第2話

 コーヒー。

 前世の記憶を頼りに作ってみたが……案外上手く作れるものなんだな。


 主人公から逃げて50年。

 もうあいつは……あいつらは、エルフを除いてヨボヨボになっている頃だろうな。

 なんて考えつつ、俺は木製の椅子に座りながら自分で言うのもなんだが、優雅にコーヒーを飲んでいた。

 

 家もこじんまりとしたものだが……1人で暮らす分には全く問題は無かった。

 風呂だって付けてあるからな。なんなら、普通に快適だったりする。

 当たり前だが、お湯が通っている訳も無いから、風呂が使える理由は俺の魔術によるものだ。

 

 そして何より、今までは俺の持つ圧倒的な力を振るって敵……いや、敵ですらなかったな。……その辺に転がる生きる何かを壊したりするだけだったが……ここで暮らしている俺は狩りだってしていたりする。意味のある……俺が生きる為の殺しだ。昔の俺ならば考えられなかったことだ。

 これもまた結構楽しかった。

 ……まぁ、正確に言うと、俺は何も食べなくたって別に生きられはするから、生きるための殺しというのは違うのかもだが……普通に空腹になったりはするし、あながち間違いという訳でもないはずだ。

 少なくとも、意味が無い殺しでないことだけは確かだ。


 気分が良かった俺は、魔術で向こうの……主人公達が住んでいたであろう場所を覗き見でもしてやろうかな? という気分に一瞬なったが、直ぐに首を横に振ってそれはやめた。

 逆探知でもされたら堪らない。

 いや、本来なら俺が使うレベルの魔術を逆探知することなんて有り得ないことなんだが……主人公補正とやらで有り得ない事が有り得ることになりうる可能性があるからな。

 余計なことをしてこの暮らしを壊させる訳にはいかん。


 仲間を復活させたら、狩りの楽しさを教えてやるのもいいかもしれないな。


「さて、そろそろ今日も狩りに​──」


 コーヒーを飲み終えた俺は、傍においてあった自作の弓に手を伸ばし……始めていたところで、家の扉がノックされた。

 50年ここで暮らしていて、初めてのことだ。


 主人公が来たか……? と一瞬思ったが、それは無いと断言出来る。

 主要キャラ達の魔力が近づいてきて、俺が気が付かない訳が無いからだ。

 つまり、全く関係の無い人物……のはずだが、それはそれで一体こんな辺境の地に何の用だ?

 一応、簡易的だが柵だって立ててあるし、この辺りは最早俺の土地となっているはずなんだがな。

 50年もここに家を建てて住んでても何も言われなかったんだし、この辺りの土地を所有してた人物なんて居ないだろうしさ。

 そもそも、魔物とかも元は結構存在するところだったし、こんなところの土地を主張されたって……なぁ? って感じだ。


 ま、取り敢えず出てみるか。

 

「はいはい、どちら様でしょうか?」


 敬語なんてものを使うのも今世では初めてかもな。

 そんなことを思いつつ、そう言いながら扉を開けると……50人くらいの結構な数の人間や獣人がそこには居た。

 その中の1人が代表するように扉をノックしてきていたみたいで、その人物……40代くらいだろうか? が今俺の目の前に居た。


 こんな辺境の地を訪ねてきたにしては随分と人数が多いな。

 とはいえ、俺を討伐しに来た……者たちで無いことだけは確かだ。

 そもそも、俺が接近に気が付かなかった時点で、こいつらには天地がひっくり返ろうと俺の命を脅かすことは出来ないことの証明だからな。

 それに、俺を討伐しに来たのなら、いくら歳をとっているとはいえ、あの主人公の性格だ。一緒に居ない方がおかしい。


「突然の訪問申し訳ありません。実は​──」


 そして話を聞いてみたところ、要約すると……まず、この辺りの魔物が極端に減ったらしい。

 そして、それを何年か前に冒険者を雇い確認済みらしい。その際に1軒の家が建ってるのと、柵が建てられているのも一緒に確認したらしい。

 それでこいつらは、先に場所を取っている俺に許可を取って、出来れば俺が建てた家を中心に村を開拓していきたい、と。


「ふむ」


「ど、どうでしょうか?」


 まず、冒険者が確認に来てたことを俺は全く知らなかった。

 ……理由は単純で、その冒険者も今目の前にいる奴らと同じく何があろうと俺の命を脅かすことが出来ない奴だったんだろう。

 とはいえ、俺の情報が伝えられていたという可能性を考えると、もっと弱い生物にも気を配った方が……いや、やっぱりいいや。

 よく考えたら、主要キャラや俺を殺せるかもしれない生物が近づいてきてたら、絶対に気がつくし、逃げることくらいはできる。

 このままで問題ないな。

 よし、それじゃあ、さっさと目の前で俺が許可を出してくれるかを不安そうにしている者達に返事をしてやるか。


「も、もちろん、タダでとは言いません。村が形になった頃には、税を支払うことをお約束致します。この辺りが貴方様の魔術のおかげで魔物が発生しなくなっていることには冒険者の方がもたらしてくれた情報により、分かっていますから」


 ん、別にメリットが無いから渋ってたわけではないんだが……悪くないかもな。

 後2950年。ぶっちゃけ途中で絶対飽きが来ると思ってたし、村が開拓されていく様を見られるのなら……良い暇つぶしにはなるだろう。

 税が貰えるとなれば、断る理由は無いな。


「それでしたら、もちろん構いませんよ。どうぞ好きになさってください」


「あ、ありがとうございます!」


 頭を下げてくる一同。

 そして、すぐ様テントを立てたりと行動に移し始めていた。

 

 ま、頑張ってくれ。

 俺は狩りに行ってくるからさ。




​───────​───────​───────

あとがき。

少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたのなら、モチベーションの為にも星やハートをお願いします。


 18時頃にもう1話更新します。

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