7話 出会い 〜動揺〜





「あやー!」


まいが身を乗り出して、顔を近づけてきた。


「さっきの人、めっっっちゃくちゃかっこよくなかった!?

なにあの雰囲気!ズルくない?」



思わず肩をすくめながらも、あやの胸の奥が一瞬ギクリと跳ねる。



「……え、うん……そう……だったかな?」



できるだけ平静を装って答えたけれど、声がわずかに掠れている。



まいはあやの横顔をじーっと見て、にやりと笑った。



「うわー、あや、顔赤い。バレバレ~」


「ちょっ……ちがっ……!赤くなんか……!」



慌てて頬を隠すあやの指先は、まださっき触れたハンカチの感触を覚えていた。


まいはなおも畳みかけるように、


「だってさ、目、めちゃくちゃ優しかったじゃん?

でも、ちょっと鋭さもあって……なんか大人の余裕っていうか……あや、ああいう人、タイプでしょ?」



その言葉に、心のどこかがびくんと反応する。



「……別に、そういうんじゃないし……

ただ、ちゃんとしてたなって……それだけ」



小さく呟いたその言い訳が、自分でも苦しいと分かっていて、あやはうつむいた。


まいはそんなあやの反応に、さらにニヤニヤしながら、


「ふふ~ん、これは始まったな~、春~って感じ?」


「ちがうってばっ……!」



でも――

自分の指先に残る、あのハンカチを渡された時の体温。

あの、静かな目線。

思い出すたびに、胸の奥がじんわりと熱を帯びていく。



“ちがう”と言いながらも、あやの身体はちゃんと、それを“感じてしまった”のだった。


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