四話 騙すことこそ活と見つけたり
私はハンドガンを構え、慌てて振り向こうとする鳴子先輩に向かってトリガーを引き数発撃ち込んだ──!
銃声が轟いて、ジャングルの鳥たちが一斉に飛び立った。そして……辺りは静まり返る。この戦いの決着は──?
「うっ、く……あ? ウソ、アタシ脱落してない?」
……終わっていなかった。私の銃撃はすべて外してしまい、慌てて鳴子(なるこ)先輩から距離を取る。
(はぁ……やっぱり銃の扱いは苦手だね。私には向いてないかも)
ため息まじりにそう思い、近くにあった、大人ひとりが余裕で隠れられるほどの大木に隠れた時。鳴子先輩はお腹を抱えて可笑しそうに笑う。
「アッハハハ! あの距離で全部外すか? ふつー? きりちゃん、銃の扱いが下手なんだね。こいつはドッカーンと致命的な弱点だよ」
……うん、いずれはバレることだから、大した問題じゃない。大事なのは、ここからどう動くか──だよね。
私の銃の腕前を知った鳴子先輩は、きっと大胆に攻めてくる。だから隠れ続けるのは悪手だ。
「なら、ドッカーンとド派手に攻めさせてもらうよ!」
……ほら来た。鳴子先輩は、私が隠れている木に向かってサブマシンガンを撃ちながら突っ込んでくる。このままじゃ木が破壊されるだけ。でも、飛び出したら蜂の巣。
(なら、やることは限られてくるね)
こんな危機的状況でも、私は静かに息を吐ききり──そして、一気に吸い込んだ。集中完了。ここから、忍者の動きを見せてあげよう。
「──寝転季凛、忍んで参る!」
小声でそう呟いた私は、あえてそのまま大木の陰に留まった……数秒後、鳴子先輩が真正面から回り込んでくる!
「ハハッ、またお地蔵様の真似事かい?」
「違いますよっ」
「──!?」
私は地面を蹴って、落ち葉を舞い上げさせた。視界を塞がれた鳴子先輩は、思わず足を止める──これは、隠形術のひとつ“木の葉隠れ”。
落ち葉を使った目くらまし──即席の木の葉隠れ。実戦向きに改良した、私流のアレンジだ。
「くっ、そんな小細工はアタシには通じないよ! って、な──!? ハンドガン……だけ? きりちゃんはどこへ行った!?」
その隙に私は、ハンドガンを置いて姿を消し──さっきと同じように、鳴子先輩の背後へと回り込んでいた! これも隠形術の一つ、“変わり身の術”。
うん、今回もバッチリ決まったね。
「なんてな。さすがに二度目は通用しないよ、きりちゃん!」
……けど、鳴子先輩はしっかりと私に向き直り、サブマシンガンの銃口をこちらに向けていた。ふふ、私は思わず笑みを漏らした。
鳴子先輩って本当にすごい。あのハンドガンで視線を誘導するつもりだったのに、見抜かれちゃった。
でも──残念。私のほうが、一枚上手だよ。
「いえ。これは初見のはずです。“ドッカーン”と派手好きな鳴子先輩には、ぴったりのプレゼントですよ」
「……は?」
私はバックパックから、パンパンに膨らんだゴムボールを取り出した。もちろん、ただのゴムボール。でも鳴子先輩は、それを知らない。
驚いて反応が遅れたその隙に──私は、さらに一手を打つ!
(忍者とは、周囲にあるものを最大限に活かす存在。……経験が活きたね)
そう思いながら、私はバックパックから二個目に選んだ武器。サバイバルナイフを抜き、ゴムボールに勢いよく突き刺した!
ゴムボールが破裂し、爆音が辺りに響き渡る。鳴子先輩はその音に驚き、動きを止めた。
……この隙、逃すわけにはいかない! 私は予備動作なしで最高速を発動──我が寝転流忍法、その名も……
(
鳴子先輩には一瞬だけ、私の姿が消えたように見えただろう、鳴子先輩が驚いてる。なら、その大きな隙を活かして飛びかかって……
彼女を押し倒す!
「オシマイです、鳴子先輩!」
その次に、サバイバルナイフで鳴子先輩の腹を数回刺しこんだ!
