君に捧ぐ短編集

赤音

雨降る日の話


雨降る日の話。

梅雨の雨が降ったあの日。

小学生だったあのとき。

私は、美穂みほと一緒に傘をさして雨の中遊んでいた。

「美穂〜。」

と、元気に美穂を呼ぶ私。

まさか、あんな結末になるなんて思いもしなかった。

私が美穂のことを呼ぶと、

「なーに。」

九雨くうちゃん。」

と、私の名前を呼び返してくれた。

「あのね、また明日も遊べるといいね。」

「美穂ちゃんと遊ぶの楽しいから。」

と、私は軽く言ってしまった。

「うん。」

「そうだね。」

「明日も遊べるといいね。」

と、少し悲しそうな顔をしながら美穂が言った。

そのときの私は、その様子に気づかなかった。

(このときに気づいていれば)

と、今になって後悔している。


「美穂ちゃんと、晴れの日に遊べないの寂しいよ。」

と、私が言う。

美穂は、晴れの日には遊べなかった。

「日光が駄目なんだよね。」

と、美穂は言っていた。

ただあのときの私は、疑問に思ってなかった。

(病気なのかな)

としか思ってなかった。


ある雨の日。

私は、美穂に提案をした。

「一緒に遊園地行こうよ。」

と。

あの提案が間違いだったんだ。

「でも、晴れの日でしょ。」

「私行けないよ。」

と美穂が言う。

でも、私は引き下がらなかった。

「大丈夫だよ。」

「次の休みの天気予報雨だから。」

と、強引に誘った。

「じゃあ、また土曜日にね。」

「またね。」

と、断る隙はなかった。

「ちょっと待ってよ。」

と、美穂は私を呼び止めようとした。

その声を無視して、私は帰ってしまった。


土曜日。

いつもの公園で、美穂を待っていた。

雨は、降らなかった。

だが、曇りで日光はでていない。

(まぁ、来るよね。)

と、軽い気持ちだった。

しばらく待っていると、

「九雨〜。」

と、私の名前を呼ぶ、美穂の声がした。

私は、声のほうに振り向く。

ただ、そこに美穂は居なかった。

最初は、幻覚だと思っていた。

しばらく待っていたが、美穂はこなかった。


そして、現在。

あの出来事から、美穂には会えてない。

まるで、美穂が消えてしまったかのように。。

あの子と遊んでいるときが楽しかった。

もしかしたら、美穂幽霊なのかもしれない。

他の子は、

「美穂のことを見たことない。」

と、言う。

でも、私は憶えている。

あの子との記憶は、今でもはっきり憶えている。


もう一度逢いたい。

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