おバカとおっさんと召喚主 ーEnd of Eternityー
ぴこたんすたー
第一章 振り分け試験とFクラス
第1問 おバカとお知り合いと召喚主(1)
高校二年になったばかりの俺の名は
実は俺は、あの優秀で難関校でもある、
◇◆◇◆
──あの日、俺は全てを賭けて、3月に春の振り分け試験に挑んだ。
この学園は学力低下を防ぐため、このテストの総合得点でクラス分けが決まる。
ランクは最高のもてなしが受けられるAランクから始まり、生徒数が増えたため、前年からできたばかりの最低のFクラス。
俺としてはAクラスになるために今日まで猛勉強したゆえに、是非ともいい点数を取りたいもんだ。
──教師のテスト開始の合図で、裏返しにしてある用紙を表にする。
一番初めは現代社会からだった。
この程度の政治・経済の問題、エリートな俺に解けないはずがない。
『ボキッ!』
思わず意気込み、余計な力が入ったせいか、2Bの鉛筆の芯が折れる。
何々、このくらい想定内だ。
慌てず騒がず、持ち前の鉛筆削りで、冷静さを保ちながら削ればいい。
そうさ、俺にはとっておきの秘策がある。
服の袖に貼り付けてある、タグに見せかけた答案用紙。
そう、このカンニングペーパーがある限り、俺に敗北の二文字はないのだ。
袖の他にも黒いブレザーの裏生地や、ズボンのポケット、上履きの底などと、徹底した対策を練っている。
俺はAクラスになるために手段を選ばない男だ。
編入試験はそこそこの学力があったが、振り分け試験は、それよりも二倍以上の学力が必要だという噂を知った。
楽勝で受かったから大丈夫だろうと、TVゲームや漫画を読んで遊び呆けていたら、この有り様ときたものだ。
恐らく、今の俺は中学生の問題すらも解けそうにない。
だから、別の意味でエリートの道を突き進もうとしていた。
勝負に打ち勝つには、寝る間を惜しんで作った、カンニングペーパーが必要なんだ。
「はあっ……。はあっ……」
俺の右隣りの席で女の子の苦しそうな声が聞こえてくる。
ピンクのロングヘアに、うさぎのマークの髪留めをした絵に描いたような美少女で、爆発的に胸もデカい。
テストもそっちのけで、どうやら体調不良のようらしい。
「はあっ……うっ!」
すると大きな音を立てて、女の子が床に倒れ込んだ。
「おいっ、大丈夫か!」
俺はカンニングペーパーをズボンのポケットに強引に詰め込み、床に寝転がった女の子の下に駆け寄った。
「すみません。この子、熱があるようなので、俺が保健室に連れていきます」
「いいのですか? 途中退席だと、彼女は0点と見なしますよ」
「だからって、体調が悪いのに放っておけるかよ! あんたには情というものはないのか!」
「情けで食べていけたら、苦労はしませんので」
「あー、もういいよ。これだから大人は嫌いなんだ!」
俺は大人になっても、こんなドライな立ちふるまいはしたくないな。
身軽な女の子をお姫様抱っこしながら、薄々感じていた……。
****
──こうして季節は4月。
俺は過去最低な点数で振り分け試験を終えて、花が舞い散る桜並木の道を走っている。
2週間前にした試験の総合評価も気になるが、今の俺には時間すらもなかった。
昨日も遅くまで夜更かししたせいか、目覚めたら朝の8時過ぎで、遅刻ギリギリだったからだ。
「はあはあ……何とか間に合ったか」
「全然、間に合ってないぞ。不動優流」
「げっ、鉄人29号」
「失礼な、
主に英語を担当しており、生活指導も務める、黒の角刈りの
冬でもタンクトップの服装で筋肉質な肉体は、熱血さながら血ではなく、機械油が通っている鉄人を彷彿させる。
「まあいい。お前直々に渡すものもあるしな」
西村教師がポケットに入れていた茶封筒を俺に手渡してきた。
一瞬、お給料か、何かと想像したが、俺はこの暑苦しい教師の弟子になった覚えはない。
「俺はな、お前が編入してきた当時から気づいていたんだが、お前も中々のツワモノということが分かってきてな……」
「はい、先生。俺はあなたと学んできて、凄く光栄でした……」
「ああ、そうだな。想像以上の実力の持ち主だったよ。お前がどうしようもない大バカ者だと気づいてな」
「へ?」
俺は不審に感じながら、茶封筒の包みを手で破る。
そこには驚きの結果が記されていた。
「今日からお前はFクラスだ。そこで真面目に勉学を一からやり直せ。俺が言いたいことは以上だ」
