この恋が実るなら

夜月

第1話  好きな人は幼馴染

「おはよ、華」

「お、おはよう」

彼は私の好きな人で、幼馴染である。

「そういえば、華。新しい小説書くって言ってたけどどう?」

「うーん、調子はいい方だけどネタが思いつかない…」

これは本当のことで、まだ1ページしか書けていないのだ。

「ふーん。華にしては珍しいね。ネタが思いつかないなんて。」

「そーなんだよねー。どうしよう」

締め切りまで、後3週間。それまでに書き切れるかな?

「気分転換にどっか2人で行かね?」

涼夜の誘いに、驚いたもののすぐにOKした。

「どこ行くの?涼夜」

今更気づいたけど、これってデートじゃ…⁉︎

そんな期待に満ちた考えもすぐに砕け散った。

「ここは?」

「美羅っていう、俺のクラスメイトの家なんだけど」

美羅…?明らか女の子じゃん‼︎

彼女だったらどうしよう…

「お邪魔しまーす!」

「邪魔するなら帰れ」

その声を聞いて、「ん?」と思わず声が漏れた。

だって、美羅っていうその人は、男の子だったから。

「え、女の子じゃないの…?」

私の言葉を聞いて、美羅という子はムッとした顔で睨んできた。

逆に涼夜はプッと吹き出しちゃって。

「美羅って名前聞いただけでは女の子だと思うよな〜」

「男だけど?」

「あ、ごめんなさい…」

名前はただ、美羅くんのお母さんがアニメ好きで、そのキャラクターの名前だったらしい。

顔も整っているし、モテそう…これが国宝級イケメンというのか。と感心していると

「俺ちょっとトイレ。」

「え、ちょ」

涼夜がいなくなると、気まずいって‼︎

何分か経っても、なかなか涼夜は帰って来ず、ただコップに入っているジュースが減るだけだった。

「あのさ…」

口を開いたのは、まさかの美羅くんだった。

「ん?何?」

美羅くんは少し考えた後、また口を開いた。

「さっきは冷たくしてごめん。ちょっと過去を思い出して…」

「全然良いよ。『美羅』って名前素敵だと思うよ。」

「可愛いし」という言葉を飲み込んで反応を伺った。

「あ、ありがとう」

意外と素直だったので、びっくりしていると涼夜がやっと帰ってきた。

「どこ行ってたの⁉︎」

「だから、トイレだって」

ニヤニヤしながら言う涼夜に勘づく。

「ふーん。涼夜あとで説教ね。」

「なんでっ⁉︎」

あははーと笑う私に、涼夜は顔を青ざめていた。

一方、横で美羅くんは爆笑していて「笑うんだ」と口にすると美羅くんは

「そりゃ、笑うだろ」

と正論で返ってきた。

「で、何のために美羅くんの家に来たの?」

私が聞くと涼夜はビシッと固まった。

「い、や…期末試験の点が悪かったわけではなくて‥」

「へえー、点が悪かったんだ〜。それで?」

小さい頃から一緒にいた事を恨むんだな。

涼夜がウソをつくときは、馬鹿だから隠してる事を言っちゃうんだよね〜

ほんとバカ。

「二人に教えて、もらおうと…」

真正面から受ける圧に観念したのか私をここに連れてきた理由を話した。

「「無理」」

美羅くんと見事にシンクロした。

「言っとくけど、簡単に教えてもらえると思うなよ」

美羅くんが、涼夜を説教している間、私は自分の課題に取り掛かった。

それから数分後。

教えてもらえることになったらしく、涼夜は説教後だと言うのに、ニコニコで帰ってきた。

なんで私、コイツの事好きになっちゃったんだろ…バカみたい‥

そう思いながら、途中だった問題を解き始めた。


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