第24話 恋愛初心者たちの相互理解

「へぇ~すっごくオシャレだね。こんなお店知ってたの?」


「いや、知らなかったからいろんなサイトを探したり人に聞いたりしてオシャレな場所を探したんだよ。気に入ってくれたか?」


「うん! すっごく雰囲気良くていいね! あと、龍くんがうちのために探してくれたって言うのが嬉しいな」


 満面の笑みでそういう凜々花はやっぱり普段より可愛く見える。

 服装の問題なのか、僕たちが置かれてる状況がそうさせているのか。

 どっちなのか。

 未熟な恋愛初心者にはどっちか判別がつかなかった。


「喜んでもらえたようで嬉しいよ。努力しただけのことはあったかな」


 サイトを調べ回ったり、姉さんとかに聞いてみたりと結構このお店を探すのに手間取った。

 だけど、それだけ労力をかけただけあってかなり雰囲気の良いお店だ。


「もっと適当に済まされるもんだと思ってたから、かなり嬉しいよ。でも、なんでカフェにしたの? 水族館とか動物園とかいろいろあるのに」


「それについてはちゃんと説明するから、先に注文だけ済ませちゃってもいい? 料理が来るまでそれなりに時間がかかると思うし」


「それもそっか! じゃ、注文しちゃお~」


 凜々花は目を輝かせながらメニューを見る。

 いつもは凛々しい雰囲気を纏っている凜々花だったけど、今日はなんだか年相応の女の子みたいだ。

 やっぱり、清楚な服を着ているのが関係しているのかデートと言う状況が僕にそう錯覚させているのか。


「ゆっくり選んでいいからな」


「いや、うちは即断即決をするタイプの人間だよ! というわけで後10分くらいは待ってもらおうかな」


 全く即断即決できていないタイプだった。

 それどころか、10分かかったからどちらかというと優柔不断なタイプではないだろうか。

 まあ、買い物が長いとか何かを選ぶのに多大な時間を要する人は知り合いに二人いるので慣れてしまっているからなんとも思わなかった。


 ◇


「それで、なんでわざわざカフェを選んだのか教えてくれるんだよね」


「もちろん。隠すような事でもないしな」


 最初は高校生の定番のデートスポットを探していた。

 だけど、人気だからという理由だけで選んでしまってはただの上っ面だけの中身のないデートになってしまう。

 せっかくデートをするのなら有意義な時間にしたかった。


「僕は今まで凜々花のことをよく知らないからさ。何が好きで何が嫌いかとか。そう言う簡単なことも知らないだろ? 多分凜々花も」


「まあ、間違いないよね。うちが知ってるのは龍くんが優しいって事と、トラウマを抱えてたってことくらい」


「逆にすごいこと知ってるよな。僕が目立つのが好きじゃない理由を知ってる人なんて数少ないのに」


 あの状況では話すしかなかったし、聞いてもらってすっきりした。

 凜々花のおかげで墓参りに行く決心がついたから、その点では感謝しかない。

 だからこそ、僕も凜々花とちゃんと向き合おうと思ったんだ。


「変だよね~まあ、うちも龍くんのこと知らないし。つまり、ここでお互いのことをもっと知ろうって感じ?」


「そういう事。こんな風にゆっくり話す機会なんて今までなかったでしょ?」


「だって、龍くんが私のことを避けてたりちゃんと話してくれなかったりしたからね~流石に傷ついたな~」


「ご、ごめん」


 嘘告白の件があったとはいえ、あの対応は確かに酷かったと思う。

 この点については完全に僕が悪いし反省しないといけない。

 でも、好きになったらえぐい振られ方するんだしな~

 って、エグイ振られ方をしないのなら僕は凜々花のことを好きになるのか?

 わからない。

 でも、時間をかければ好きになってしまうような気がする。


「別にいいよ~屋上で命がけでうちの事助けてくれたからちゃらでいいよ~」


「ありがとな」


「お礼を言うのはうちの方なんだけどね。屋上でも助けてもらったし、ストーカーからも守ってもらった。うちはこの恩をどうやって返せばいいかずっと迷ってるんだよ?」


「気にしなくていいって。あんなの僕の自己満足なだけだし。恩なんか感じなくてもいい」


 あの時は誰かのために自分の命を擦り削って、自分が出来る範囲で誰かの助けになって死にたいと思っていた。

 だから、恩を感じられるようなことは決してしてないと思う。


「そういうわけにも行かないんだけどな。ねえ、本気でうちと付き合わない?」


「それは無いよ。恩返し目的で付き合うのも違うと思うし、僕たちはまだお互いのことを知らなさすぎる」


 ここで了承をしたらエグイ振られ方をするんだろう。

 流石に泣いちゃう自信があるし、心だってちゃんと折れる。


「それもそうだね。じゃあ、今日でお互いのことを深く知ろう! で、あわよくばうちと付き合って!」


「そこまでいかないだろ!?」


 そんなこんなで僕たちのデートは始まった。

 デートと呼ぶには少々未熟すぎるかもしれないけど、僕にはこれくらいの方が心地いい。

 互いの好きな事、嫌いな事やハマっている物事。

 それらを話し合う。

 意外にも楽しい時間だった。

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