真夜中にお茶会を〜send a dirge〜
石井一軒
プロローグ
「オリビア姉さんはどうして動いてしまうんだろうねぇ。大人しく寝てておくれよ。」
ショート丈のテーラードジャケットにハイウェストのパンツ姿、オールバックにした黒色の長髪を低い位置で結んだ男は、墓から上半身だけ飛び出た自分の姉、オリビア・ラングリーの体を丁寧に全て掘り起こし、櫛で同じく黒い短い髪の毛を梳かしていた。この行為は彼にとって毎日と言って良いほどの習慣化された行動である。もしこの瞬間を誰かに見られたら墓荒らしとして捕まるだろう。だがここはもう寂れてしまった町の、誰も管理していない廃教会の裏にある墓地のためその心配はない。
男が丁寧に髪を梳かしている間にもオリビアは四肢をくねくねと動かしている。
棺桶はもう朽ち果てているが本当に死んでいるのか疑うくらいに死体は綺麗だ。もう死後数十年は経つと言うのに。
「さーて。今日も綺麗になったよ姉さん。今度は綺麗な洋服を持ってこようか。そのシスター服も飽きたでしょう。そうだなぁ。姉さんには青色が似合う。そうしよう。青色のドレスを買ってくるね。」
そう言って男はオリビアを抱き抱えると掘った墓穴に体を戻し、足の方から順に土を丁寧にかけていく。そして遂に土をかける部分が顔だけになった。
「もう起き上がったりしちゃダメだよ。みんなが驚いちゃうからね。それじゃあおやすみ。」
男は屈むとオリビアの額にキスを落とし、最後の土を顔にかけ完全に土の中に埋めた。男は額にかいた汗を手の甲で拭うと空を見上げる。空には見事な満月が輝いていた。
「このことは秘密だよ。バレたら僕は酷い罰を受けるかも。」
男は月に向かってシーっと口元に人差し指を当てた。
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