第17話

「確かによく調べられていると思う。でも、君はどうしてそこまでの情報を調べていたんだい?」

「……何をそんなに警戒しているのかわからないが、答えは単純だ。マップを確認したときに監視カメラの存在を見つけたからというだけ。何もおかしいことじゃないだろ」

「君はもしかして本当に――」

 正直ここまでしつこくされると、さすがに気分が悪い。須川が何を以て俺を疑っているのかはわからないが、実際考えていない訳じゃないことを鑑みれば、ここはお互いに現実を見るフェイズが来たと思うべきかもしれない。

「お前の考えている通りだ、と言ったらどうするんだ?」

「ダメだ! そんなことをしてはいけない!」

「フッ……」

 あまりにも正義感溢れるその姿に、千石が笑みをこぼすと、その不適切な笑みを志村が即座に咎める。

「ちょっと、何がおかしいのよ。あんたも、こいつが何をしようとしてるかわかっているんでしょ!」

「悪い、悪い。邪魔しちまったな」

「……」

 おまけ同士のやりとりは放置するとして、感情を露わにする須川の態度は、ただただ予想通りだった。

 実際のところ、俺自身殺人を肯定するつもりは毛頭ない。しかし、このあまりにも奇妙な状況から脱して、生き続ける可能性と向き合えないような奴は、それこそ死にながら生きることになる。

 忌むべき大人達から与えられた自由に満足するような人生なんて、真っ平ごめんだ。

「そうは言うが、俺達に残された選択肢は一つだけなんだよ。お前はここから出たいとは思わないのか?」

「僕は殺人を犯してまで……人間を辞めてまで生きたいとは思わない」

「それは綺麗事だろ。体育館であの男が言っていたように、ここでの殺人は罪にならない。そして、ここにいる人間は産廃同然のクズだ。そんな奴等がただ死を待つだけの生活に満足しているというなら、尚更誰が誰を殺そうと大した問題じゃない」

「……」

 これを聞いた彼等の反応次第では協力関係もあり得るかと思ったが、言葉を失い、呆然とする二人を見れば、叶わぬ望みだと理解できた。しかし、だからこそこの強みを見出せた。

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