ゾンビが蔓延る世界で二人旅
れめな
第1話
「そろそろ次の街へ行くか。」
市営住宅で男が机に広げられた地図を見ながら呟く。
地図にはバツマークが大量に刻まれていた。
この地図は男が文明が滅んだ世界で効率的に食料を集めるために作ったもので、探索済みの建物にバツをつけていた。
街全体にバツマークはついており、この街にはもう食料がないことがわかった。
「えー、あたしこの街気に入ってたのに。夜景は綺麗だし、都会よりも澄んだ空気だし。」
ソファに寝転がっていた六凪がそういって不貞腐れる。
六凪は赤いヘルメットを被り、セーラー服を着たショートヘアの少女で、美人と言える程に整った顔つきをしていた。
「夜景は確かに綺麗だったけど空気はどこも同じ、文明は滅んで排気ガスを出す人間は殆ど死んだんだから。どこも綺麗で澄んだ空気になったと思う。」
「それはそうかもしれないけどさ。田舎といえば空気が澄んでいる、ってのが定番じゃん。てか、正論ばっかりで会話すると嫌われるぞ。」
「まあこの話は置いといて。明日にはここを出るつもりだ。そのつもりで準備してくれ。」
「まああたしはゾンビが喰えるならなんでもいいや。ちゃんと毎日ゾンビ狩りは行こうね。」
「わかってるよ、六凪。」
二人が話している間、外は騒がしかった。
うぅぅ、泣き声のような、うめき声のような、声が絶え間なく聞こえ続けた。
まるで泣くような悲痛な声は、死んでしまったのに生き続けるゾンビの悲鳴のように感じられた。
死んでも生きたように動き続けるゾンビはやはりあの日の出来事を考えているのだろうか。
あの日、人類が緩やかに滅亡の道に進んだ日。
その始まりは世界中で同時多発的に原因不明の感染病が発生するという出来事だった。
感染病の感染経路は感染者に噛みつかれること、感染者は体が腐り始め知性を失い、人を襲うようになる。
特徴がまるでゾンビ映画のゾンビのようだったので安直にゾンビ感染病と呼ばれた。
ゾンビ感染病というB級映画のような感染症にSNSや掲示板は今までにない盛り上がりを見せていたことを覚えている。
発生してから一ヶ月で世界中の主要都市にはゾンビがあふれ返り人類規模で大規模な混乱とインフラの停止が相次いだ。
それからというもの人類は緩やかに滅亡していく。
二ヶ月たった頃には、生き残った人類はネットワークも電気も使えない原始的な生活を行うようになり、四ヶ月経つと日本政府がなくなった。
世界の情報を得る手段は失われ、どれだけ人類が生き延びているのか、国が残っているのかはわからなくなっていった。
ただ俺にとってはそんなことは些細なことで、大切なのは相棒とも言える存在である六凪とこの荒れ果てた世界を生き延びる事だ。
ゾンビが発生してから一年が経った今では拠点としている街から食料が完全になくなり、餓死するのは時間の問題だった。
だからこれから俺と六凪は旅に出る。
ゾンビが蔓延る世界で生き残るために。
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