020 初めての自動販売機


 自動販売機は、池の中央の陸地に存在している。何となく光っていることは分かるものの、何が売っているかは確認できない。


 よく見れば、大きさは一般的な自動販売機よりも大きい気がする。それ以外だと、排出口もなんだか広いように思えた。これ以上は、実際に近くで確かめてみるしかない。

 

 僕はそう思いながら、虫のクリーチャーたちを体にまとわせる。念のための保険という感じだ。


 そうして池に近づくと、まずは何かいないかもう一度確かめる。けどその結果何も現れないので、靴などを脱いで体に取り込ませると、学生ズボンの裾を引き上げた。


 よし、行こう。十分安全は確認したはずだし、大丈夫なはずだ。


 不安はぬぐいきれないものの、僕はゆっくりと池に入っていく。冷たい水が、肌へと触れた。感覚は未だに人と変わらないことに安堵する。


 加えて一応足を何かで傷つけないように、なるべくすり足で進んでいく。


 最初は緊張で心臓がバクバクした気がしたけど、気がつけばあっという間に陸地に辿り着いてしまった。


 水の深さも、一番深いところで膝くらいだったのである。おそらく擬態クリーチャーは、元々スライム状態で薄く広がって潜伏していたのかもしれない。


 また虫のクリーチャーたちも、おとなしい。いや、池へと落ちないように、僕の体に強くしがみついている。


 そしてなにより、この池にいた擬態クリーチャーは、やはりあの一体だけだったのだろう。


 ここまでして襲ってこないなら、その可能性が高い。僕が同類扱いで襲われないとしても、虫のクリーチャーたちはそうではないからである。


 虫のクリーチャーたちは、そうした判断を下す上でも、役に立っていた。


「ふぅ」


 そうして軽く安堵して息を吐くと、靴などは帰り道でも脱ぐことになるので、このまま裸足で行くことにする。


 さて、この自動販売機には、いったい何が売っているのだろうか?


 僕は少々ワクワクしながらも、自動販売機に近づいて内容を確認する。もちろん周囲は、警戒したままだ。


 そして僕は、ようやく自動販売機のレパートリーを目にすることができた。その内容は、以下の通りである。



 ・500mlの水『5エン』(100)

 ・バー状のクッキー2本 『5エン』(100)

 ・おにぎり『5エン』(100)

 ・卓上塩『5エン』(100)

 ・リュックサック『100エン』(10)

 ・くだものナイフ『30エン』(30) 

 ・ライター『20エン』(30)

 ・縄3m『25エン』(20)

 ・ガムテープ『5エン』(50)

 ・メモ帳『5エン』(100)

 ・ボールペン『5エン』(100)

 ・ダンボール80サイズ『5エン』(30)

 ・タバコ1箱『5エン』(100)


 ・タオル『5エン』(100)

 ・タオルケット『10エン』(50)

 ・ポケットティッシュ3個『5エン』(100)

 ・男性下着セット『10エン』(50)

 ・女性下着セット『10エン』(50)

 ・ジャージセット『20エン』(25)

 ・ソーイングセット『5エン』(50)

 ・簡易救急セット『30エン』(20)

 ・生理用品『5エン』(100)

 ・簡易トイレ『20エン』(50)

 ・カミソリ『5エン』(30)

 ・歯ブラシセット『5エン』(100)

 ・コンドーム1箱『5エン』(100)



 合計二十六種類の商品が、電子モニターに映されていた。この画面は陸地に上がってから急に見えるようになったので、遠くからは見えないようにされていたのだろう。


 これはこの陸地に上がってからのお楽しみ。ということだったのだろうか?


