SS:クリスマスイブ1

 今日はクリスマスイブ。もう冬休みだし、本来なら恋人である緒方千春の家に行って、ついに俺たちは……なんてことを考えていたのに、なぜか俺は学校の部室にきていた。そこには千春と星野、それに美空ちゃんがいた。


「あ、やっと黒瀬先輩来ましたね。じゃあ、写真部の活動始めますか」


 美空ちゃんが言う。


「いや、なんでクリスマスイブに部活なんだよ!」


「だから、言ったじゃないですか。写真部は毎年クリスマスマーケットの写真を撮るんです」


「だからって、今日じゃなくていいだろ」


「でも、今日が一番カップルの写真が撮れますから」


「カップルの写真なんて撮ってどうするんだよ」


「もちろん、それをカップルに売って部の活動資金にするんです」


「あくどいな! 観光地の写真屋さんかよ!」


「でも、結構稼げますよ。許可も取ってるんで公認ですし」


「まったく……」


 仕方ない。俺も部員である以上、これに付き合うしかないか。それに――


「クリスマスマーケット、楽しみだなあ」


 千春は目を輝かせてる。まあ、写真は美空ちゃんに任せて俺たちはデートを楽しめばいいだろう。

 そう思って部室を出ようとした俺の腕を美空ちゃんがつかんだ。


「先輩はプリンタを運んでください」


「はあ? そんなの持って行くのか」


「当然です。その場で印刷して売るんですから」


「そうか……わかったよ」


 俺はプリンタの入ったカバンを持った。


 4人で学校を出てクリスマスマーケットに向かう。

 千春の横に行こうとしたが、そこには星野がいてがっつり腕を組んでいた。


「星野、千春は俺の彼女なんだけどな」


「いいじゃん、昼間は私が借りても。だって、夜はお楽しみなんでしょ?」


「う……」


 俺は千春と目が合い、お互いに顔を赤らめる。


「だから、昼間は私が千春を借りるから! ね、千春?」


「はいはい、晴真、ごめんね」


 千春もそう言うから仕方ない。どうせ夜に楽しめるし。ここは星野に譲るか。

 俺は2人の後ろからついて行くことにした。


「それにしても、西原と露崎は?」


 後ろから千春に聞いてみた。


「柚希ちゃんはバスケ部の試合があるし。澪音はなんか用があるって」


「ふうん、用ね……」


 俺がいぶかしげに言ったのを聞いて美空ちゃんが言う。


「露崎先輩はイブにイチャイチャする黒瀬先輩と千春さんを見たくなかったんじゃないですかね」


「そうかもしれないけど、いつもやってることだろ」


「今日はイブですし特別です」


「……そんなもんかね。俺には理解できんが」


「そう言いながら千春さんと特別なことをしようと考えてたりしませんか?」


「べ、別にそんなことは考えてないし」


 まあ、確かに今日は特別だ。俺はこのあと千春の家に行く。それはそういう雰囲気になるだろうと思ってのことだし。だから、露崎はそういうことを意識して今日は来たくなかったのかも知れない。西原も試合を言い訳にしてそういうことなのかもしれないし。


 でも、だとしたら――


「美空ちゃんは大丈夫なのか?」


「何がですか?」


「だから……露崎が考えるようなことだよ」


「私は先輩が好きなんて言ったことは無いはずですが?」


 そうだった。ずっと思わせぶりなことを言ってたけど、はっきり俺が好きなんてことは言ったことは無かったんだった。


「じゃあ、別に問題ないってことか」


「はい、大丈夫です。私には作戦もありますし」


「作戦?」


「なんでもないです」


 やっぱり、美空ちゃんはよく分からない。



 そうこうするうちに俺たちは会場に到着した。


「うわあ! すごーい!」


 千春が目を輝かせる。


「千春、あっちすごいよ! 行こう!」

「うん!」


 千春と星野はあっさりと雑貨屋に行ってしまった。俺もついていこうとすると腕を捕まれる。


「先輩、どこ行くんですか」


 美空ちゃんだ。


「いや、俺も千春と――」


「部活はちゃんとやってください」


「でも、千春と星野が――」


「あとで交替しましょう。今、先輩が離れていったら、私一人で撮影して印刷して接客もすることになるんですけど」


 確かにそれは大変か。


「……わかったよ」


 俺と美空ちゃんは撮影ブースに行く。ここにクリスマスっぽい飾りが置いてあり、その前で写真を有料で撮るというシステムだ。


「では、先輩、客を呼び込んでください」


「はあ?」


「だって、私が写真を撮るんですから。先輩は呼び込みです」


「わかったよ。ったく……」


 俺は仕方なく、声を出した。


「撮影、いかがっすかー!」


 しばらくすると次第にカップルが集まってきた。美空ちゃんが撮って即プリンタで印刷し、渡していく。一枚5百円か。いい商売だ。


 そのうち、千春と星野が帰ってきた。


「さて、黒瀬。私と交替しようか。千春と楽しんで来て」


 星野が言う。


「……いいのか?」


「うん、だって千春もそうしたいだろうし。私は千春が幸せなのが一番なんだから」


「梨奈……」


 こいつ、ほんとに変わったな。


「ありがとな。千春、行こう」


「うん、梨奈ありがとう」


 俺と千春はようやく二人でクリスマスマーケットに行くことが出来た。


---------

(②へ続きます)


※新作もよろしくお願いします。

「車屋竜太郎は今日もフラれる」

https://kakuyomu.jp/works/822139840407101499


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