第5話 おしまいのサイレン

おしまいのサイレンが鳴ったのは正午だった。

わたしは、家で夫と過ごすことにしていた。


「これが例のサイレンか。」

と言い、夫はわたしの体を引き寄せ、横たえる。


このサイレンを、あのひとは誰と聞いているだろう。

あの光降る教室で、ふたりでいたころ。


今このひとに見せている何もかもを、彼には一度も見せなかった。

閉じた目から涙がこぼれてしまう。


夫はすこし身を離して、顔を覗き込んできた。

「大丈夫か?」

どこまでもやさしいひとだ。

「なるべく強くぎゅってして。」

「うん。」


最後のときに見ていた夢は、あのひとではなく、このひととの夢だった。


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おしまいのサイレンふたりでききながらあのひとのことをかんがえている

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