第10章:空っぽの部室と、残されたもの

ヒヨリは、それから三日間、熱を出して学校を休んだ。

四日目になってようやく登校してきたが、教室には向かわず、まっすぐ部室へと足を運んだ。 扉を開けると、目でわたげの姿を探す。けれど、そこにいるはずもない。

「……ふぅ」

小さくため息を吐くと、そのまま、わたげがいつも寝ていた布団に横になった。 クマのぬいぐるみに顔をうずめ、すやすやと眠ってしまう。

夕方になって目を覚ましたヒヨリは、大好きなポテチを手に取った。 けれど、のどを通らないのか、口にくわえたまま、放心状態でフリーズしていた。

今度は、ヒヨリが“生きるしかばね”のようになってしまった。

その姿を見て、ソウヤは何も言わなかった。 ヒヨリの気持ちも、わからないわけではない。

だからこそ、無理に元気づけようとはせず、 時間が経って、ヒヨリが自分を取り戻すまで—— じっくりと、そばで待つことにした。

一方、リオンは、わたげの残したデータをもとに、何か研究を続けているようだった。 パソコンの画面には、数式ばかりが並んでいて、ソウヤにはさっぱり理解できなかったが、 おそらく、あの“光の裂け目”について調べているのだろうと思った。

けれど、わたげがいなくなってしまった今、 ソウヤは以前のようにリオンの研究に興味を持てなくなっていた。

——ソウヤもまた、強烈な“わたげロス”を感じていたのだった。

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