六本木ホスト、治世666年の魔王の最愛になる
ななか
1 六本木ホスト、異世界の聖女♂になる
1 プロローグ
「せいぜい私を愉しませよ、人の子」
ぎしり、とラブホみたいな天蓋つきベッドが軋む。
「ちょ待って。逆だと思ってたんだよ。いや、逆も結構きついけどさあ?」
仕事柄、トーク力は並みより優れているはずが、追い込まれ過ぎて振るわない。
(口でだめなら、力じゃもっとだめだろ)
すべらかな黒いシーツの上を、あとじさる。
そのぶん目の前の男が身を乗り出してくる。
身長百七十八センチと、日本じゃ決して小さくない自分より、ひと回りでかい。百九十センチはあると思う。
銀刺繍入りの膝丈ジャケットに包まれた肩も胸板も逞しい。おまけに手も大きく、黒く塗られたつめが長かった。
組み敷かれたが最後、逃げられまい。
男は腰まである銀髪を揺らして、愉しげに笑う。
「怖がってみせるのもまた一興か」
白目と黒目の色が反転した、二次元じみた瞳に射竦められた。ごくりと唾を呑み込む。
(い……やいや。そーいう演技じゃなくてね。言葉通じてる? これ)
冷たく乾いた手に、髪を撫でられる。わざと毛先を外して白金にブリーチし、長めの前髪をくしゅくしゅ散らしたこだわりの髪を。
「帰る家はないのだろう? 人間のほうがよほど怖ろしいではないか」
愛おしげな仕草と裏腹に酷薄な台詞を吐く彼の名は、ニエーヴァという。
この異世界の魔王、だそうだ。
セックスがめちゃくちゃ好きらしい。
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