気が合わない人

彼方希弓

第1話 夫とは気が合わない

 なんでこう気が合わないんだろう。

 結婚して27年も経つというのに。

 長年連れ添った夫婦の、阿吽の呼吸、みたいな感じは全くない。


 今日は、結婚記念日。

 土曜日、隔週休みの夫は、ちょうど休みだった。

 息子は、夕方からバイトで22時過ぎると言っていた。

 じゃ、ランチの時間に、ちょっとお祝いという感じで、高いお店に行こうかな?

 ちょっと高級な焼き肉屋さんか、握ってもらう

お寿司屋さんか。

 フレンチのランチとか?

 あ、予約してなきゃダメか。

 じゃ、やっぱり、焼き肉かな~、なんて思っていた。



 早朝

 夫がトイレに行った気配がした。

 何年も前から、寝室は別室だ。

 私の部屋は、トイレの前。

 誰かがトイレに行くと足音とかドアの開けしめで気づく。

 夫がトイレに行ったことはわかったけれど、まだ早朝だし、私は布団の中にいた。


 トイレから出ると、夫は私の部屋のドアを開けて


「起きろ!!おデブちゃん!!ランニングに行くぞ!!」


 と、大きな声で言った。


 本当に行く訳じゃない。

 これは、夫の冗談。

 それはわかっている。

 だけど、悲しくなった。


 結婚記念日だし、高級焼き肉食べに行こうか

 とは、言えなくなった。

 そんな、気分じゃなくなった。


 おデブちゃん……

 おもしろくないし、笑えない。


 

 そして、今日が結婚記念日だということも忘れているみたい。


 夫とは気が合わない。

 

 なんで、この人と結婚してしまったんだろう。

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