9月23日 居酒屋

「いやー、あの生配信なかなか面白かったな!まさか勝手に2Pキャラが動き出すなんてなぁ!」

 仕事終わりのサラリーマンで賑わう居酒屋のボックス席で井出は笑っている。

 たかしの家での生配信から二日後、二人は打ち上げ会と次回の打ち合わせを兼ねて居酒屋に来ていた。

「オカルトとか全く信じてなかったけど、今回のは信じるしかないな!」

「ついに手のひらが回ったか」

「今回の件は流石に自分が体験したからな!他のことは正直知らん!」

 焼き鳥を食べながら二人で生配信を思い返す。

「それにしても途中から変なコメントたくさん入ってたな!『ソファの影に〜』とか怖かったわ!」

 井出がコメントに関して触れたので、それに合わせて田口は気になっていたことを話すことにした。

「そういえば、気になってたんだけど。『二階だよ』みたいなコメントあっただろ?」

「あったあった!あれがどうかしたのか?」

「おかしいんだよ。家に帰ってから見返したんだけど、俺、あの時は周りの家が映り込まないように気をつけてたから、あの家の全体は映してないんだ。それなのに二階があるのを知っていたみたいだった。」

「廊下を撮影した時に階段が映ってたんじゃないの?」

「いや、スマホのライトでは廊下の奥までは照らせてなかったし、玄関から見ると階段は廊下の突き当たりを曲がった先だったから見えるはずがない。」

「まあ、当てずっぽうでコメントしてみただけだろ!」

 井出はビールを飲みながら笑い飛ばす。彼の言う通り、二階建ての家は多いので適当に言っても当たる可能性は高いが、田口は続ける。

「それと、生配信にもいた『平仮名コメント』、お前気づいたか?」

「おお、沢山いたよな。どんどん増えてた。」

「あれ、全部『たかし』だったかもしれない。」

「はあ?」

 怪訝な顔をする井出に田口は推察を話す。

 今までの動画に平仮名コメントをしていたアカウント名の共通点。「nTks」と廃屋の表札に書かれていた名前の一致。そして、生配信以降、平仮名コメントが止まっていること。

「……えーっと?つまり、たかしが複アカでコメントしてたってこと?」

「……多分。いや、たかしって結局誰なんだよって言われたら分からないけど…」

「はー……一緒にゲームした以上は否定できないけど……ま、気にしてもしょうがない!『ガイアウォーズ2』は返せたし、コメントも止まった!俺的にはオッケーだ!」

「お前がそれでいいならいいんだけど。」

「寧ろアレだ!本物が混じってたってわけだ!ラッキーだったぜ!」

 井出の無敵っぷりに田口は思わず笑うと、思い出したかのように井出が話し出した

「そういえば、生配信最後のコメント、なんだったんだろうな?」

「アレか『普通に人が住んでる家だぞ?』みたいなやつな。一応、コメントしてくれた人にメッセージ送ってあるから返信待ちだ。」

「お、流石相棒、仕事が早い。」


 思い返しはほどほどにして、打ち合わせに入る。

「そうそう!次回のネタな!これでいくぞ!」

 そう言って見せてきたスマホの画面には湯呑みが写っている。

「また抹茶淹れるのか?」

「ちがわい!次の湯呑みは『絶対に溢しそうになる湯呑み』だ!」


 今回の生配信でオカルト好きに一気に注目されたが、井出のネタ曰く付き動画配信チャンネルという軸はブレないらしい。

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