「あうあうああー……」
小学生の通知表のような『もうちょっとがんばりましょう』の黒い判子に、赤いマークでFクラスと書かれた内容。
俺が呆然と突っ立っていると、西村教師が筋トレで鍛えたゴツい背中を俺に向けて、学園の方へと戻っていく。
「じゃあな。後、
「年中薄着のあんたに言われたくないわ!」
****
──この文月学園は振り分け試験で取った合計点数によって、クラス分けがされている。
一番手前にあるAクラスなんて豪華絢爛で、冷暖房完備で冷蔵庫付き。
リクライニングチェアに、ノートPCが生徒一人一人に与えられ、フランス料理の給食や、大好きなプリンも食べ放題ときたものだ。
「いいな、いいな、Aクラスっていいなー。誰か俺と、この最悪な通知表で、わらしべ長者でもやらねーか?」
俺はAクラスの教室の窓に張り付きながら、存分にブルジョア気分を満喫するが……何か、やることなすこと、虚しいな……。
「──Fクラスは一番奥か。嫌な予感しかしないんだが……」
念願のFクラスの表札は折れ曲がっており、Fと手書きのメモ用紙が貼られているが、その紙が風で煽られ、Eと刻まれた文字が見え隠れしている。
元はここがEクラスだったようだが、そうまでして生徒を不安にさせたいのか、パブロフの犬め。
「まあいいか。ずっと立ってるわけにもいかないし」
俺は立て付けが悪い引き戸を開けながら、教室内に入る。
「うっ……これは洒落にならんな……」
カビとホコリだらけの畳敷きの部屋に、所々に怪しい色のキノコが生えてるし、壁からはすきま風が吹き、机はボロいちゃぶ台ときたもんだ。
おまけに椅子はなく、ぺちゃんこの座布団が投げ出されているし……。
そこはかとなく、色々とツッコミを入れたくなるが、笑点の大喜利じゃないんだぞ。
「マジで最悪だな、この俺の一年間……」
「まあ、そう言うなよ。畳だからこうやって自由に寝転がれるし」
「えっ、
俺の数少ない親友でもある、赤毛のソフトモヒカンで、男前の
「俺だけじゃないぜ、
「ハロハロー、ご機嫌いかが、優流」
雄二につられて、赤茶色の髪に、黄色い大きなリボンでポニーテールにした女子の
「ワシの存在も忘れては困るのじゃが?」
「
野郎なのに綺麗な顔立ちで、銀の針金の髪留めをした茶髪のボブカット、
「僕もいるよ。よろしくね~」
おまけに灰色のショートヘア、ムッツリすけべのカメラマン、
「ははっ、なにはともあれ、秀吉というお淑やかで、品行方正な美少女がいるからに、ハッピーな学園生活が送れそうだ。心から感謝するよ」
「何じゃ、その例えは?」
「あのさー、ウチが美少女で、秀吉は男の子だっつーの」
秀吉が苦笑いをする中、女の子な美波が俺を睨みつけて、自分という存在をアピールしてきた。
「ははっ、冗談はよしてくれよ、そんな女の子なんて、秀吉以外にどこに居るんだよ。本当、美波は夢見がちなだな」
「なんだと、一回、
鬼の面となった美波が俺の背後に回り、首に腕に足と、タコが引っ付いたように固めて、プロレスラーモードとなる。
こうなると待ち受けるのは、清楚な女の子というより、もう痛みしかないわけで……。
『ギリギリギリ……』
「ぐはっ、こっ、腰がコシの骨が悲鳴をあげているうううー!」
「だったらオプションでヘッドロックもお好みかしら(怒り)」
「アイタタタ、胸がないから、よりダイレクトに骨に伝わってえええー!」
「ああん? 貧乳で悪かったわねー!」
俺の頭が腕力で封じられ、さらに腰がゴムのように曲げられて、タコどころか、まるでサボテンにマフラータオルを巻き付けたような体勢になる。
でもヘルプサインを求めても、誰もバトンタッチしないし……。
俺は、日の光を浴びたモグラのように、ここサボテンの地で野垂れ死にしろと?
今さらだけど、俺たちはそんな他人行儀な間柄でもないだろ?
「むむっ、これはいい図が撮れそうだ。見えそうで見えないアングル、絶対領域がまた良い」
学業を
本来、携帯はそんなアダルティな使い道はしないけどな……。
『ガラガラ……』
「はあっ、はあっ……すみません。遅れてごめんなさい」
そこへピンクのロングヘアの美少女が息を切らして、教室内に飛び込んでくる。
俺が振り分け試験で助けた女の子、
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