第13話 前を向いて生きる
二人が僕を見つめる中、ゆっくりと便箋に目を通す。
懐かしく、綺麗な字で文章が綴られていた。
「龍斗へ。この手紙を読んでるってことは私は無事に死ねたみたいだね。何の相談もしないでこんなことになって本当にごめんね。先に言っておくけど、私が死んだのは私が弱かったからだよ。龍斗は何も悪くないし、お願いだから自分を責めないで欲しいな」
一度便箋から視線を外して息をつく。
少しだけ気分が落ち着いた。
このまま読み続けたら涙がこぼれてしまいそうだ。
それでも、最後まで読まなければいけない。
心菜が僕に残した最後のメッセージを。
「あと、絶対に私の後を追おうとしたり死のうとしたりしないでよ。絶対にそれだけはやめて。龍斗には幸せになってほしいから。私は龍斗のことが大好き。だから、そんな龍斗が苦しんで自分から死を選ぶような事だけはしないでね。本当にごめんね」
心菜のメッセージはそこで終わっていた。
久しぶりに見る心菜の字だけでも涙が出そうだったのに、こんな文を見せられては涙を堪えられそうになかった。
でも、心菜が最後に僕に残してくれた手紙を僕の涙で汚すわけにはいかない。
丁寧に折りたたんで便箋を封筒の中にしまう。
「読み終わった?」
「ああ、読み終わった」
涙が流れる。
こんな風に涙を流すのなんて久しぶりかもしれない。
でも、流さずにはいられなかった。
「大丈夫……じゃなさそうだね」
「大丈夫ではないな。乃彩にまでこんなみっともない姿を見せるつもりはなかったんだけどな」
「みっともなくなんてないよ。大切な人を失って、その人から送られた手紙を読んだら泣くでしょ普通。膝枕でもしてあげようか?」
「どうしてそうなるんだよ……もうちょっと元気な時にお願いする」
「断らないんかい」
姉さんからの突っ込みが飛んでくる。
だって、美人からの膝枕はされたいだろ。
普通に考えて。
「まあ、そんな軽口が言えるのなら大丈夫……なわけないか。お姉ちゃんにして欲しいことある? 今なら何でも聞いてあげるよ」
「ない。でも、気遣ってくれて本当にありがとうな」
「まあ、お姉ちゃんだからね」
「そうか……心菜は僕が死ぬのを望んでないんだよな。心菜は僕が幸せになってほしいって思ってくれてたのに、僕はその真逆のことをしてた。こんなんじゃ怒られちゃうよな」
誰かを助けることを言い訳にして、ずっと僕は死のうとしていた。
心菜が僕が死ぬことを望んでいると思い込んで心菜が一番望んでいない行動をしていた。
僕は本当に救いようがない。
「そうだね。って言うのは助けられた私が言うような事じゃないんだけどね」
「まあ、これからしっかり前を向いて生きていくことが出来そうならこの手紙を見せてよかったよ」
「本当は部屋が汚すぎて無くしてただけじゃないのか?」
「流石にそれはないよ! こんなに大切な手紙を無くしたりはしないよ!?」
ちょっと茶化して場を和ませる。
本当に姉さんと乃彩には迷惑をかけてばかりだ。
今度しっかり埋め合わせをしないと。
「姉さん、乃彩。これから僕はしっかり前を向いて生きて行こうと思うよ」
「そうしなさい。心菜さんもそう望んでるから」
「私は先生としても従姉としても支えてあげるからね」
「だから、今度心菜のお墓参りに行くことにするよ」
それでしっかり心菜と話してけじめをつけたい。
「いいんじゃない? 私もついて行こうか?」
「ありがたい提案だけど、今回は一人で行くよ」
一人で会いに行きたい。
でも、この手紙のおかげで僕は再び前を向いて生きることが出来そうだ。
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