6、FPS、フードデリバリーを頼みながら
「メイ、俺フードデリバリー頼んでいい? 腹減っててさ」
「ガク、それやってる最中に届くフラグじゃん! いいよ! じゃあボクも頼もうっと。どっちが先に届くか競争しよ」
「おけ!」
俺たち二人がペアでプレイしているのは、多人数が同時に同じマップで活動して、チームを組んだ
ペアで遊べるのと、野良
ユーザーや企業が主催するイベントがあったりもして、イベントに向けて練習したりする配信は結構多い。
スポーツの部活みたいな、青春っぽい感じが味わえるし、ドラマが予期せず生まれたりもするから、配信向けなんだ。
6、FPS、フードデリバリーを頼みながら
マップは広々として、今回は高層ビルが並ぶ近未来都市って感じ。武器である銃や弾は現地調達なので、離れすぎないようにしながら俺たちは手分けして物資を漁った。
「ガク、スナイパーライフルあったよ」
「俺が
「ん」
自分は近距離用のピストルを装備しながら言えば、早速どこかに向けて撃っている。
撃破のログは名前からしてファンのものだ――『ガクメイてぇてぇ』って名前つけてるや。
「配信の設定が遅延なしだから、
遅延設定をすると、視聴者に映像が届くまでに時間差をつくれる。
配信者がオンラインゲームをすると『視聴しながらの付きまとい』とかができるから、それ対策に遅延設定をすることが多いんだ。
言ってる間に投げ物が落ちてきて自分のキャラアバターがダメージを受ける。
「狙われてるぅ」
――ガクのマイクからは、インターフォンの音が聞こえるけど?
「置いてって〜。あれ? なんか困ってる? 俺、見てくるわ」
「ガクー、そこで放置すると死ぬぅ……あっ、こっちも来たかも」
こっちは、頼んだ通り置いて行って配達完了にしてくれたみたいだ。
「こっちも取りに行きたい! 食べたい!」
物影にキャラアバターを隠さないと――操作するより先に銃で撃たれて、体力ゲージが削りきられる。
――……、
「ボクね、死んだぁ」
「俺もぉ」
倒した相手のキャラアバターが寄ってきて、お供物みたいにいらないアイテムを捨ててエモーションをしている。
配信のコメントを見ると、常連のファンだった。
『倒しちゃいました』
「やられたァ!」
笑って言えば、ワイワイとコメントが流れて同じマップにいたファンが寄ってきて――ファン同士でお祭りみたいにぴょんぴょんしたり撃ち合ったりしている。
撃破ログに『メイガクてぇてぇがガクメイてぇてぇを倒しました』なんて出ている。
これは――受け攻めを巡る争いっ? 面白いね!
「と、忘れてた。ごはん取ってくるねー」
配達されたファーストフードを取ってつまめば、ガクも食事を取っている気配がする。
「あんまり一般のプレイヤーに迷惑かけてもアレだし、次のマッチ行くかぁ」
ガクがそう言って、その試合から抜けていく。チャットアプリで遅延設定を提案しながら。
「そうだね、次行こうかな」
ゲームが続く。
だいたい最後は死んでいるけど。
「そろそろ終わるかぁ」
床にキャラアバターが倒れて、撃破された状態で言葉を交わす。
「そのうち勝ちたいね……」
「つ、次は勝てる」
「じゃ、もう一回やるぅ?」
「……そろそろ終わるかぁ」
のんびりとゲームを終えて配信終わりの挨拶をすると、ゲーム中にあまり見れなかったコメントのログをざっと眺める。
途中、少しコメントしてるファン同士が
「あんまり
そぉっと付け足して終われば、常連の視聴者たちは励ましてくれる感じのあったか~なコメントを残してくれた。
――俺のコミュニティは、雰囲気がいいなぁ。この人たちに喜んでもらえるように、もっと頑張ろ!
俺はほんわかしながらガクに『配信お疲れ様!』とメッセージを送って、その日の活動を終わった。
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