第5話 おしまいのサイレン
おしまいのサイレンが鳴ったのは正午だった。
わたしは、家で夫と過ごすことにしていた。
「これが例のサイレンか。」
と言い、夫はわたしの体を引き寄せ、横たえる。
このサイレンを、あのひとは誰と聞いているだろう。
あの光降る教室で、ふたりでいたころ。
今このひとに見せている何もかもを、彼には一度も見せなかった。
閉じた目から涙がこぼれてしまう。
夫はすこし身を離して、顔を覗き込んできた。
「大丈夫か?」
どこまでもやさしいひとだ。
「なるべく強くぎゅってして。」
「うん。」
最後のときに見ていた夢は、あのひとではなく、このひととの夢だった。
--------------------
おしまいのサイレンふたりでききながらあのひとのことをかんがえている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます