第20話 相談

 放課後。


 今日も俺は千春を家まで送っていた。

 家の前に着いたとき、千春が言った。


「晴真、このあと時間ある?」


「え!? そ、それは……」


 まさか、家に両親が居ないってやつなのか!?


「時間あるならでいいんだけど……」


「う、うん……時間はあるぞ」


「そっか、美空ちゃんがまた晴真に相談したいって」


「なんだ、そっちか」


「……そっちって?」


「いや、なんでもない」


 家に誘われるのを期待してた、なんて口が裂けても言えない。


「美空ちゃん、わざわざ私に許可取るんだよ。別につきあってるわけじゃないんだから、いいのにね」


「そうか。だったら、美空ちゃんと連絡先交換しておこうかな。いちいちお前を通すのも悪いし」


「ダ、ダメ!」


 千春が慌てて言った。


「ダメなのか?」


「う、うん……美空ちゃんに何か連絡したいときは私経由で」


「そうか。まあ、別にいいけど」


「……晴真、私の反応見たくてわざと言ってない?」


「まあ、少し」


「もう!」


 千春が軽く俺を叩く。俺は思わず笑ってしまった。

 こうしてる時間、なんか楽しい。


「でもね、ほんとに美空ちゃんと仲良くしすぎたらダメなんだからね!」


「大丈夫だよ。俺が一条の妹に手を出すかよ」


「ならいいけど……でも、深刻そうにしてたから相談には乗ってあげて」


「わかったよ」


 というわけで、俺は昨日と同じ公園のベンチで美空ちゃんを待っていた。


 しばらくすると、美空ちゃんがやってきた。自販機に向かい、またミルク入りコーヒーを買ってくる。


「別にいらないのに」


 俺は受け取りながら言う。


「相談料です」


「安いな!」


「残りの代金は、美少女と一緒に居られる時間、ということで」


「俺はいつも千春と一緒に居るから、美少女とは十分一緒にいるんだけど?」


「……黒瀬先輩、千春先輩のことを美少女って思ってたんですね?」


「う……本人には言うなよ」


「では、貸し一つと言うことで」


 口ではこいつに勝てそうにないな。敵にまわさないようにしよう。


「それで、相談って?」


「兄のことです。実は……私もハーレムを抜けたいと思っていて」


「えっ、そうなのか!?」


 意外だった。てっきり、どうしたらもっと兄の気を引けるか、みたいな相談だと思っていた。


「はい。自分でも分かってるんです。こんなの異常だって。兄と付き合いたいとか、恋人になりたいとか――そんなのはラノベの話です。現実には居ないですよね」


「まあ、普通はな」


「だから、自分が恐くて……兄のことは好きですけど、実の兄ですし、結婚できないことも分かってます。それなのに、自分でも止められないんです……」


 その声には迷いが滲んでいた。確かに美空ちゃんの恋には先が無い。将来、一条は他の誰かと結婚するだろうし、そうなれば美空ちゃんの恋は破綻する。必ず失恋する運命だ。


「だから、もうハーレムも抜けたくて。兄への恋もやめたいんです。千春さんや梨奈さんをハーレムから抜けさせた黒瀬先輩なら、何かヒントがもらえるかと思いまして」


「だから言ってるだろ。千春は自分の意思で抜けたんだって」


「でも、梨奈さんはどうなんですか?」


「あいつには自分を自覚させただけだよ。自分は一条を本気で好きじゃなかったってことをな」


「そうですか。では、私も目を覚まさせてください! そうすれば、きっと楽になれると思うんです!」


 美空ちゃんの瞳は真剣だった。そうか、本気でハーレムを抜けたいんだな。それなら力になってやりたい。だけど、その前に確認しておかなくちゃいけないことがある。


「美空ちゃんは一条のことが本当に好きなのか?」


「はい、もちろんです。私は梨奈さんとは違いますし、他のハーレムメンバーに勝ちたいとか、そういうのでもありません。純粋に、兄が好きです」


「そうか。じゃあ、恋人として付き合いたいのか?」


「もちろんです。恋人になりたいです。いずれは告白するつもりです」


「じゃあ、恋人になって、何をするつもりなんだ?」


「それは……デートとか、二人っきりでいろんな場所行ったり、あそんだりして、イチャイチャしたりしたいですね」


 美空ちゃんはそれを想像したのか、ちょっと鼻息荒く、興奮気味だ。


「だったら、そのあとはどうするんだ?」


「そのあと?」


「普通、恋人ならそのあとキスしたり、さらにはその先までするんだぞ。そういうことをしたいのか?」


「それは……」

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