第6話 悪臭問題

 異世界生活初めての仕事を終えた僕は今後どうするか考えた。

 まずは井戸を貸してくれる所を探さなければならない。

 僕の身体はちょっとした運動では汗をかかないが垢が出ない訳ではない。

 このまま身体を綺麗にしなければ、10日もすれば悪臭を放つようになるだろう。

 それは問題だ。


 そうならないためには何処かで、井戸を借りなければならない。


(宿屋の人にお金を払えば井戸を貸してもらえるだろうか? 宿屋の人からすれば泊まったほうが良いだろうな)


 僕の身体は1週間以内なら眠らなくても問題ない。

 宿は1週間に一度泊まれればいいが、最低限3日に一度は身体を清めたい。

 だからといって3日に一度宿に泊まるには泊まるのが安宿でも1週間に5日は働かないといけないだろう。

 それは無理だ、僕は怠け者だ1週間に5日も働けるような人間ではない。

 どうやら怠けた生活から脱するのはまだまだ先になりそうだ。

 僕は異世界に転生しても人はそう簡単に変われないということを学んだ。


 どうしたものかと考えていると、今更思い出したが狩人ギルドの建物には左右に塀で囲まれた場所がある、あそこは何だろう?

 悪臭問題には関係ないことだが、気になった僕は受付の栗鼠獣人族の男性に話しかけた。


「あの、ギルドの左右にある塀に囲まれた場所は何でしょうか?」

「あそこは主に狩人の訓練場として使われていて、他には、怪我をして来た狩人の治療所、ギルドの宿に泊まっている狩人の服を洗濯する場所、狩人が身体を拭き頭を洗う場所、など様々な用途を兼ねています」


 ギルドには宿があったようだ、入口方面からは見えなかった。

 井戸があるのは朗報だ、宿はギルドの宿に泊まればいいだろう。


「そこは狩人なら誰でも使えますか?」

「はい、怪我の治療、宿泊、井戸の使用、などはお金を取りますが基本誰でも使えます」

「分かりました、教えてくれてありがとうございます。」

「いえ、仕事ですから」


 早速身体を拭き頭を洗う場所、井戸に向かう。

 僕の服や身体は鼠駆除の仕事で罠を仕掛けるために割と埃っぽい場所に入ったため汚れていた。

 それと創造主様に創られた自分の身体がどうなっているのか確認したい気持ちもある。


 井戸は複数個あるようだ、男性用、女性用、洗濯用、と分かれており、身体を拭き頭を洗う場所と洗濯物を干す場所には布と木で出来た天幕がある。

 早速使用料として大銅貨1枚を払いお釣りの中銅貨1枚をもらったあと、男性用の井戸のある天幕に入った。


 中には全裸の男性が複数人。

 僕より一回り大きな狼獣人族が1人、その一回り大きな羆らしき熊獣人族が1人、更にその一回り大きなヴァラヌス監視者鱗甲人族が1人、他は僕を含め人間族が数人。

 “ヴァラヌス”という単語は、ヴァラヌス鱗甲人族の警戒心が強いという特性から来ている。

 彼は警備員ではない。


「ん? 見たことない顔だな新入りか?」


 羆らしき熊獣人族の男性が話しかけて来た。

 僕は気後れしながら答えた。


「は、はい、今日この街に来ました」

「そうか黒髪黒目なんて珍しいな、初めて見た。俺は2級狩人のヌースだ」

「5級狩人のオルカです」

「5級か、オルカはもしかしてギルドの井戸を使うのは初めてか」

「はい、初めてです」

「そうかじゃあ使い方を教えるから聞いてくれ。身体を拭く布と桶は左側の未使用と書いてある箱から取って、使い終わったら右側の使用済みと書いてある箱に入れるんだ。井戸水は使いすぎないように気をつけてくれ」

「分かりました」

「脱いだ服を入れる籠は、そこに重ねてある。脱いだ服を入れた籠を持って、洗濯用の井戸に行って使用料中銅貨1枚を払えば服を洗える。これで説明は終わりだ」

「教えてくれてありがとうございました」

「気にするな、ギルドでは後輩に教えるのは先輩の仕事だからな、分からないことは尋ねろ。オルカも後輩が出来たら教えてやれ」

「はい、そうします」


 僕は話しを話を聞き終わった後、井戸水で身体を拭くために服を脱ぎ、自分の身体を確認する。

 僕の身体は筋骨隆々ではないがかなりの筋肉がついていた。


 身体を拭き頭を洗った僕は、荷物の袋の中から新しい服を取り出して着る、使い終わった布と桶を使用済みの箱に入れ、脱いだ服の入った籠を持ち洗濯用の井戸に向かった。

――――――――――――――――――――

 洗濯用の井戸に着いた僕は使用料中銅貨1枚を払い、井戸水を使い汚れた服を洗った。

 干し竿がある天幕にも男性用と女性用があり、洗い終わった服を男性用の天幕にある干し竿にかける。

 すると、ギルド職員の制服を着た虎らしい猫獣人族の男性職員が声をかけてきた。


「干した服は明日中に取りに来てください」

「分かりました」


(忘れないようにしないとな)


 僕は忘れない様に頭の中で反復した後、狩人ギルドを後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る