「あ〜くそっ、ドッカーンと爽快に負けたぁ。でも、次は勝つからね、きりちゃん」
この数秒後。鳴子先輩の体は光の粒のように散って……ファンファーレが鳴った。ふふ、やっぱり私は近接のほうが向いてるね。忍者だったときにもそうだった。
そう私が過去のことを少しだけ思い返した後、私の体は突然光に包まれて……急に現実世界に引き戻された。
プシュゥゥゥッという空気が抜ける音と共にカプセルが開かれた。私はフルフェイスヘルメットを外してから外へ出ると……三人の先輩が拍手をしていて、鳴子先輩が手を差し出していた。
「グッドゲームだったよ、きりちゃん。いやあ負けた負けた〜」
「鳴子先輩。そちらこそ、グッドゲームでした。いい試合が出来て嬉しいです!」
「うんっ、知ってる。戦っている時のきりちゃんはドッカーンと嬉しそうに活き活きしていたからね」
私は嬉しそうに話す鳴子先輩の手を握ると、急に真剣な顔付きになった。え、あれ? な、なんで急にそんな顔をするんだろう。
私、変なことをいったかな?
「きりちゃん、いまから大事なことをいうよ」
「は、はい」
私は息を呑んで、身構えた。な、鳴子先輩……どうか怒っていませんように。
「VBGで戦いあった後の奴らはノーサイド。つ〜わけで今からドッカーンと美味いもんを食べに行くぞ〜」
「…………はへ?」
あ、あれぇ? なんだか想像と違う〜……で、でも。怒っていないからいっか。私はそう思って気にしない様にした。
◆
さてさて、学園ではまだ部活の時間だというのに、私たちは制服姿のまま、都内の“М”のロゴでお馴染みのファーストフード店に来ていた。
その前に少し話すんだけど、戦いの場に居なかった三人の先輩は別の所で私と鳴子先輩の戦いを見ていたらしい。
「いやはや、実に見事なものじゃったなぁ。あのような洗練した動き。とてもVBGの初心者とは思えん」
感心して、蝶の羽のようにふわりと揺れるツインテールを右手で優雅に弄びながら感心しているのは──蝶王院 響(ちょうおういん ひびき)先輩。
この人はシェイクだけを頼んでるんだけど、褒められると、ちょっと照れる……かな。
「珍しく響さんと意見が一致しましたね。寝転さん……あなた、何者なんですか? もしかして裏の顔でもあったりすます? 超人さん」
小跳 遊(ことび ゆう)先輩は、マカロンを三個とコーヒーを頼んでいて、私のことをじーッと見つめていた。割りと鋭いことをいわれちゃったけど、私は一切動じない。
忍者として動揺は絶対に隠さないといけないからね。
「あのあの、すごかったですよオラー! なんというか……その、忍者みたいでした! 影分身とか出せるんですかコノヤロー!」
わあ。後巣 星(ごず せい)先輩がすごく興奮している。後巣先輩には申し訳ないけど本当の忍者はアニメみたいな事は一切できないんだよ。
でも……期待してこっちを見ているし、本当のことは今はいわないでおこっと。ちなみに後巣先輩はハンバーガーとオレンジジュースを頼んでいるね。
「ハハハッ、さっそく褒めの嵐を受けてるじゃないか。いやあ、これだときりちゃんを連れてきたアタシはドッカーンと誇らしいってもんだよ」
豪快に笑う鳴子先輩は、大きなハンバーガーを五つも頼んでモグモグと美味しそうに食べている。わあ〜、すっごい。あんなに食べれるんだ。
って、ちょっとだけ待って。伝えるのが遅れたけど、私は今……猛烈に感動しているよ。下手をすれば初めてVR世界に行った時以上の感動だ。
(夢にまで見た女子会をいま、私は経験してる……! 感動だよ〜)
ああ、こんな所で泣いちゃいけないのに。涙が出そうだよ。だから私はグッと涙を堪えて頼んだチーズバーガーを食べてみる。
(初めて食べたけど、美味しい……!)
今日はなんて幸せな日なの? 罰が当たらないかな。VBGという楽しいスポーツに出会えて、まさか中々かなわないと思っていた女子会まで経験したんだから。
そんな感動に打ちひしがれていると、鳴子先輩が突然口を開く。その言葉はあまりにも突拍子もないことだった。
「まあ、きりちゃんがVBG部に入ることは確定として……諸君、アタシたちは次の土曜日に行きます。はい、ドッカーンと大きな拍手〜!」
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