第5話 二人の夜
それから、俺たちは少しずつ関係を修復していった。
まず、時間を作ることから始めた。週に一度は必ず会う。仕事がどんなに忙しくても、その約束だけは守った。
会った時は、ちゃんと話をした。お互いの仕事のこと、悩んでいること、嬉しかったこと。些細なことでも、共有するようにした。
スマホを見る時間も減らした。一緒にいる時は、彼女だけを見る。彼女の言葉を、ちゃんと聞く。
そうやって過ごすうちに、関係は少しずつ元に戻っていった。いや、以前よりもっと良くなった気がする。
ある金曜の夜、彩乃が俺の部屋に泊まりに来た。
久しぶりに、一緒に夕食を作った。俺は野菜を切って、彼女が炒める。ぎこちないけど、それが楽しかった。
「拓海、人参、もっと細く切って」
「これじゃダメ?」
「太すぎる。火が通りにくいよ」
「はいはい、分かりました」
笑い合いながら料理をする。こういう時間が、何よりも幸せだった。
食事の後、ソファで映画を見た。彼女は俺の肩に寄りかかって、俺は彼女の髪を撫でる。
「ねえ、拓海」
「ん?」
「私、幸せだよ。今」
「俺も」
「これからも、ずっと一緒にいようね」
「ああ。ずっと一緒だ」
約束する。今度こそ、この約束を守り続ける。
窓の外では、夜の街が静かに輝いている。
彼女のいない夜は、寂しかった。でも、その寂しさがあったから、彼女の大切さに気づけた。
失いかけて、初めて分かることがある。当たり前だと思っていたものが、実はとても貴重だったということ。
俺たちは、まだ完璧じゃない。これからも、喧嘩することはあるだろう。すれ違うこともあるだろう。
でも、それでいい。大切なのは、そこから逃げないこと。ちゃんと向き合うこと。
彼女の寝息が聞こえてくる。穏やかな呼吸。その音を聞きながら、俺も目を閉じた。
明日も、この人と一緒にいられる。それだけで、幸せだった。
## エピローグ 新しい朝
翌朝、目を覚ますと、彩乃がキッチンで朝食を作っていた。
「おはよう」
「おはよう、拓海。もうすぐできるよ」
フライパンの音、包丁の音、そして彼女の声。
この音が、俺の朝を作っている。
テーブルに並ぶ朝食。トースト、サラダ、スクランブルエッグ、コーヒー。
「美味しそう」
「頑張った」彼女は笑った。
二人で向かい合って、朝食を食べる。
「今日、何か予定ある?」彼女が聞いた。
「特にないよ。彩乃は?」
「私も。じゃあ、どこか行く?」
「いいね。どこ行く?」
「水族館とか。久しぶりに」
「いいな。あそこ、初デートの場所だよね」
「そう。また行きたいなって思ってた」
「じゃあ、行こう」
彼女は嬉しそうに笑った。その笑顔が、眩しい。
窓の外では、朝日が差し込んでいる。新しい一日が始まる。
彼女と一緒の朝。これからも、ずっと続いていく。
彼女のいない夜に思ったこと。それは、彼女がどれだけ大切かということ。
その気持ちを忘れずに、これからも一緒に歩いていこう。
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