 また白い自動販売機は、通常の1.5倍くらいの大きさだ。加えて排出口は様々な商品を売っている関係からか、広くて大きい。


 そして硬貨投入口には、ドアにもあったタッチパネルが存在している。おそらくそこへスマートウォッチをタッチさせることで、購入できるのだろう。


 何も持っていない状態でこの場所に連れてこられたので、欲しい物が多い。


 最初の部屋から出るのに10エン使うことから、多く持っていても本来は90エンになってしまう。


 その関係から、他のスマートウォッチからエンを入手しなければ、リュックサックは買えないことになる。


 この状況でリュックサックは、とても重要な物になるだろう。実際僕も欲しい。


 僕は体に物を取り込むことができるけど、それでも破れかけのビニール袋を使っていた。


 けど破れかけのビニール袋では、当然物を入れるには不安がある。いつ破れて物が落ちてしまうか、分からないからだ。


 それに他にも物を買うなら、どちらにしてもリュックサックは必須だろう。体に取り込ませられる量には、おそらく限界がある。


 またエンの横にある数字は、販売個数だろうか? これについては、実際に試してみれば分かるはずだろう。


 なのでとりあえず僕は、この中で一番欲しいリュックサックをまずは購入してみる。


 そう思いリュックサックのパネルを押すと、続けてスマートウォッチを購入用のパネルに押し付けた。


 すると『ピピッ』という音がするのと同時に、何かが排出口へと落ちる音が聞こえたのである。


 ちなみにパネルには、僕の所持金は表示されなかった。これは他人に見られないための配慮かもしれない。


 自動販売機には、そうした残りの所持金を表示する機能があった気がしたので、僕は安心した。


 またそれと同時にリュックサックの数字が、10から9へと変化している。やはりこの数字は、販売個数だったようだ。


 手に入る数が限られているのであれば、また状況は変わってくる。これだとますます、自動販売機の争奪戦になるだろう。


 大勢に行き渡らせることが不可能な以上、一定人数で独占することになってしまう気がする。


 そんなことを思いながら、僕は排出口を開く。中には圧縮されたリュックサックが、透明な袋に入った状態で落ちていた。


 それを拾い袋を開けて広げてみると、黒いシンプルなリュックサックということが判明する。ただ少しチープであり、安物感がすごい。


 正直100エンにしては、微妙なクオリティかもしれない。けど現状貴重な収納アイテムであることには、変わりないだろう。一応大きいし、たくさん入るとは思われる。


 それとスマートウォッチを確認すると、所持金も480エンから380エンになっていた。


 なんだか急に所持金が心もとなくなった感じがするけど、販売個数が決まっている以上、買える時に買っておこう。


 ちなみにこれが個数だと判明して思ったことは、自動販売機の大きさに対して、明らかに容量を超えて商品が売られているということだった。


 まあ、異能とかクリーチャーとかいるし、その部分は今更気にしても仕方がないか。


 細かいことは気にせずに、僕はそう思うことにした。


 そうして僕は次に、自動販売機の商品と現在の所持金を考えながら、結果として以下のものを購入する。



 ・500mlの水

 ・バー状のクッキー2本

 ・おにぎり×2

 ・卓上塩

 ・くだものナイフ

 ・ライター

 ・縄3m

 ・ガムテープ

 ・メモ帳 

 ・ボールペン

 

 ・タオル

 ・タオルケット

 ・ポケットティッシュ3個

 ・男性下着セット×2

 ・ジャージセット

 ・ソーイングセット

 ・簡易救急セット

 ・簡易トイレ

 ・歯ブラシセット


 合計235エン



 かなり購入してしまった。しかし悔いは無い。これで所持金は、残り145エンだ。


 購入した物は、リュックサックの中に入れておく。腰に下げていたビニール袋の中身も同様だ。

 

 ただくだものナイフだけは、腰に差しておく。くだものナイフでも、刃物は刃物だ。急に必要になる時がくるかもしれない。


 またくだものナイフにはカバーも付いているので、自身に刺さることはなく安全だった。


 ちなみにスマートウォッチは、引き続き体の中に取り込ませておく。体の中は基本的に、貴重品を入れておくことにした感じだ。


 そうしてリュックサックを背負うと、周囲に誰もいないことを確認しつつ、僕は再び池を渡っていくのだった。

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