異世界転生チート勇者様、私に惚れているらしく、他の何にも興味がないらしい
よつ丸トナカイ
【第1章】 勇者登場!
第1話 勇者降臨
「お母さん、行ってきまーす!」
「気をつけて行ってくるんだよ!」
静かな田舎村の小さな家から、カゴを手にした若い女性が元気よく飛び出してきた。
暖かい日差しの中、風と競争するように、森の方へと駆けていく。
「おばさーん!今日は足の調子はどう?」
「リサの薬のおかげで楽になったよ!ありがとう!!」
畑仕事をしていた中年の女性が笑顔で手を振った。
私の名前はリサ。18歳。
この小さな田舎村、「エジマーズフォレト」に両親と暮らしています。
普段は両親の小麦畑の作業を手伝っています。
私はとても好奇心が強く、村人や旅人から沢山の事を教えてもらいました。
だから、この村の若者の中では唯一、読み書きと計算が出来るのです。
読み書き計算を出来る人は村の中でもほんの数人。
だから、みんなの為に役立てるよう、日々頑張っています!
リサは森の奥、巨大樹の根元でしゃがみ込んだ。
この場所には特別な薬草が生えている。それを収穫するのが今回の目的だ。
「先週は全く見かけなかったけど、やっぱり雨が降った後にはよく成長するんだ!」
リサは成長が良い薬草だけを選び、丁寧に収穫を始めた。
「これで、また痛み止めが作れる。おばさんの足の痛みもこれで良くなればいいけど」
リサには簡単な薬草調合の知識を持っている。
この田舎の小さな村には医者なんていない。
だから、この村を訪れた旅人から薬の調合を教えてもらった。
痛み止め、解熱、怪我。この最低限の3種類だけを。
薬草の収穫に夢中になっていると、背後の藪から「ガサッ」と音がした。
リサは表情をこわばらせ、背後の藪に視線を向けた。
風が吹いていないのに藪が小さく動いている。
次の瞬間、藪の中から飛び出した物を目にした時、リサも驚きの表情に変わった。
藪から出てきたのは、小石ほどの光の玉だ。
小さく左右に揺れながら、藪の前で漂っている。
「なに、これ・・・?」
興味をひかれたリサは、そっと手を伸ばした。
その瞬間、光は強く輝き始めた。
「きゃっ!!」
思わず手を引き、数歩後ずさる。
その光はさらに大きく膨れ上がり、直視できないほどの光の強く輝いた。
リサは腕で目を覆い、顔を背けた。
激しいまぶしさの中に、何かの存在を感じた。
そして、光は消えた。
おそるおそる目を開けると、そこには、堂々とした風格の男性が立っていた。
息を呑んだ。一体これは?
リサは思い出した。昔、旅人が私に話してくれたことを。
それは、光の中から異世界人が転生して私たちの悪夢の様な世界を救ってくれるという昔物語。
「・・・昔話だと思っていた事が、本当に?」
おそるおそる声をかけた。
「あの、あなたは一体・・・?」
その男はリサに微笑みを向けた。
「私の名は、遠藤翔馬! 訳あってこの世界に転生した勇者である!」
リサの驚きが止まらない。
転生勇者って本当に、いたんだ!
勇者なんて昔話の中だけかと思っていた。
その勇者が目の前に。
勇者様! わたし達の村に降臨されたのですね!
これは奇跡としか言いようがない!
だけど、この村は幸せだから特に救ってもらう必要はないのだが。
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