこと言えなくなると思うがな」
「そうだと嬉しいなぁー。今日も正宗くんありがとね。勉強頑張ってね」
そう言って握手会が終わった。
「ああ、今日も美少女過ぎた」
俺は今神楽坂の握手会の帰りである。推しの瑠璃と握手をして、あの目を細めた笑顔に今日も胸を貫かれた。まさしく天使と言っても過言ではないだろう。可愛すぎて昇天しそうだった。まぁあの笑顔は他のファンにも向けているんだろが。瑠璃が誰かと付き合うところを俺はイメージしたくない。そう俺はよくファンにいるガチ恋というやつだ。付き合ったら叩くんじゃなくて家に引き込もって一日中泣くタイプのな。
「それでもいつか瑠璃も結婚しちゃうんだよなー。はぁ一日を過ごしていくのが怖くもあり、瑠璃の笑顔がテレビ越しで見れるという幸せもある」
どうやったら瑠璃と付き合えるだろうか?俺は地味だから、全く瑠璃の印象に残っていないだろう。だからまずは名前と顔を覚えてもらってからだが。でも今のままじゃだめなのは分かる。どうにかして一ファンから脱却しなきゃならない。
芸能界、ここは厳しい世界だ。でも1番瑠璃に近づくためにはいい手段である。俳優は無理だから、アイドルか。でも俺は髪を切ってセットしても雰囲気イケメンがやっとだから、大手のアイドル事務所は無理だろう。
「そうなると地下アイドルか。瑠璃に認識できるまで上がっていくのは至難の技だが、可能性はゼロじゃない」
そう思ったら吉日、俺は電車の中で、メンバーを募集している地下アイドルを探し始めた。何件かの事務所を見つけて、俺は家に帰った後、素早く履歴書を用意して、次の日に髪を切りにきた。
「おっ隆司じゃないか。久しぶりだな」
そう俺の行きつけの美容師の人は言った。
「ええ、お久しぶりです。髪をバッサリ切ってくれませんか?」
「珍しいな。いつもは前髪は残してくれと頼むのに。だが短髪が似合うと思っていたから、こっちからしたら喜んでといった感じだな。なんか心変わりでもあったのか?」
「ちょっとアイドルを目指そうと思っていまして」
すると美容師さんは笑うことなく、真剣な表情で俺を見てきた。この人はベテランだから、今まで芸能界を目指してきた人も見てきたのだろう。
「厳しい世界だぞ?人世をかける覚悟はあるのか?」
「俺はなんとしても瑠璃の隣に立ちたいんです。そのためならどんな困難も乗り越えて見せます」
俺は真剣な眼差しで、そう答えた。すると美容師さんは覚悟はあるんだなと言うと、俺が全力でカッコよくしてやると言った。
「やるからには全力だ。売れろよ。そして瑠璃のとなりを射止めるんだ」
許んとこの美容師さんはいい人だ。普通俺みたいな地味なやつが芸能界入りたいと言ったら、花で笑うのが普通なのに、全力で応援してくれた。それなら俺はそれに応えるだけだ。早速雑誌を見て、髪型を決めて、その髪型にしてもらう。
「それにしても隆司が全力でなにかを目指すというのも珍しいよな。勉強も頑張んなかったし、スポーツも努力をしてこなかったのに。それだけ瑠璃が特別なんだろうな」
「そうですね、初恋はまた別にありましたが、ここまで好きになった女子は瑠璃が始めてです。誰にも瑠璃を取られたくないと思うほどに。そのためにはアイドルとして売れる必要があります」
俺は今までは何事もだらけて過ごしてきた。でも本気になれることを見つけた。恋は人を変えるこの言葉は本当なのだろう。俺は好きな人のとなりに立つために、変わろうとしている。
「できたぞ。中々のイケメンになったんじゃないか?」
確かに切る前よりかはイケメンだが、予想の範疇を越えるほどではない。これだけじゃトップアイドルを目指すのは難しいだろう。やっぱりなにかスキルを身に付けるべきか。
「これだけじゃダメです。なにか特技を極めることにします」
「それがいいかもな。瑠璃に対する思いが本物なら、きっと売れるアイドルになれることだろう。何がなんでも売れてやるっていうのが芸能界で生き残るのに、1番大切なものだと思うからな」
「はい頑張ります」
俺はそう言って、美容院をでた。それから服を買おうと思ったが、俺のセンスじゃ不格好なものを選びかねないから、妹である莉奈に選んでもらおうと思った。俺はとりあえず証明写真を撮って、それを履歴書に貼り、それを何件かの事務所に送った。
そして一週間後、合否の報告がきた。何個かはダメで一社だけ面接しませんかという電話がきたので、こんなすぐに一次選考が通るのだと驚いた。
そして莉奈に選んでもらった服を着て、俺は面接場所である事務所に向かった。
マップで調べて、馬橋駅から北千住駅に電車で向かった。そして北千住駅に着くと、電車降りて、事務所に向かう。
「ここか、小さな雑居ビルって感じだが、まぁ地下アイドルの事務所としては普通か。逆に都心の中心地なら、そのお金をもっとアイドルに使ってやれと思うし」
俺は雑居ビルに入り、エレベータで指定された階にでて、ドアの前で深呼吸をした。
「やっぱり人生をかけるところだから、緊張するな」
それでもいつまでも突っ立てるわけにはいかない。不審者として、通報されかねないからな。俺はインターホンを押した。
ここから俺の人生の歯車が動き出したように感じた。
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