第4話 全てのメンヘラがチョロいわけではない

珍しく、リスカせずに帰路につく。

歩きスマホは駄目だが、歩きリスカはもっと駄目だ。

前に歩きリスカ中に転んで救急沙汰になったことがあるのに、それからも毎日やってたからな。これを機にやめるか。

気分がいいのもあって、世界が違って見える。

チョロいわけではない。人によっては「あの程度」と言える経験だとしても、俺にとってはそれほどの事なのだ。

見ろ、あの草むらに咲く綺麗なキキョウの花を。

なんで山地にしか咲かないキキョウがここに……

いつも腕にしか目線が行ってなかったからわからなかったが、視線を上に上げれば、素晴らしいものがあるのだ。たまには、いつもと違う方角に目を向けてみよう。

と、安い自己啓発本みたいな事を言いながら歩く。

ちょっと周りを見渡してみると、手を繋いで歩いている小学生と母親がいた。

母親は俺が見ていることに気づくと、子供を自分の後ろに隠して、俺をキッと睨んだ。

そういや、ここらで不審者を見かけるって聞くなぁ……それか。

確かに子供をじろじろ見ながら歩くのは不審者っぽいかもしれん。怖い思いをさせちゃったな。

俺は親子にお辞儀をして離れ、今度こそまっすぐ帰路についた。


その日の夜。夕飯の支度をしている。

夕飯と言っても、冷凍食品を温めただけのもの。

やることはレンジを起動して、皿を置く。それだけで夕飯を食うことができるというのだから、冷凍食品という発明は偉大だ。

俺はマンション3階の角部屋に一人暮らしなので、親に夕飯を作ってもらう事はない。最後に親の手料理を食った日が何月何日かも、俺は思い出せない。……待て、なんでそんな悲しそうな……親が死んでるってわけではない。

俺の両親は、俺が高校に入学したのと同時期にどちらも出張で遠くに行った。

元々互いに口数が少なかったけど、流石にいなくなった当初は応えたな……

喋らないにしても、そこに確かに存在した人がいなくなって、もぬけの殻になっていたから。

毎月仕送りと生活費は来るけど、特にメッセージはない。仕事人間だからな、2人とも。

最早ホームシックになることもなくなった……最後にテレビつけたのいつだっけ。

料理もしないし出してないゴミも多い、見渡す限り点々と置いてある、パンパンのゴミ袋。ゴミ屋敷って程じゃないが、荒れてる。一体いつからだ?


「……ゴミ出さなきゃ……」


幸運なことに、俺はゴミの分別はハッキリやる人間であったため、やる事は袋をそれぞれの場所に仕分けるだけだった。

袋を仕分け終わり、さて夕食……という所でスマホが鳴った。


『やっほ〜東波君!』


『いい写真になったから送るね!』


『(写真添付)』


野上からのLINEだった。

メッセージと共に載っていたのは、放課後に撮影された俺の写真。

とりあえず言うべきことは決まっていたので、書き込む。


『これ本当に俺……?』


『本当に君です!写真写りいいね!』


びっくりしたよ。

なんか病んだ雰囲気のイケメン流れてくるんだから。あまり大きな編集もしていないみたいだし。

俺と知った瞬間、超恥ずかしくなったけども。

光の使い方と編集で、人はこんなにも変われるんだな。

俺は野上にお礼の言葉を送る。


『一瞬俺に見えないくらいには綺麗に出来てると思う。ありがとう。編集お疲れ様です。』


メッセージを送った瞬間に既読がつき、返信が来る。


『私もこんないい写真作れて大満足!ありがとう!』


こいついい人すぎないか?

俺なんかの為にこんなに時間かけて編集してくれるなんて。

決めた。明日学校に行ったら面と面でお礼を言おう。

そう決めると、俺は夕飯をかきこんだ。

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