第10話 使用人と……友達?
「うーーん、これとこれどっちが良いかなー?」
「………まだなのか?」
「もうちょっとまってねー」
僕が今、何をしているのかと言うと……
服をどれにするかで悩んでます。
というのも、今日はお客さんが来るらしく、しっかりとした服装になりなさいと頼まれてしまったからなのだー。
まあ、お客さんといっても、使用人を募集したらしくて、その使用人との対面になるということらしい。
だから、おしゃれな服を着て合わないといけないのだ。
さっきから悩んでいるのだが…これが、中々決まらない。
「……早くしろやー!!」
「うわぁぁぁああああああ!!!」
カムイが勢いよく僕の部屋のドアを開けた。
めっちゃシャーーーって鳴きながら睨んできた。
「仕方ないじゃん!貴族の服ってどんなのが良いのか分からないんだから!!」
「…これとこれで良いだろ」
「ええー…そんな適当に選んで良いのー??」
「良いだろ…相手は使用人だぞ?」
「いやいや、第一印象が大事でしょ?!」
「はぁ…どうでも良い」
「そんなー……」
渋々、カムイが選んだ服を着た。
「おお!来たかゼオ!」
「あー、うん…あのさ、今日使用人が来るんだよね?」
「そうだが?」
「何でこんなにピッチリしないといけないのさ」
「実は、使用人なのだが…元々王国の方で働いていた方なのだ、その方が何でもここの使用人になるために辞めたと聞いてね」
「はぁ?!」
(そのためだけに辞めたの?!やばー…)
ちょっと引いてしまった。
「お!いらっしゃったぞ!」
「え?」
ガチャッ…
玄関を開けた父さん。その先には、
「雇っていただき感謝いたします。リンクス様」
「ようこそお越しくださいました。さぁ…どうぞお上がりください。」
父さんが入ってくるように促した。
やって来たその人は、金色の髪色をポニーテールにしており、耳がピン!と伸びて尖っていて、綺麗なエメラルドグリーンの瞳の女性だった。
(綺麗な人だなー)
そんな風に思いながら、ついていった。
「さて、仕事内容をマリアから聞いてもらえるかな…?」
「かしこまりました」
父さんはそれだけ言うと去って行った。
女性と僕とマリアさんの3人だけになった。
「では、マリアと申します。よろしくお願いします」
「レガーナ・ルラシルと申します。以後お見知り置きを」
ぺこりと頭を下げたルラシルさん。とても礼儀正しく、きっちりしていた。
「あ、僕はゼオ・リンクスです。よろしくお願いします」
僕もぺこりと頭を下げると…
「頭を下げるのですね…」
「え?」
何故か頭を下げただけで驚かれた。
「いえ、前のところでは偉そうなガキだったもので……」
「あー……貴族あるあるでしたっけ?まあ、そう言う人もいますよねー」
「……貴方は本当に5歳なのですか?」
「え?うん、5歳だけれど…」
「……そうですか」
意味深な質問をされて、どう答えれば良いのか分からず、普通に答えたら、興味を失われた。
(なんか、仲良くなれそうにないかも…)
ちょっとしょんぼりしながら、自分の部屋に戻った。
「さて、どうしようかなー……」
僕は、服をラフな服に変えて、ベットに寝転がった。実は、未来視が少し発動していて、その未来視で見たものは、マリアさんとルラシルさんの2人が危険な目に遭うことだった。
「何とか対策を考えないとなー」
そんな風に思いながら眠りについた。
「よし……やりますか」
僕は1人で魔法の練習を始めた。
マリアさんとルラシルさんの2人は使用人の仕事で忙しそうだった。
そして、カムイはと言うと……
「……あの、ついてこなくても大丈夫なのですが?」
「ニャーーー!!」
マリアさんの後を追ってもらっている。僕が2人に付き纏ったら気持ち悪いだろうから……
「何かあったらカムイが教えてくれるからねー、でも、心配だなー」
危険な目に遭うという断片的なところしか分からなかった。どこで何されるのかは分からなかった。
(気にしておかないと……)
そう思いながら、魔法の練習を続けた。
「では、行きましょうか」
「はい」
マリアさんとルラシルさんの2人が屋敷を出て行った。
買い出しに行くらしい…
(何もなかったら良いんだけれど……)
心配になった。カムイについて行ってもらっているが……
すると……
(ゼオ!!)
(な、何?!どうしたの?!)
(連れ去られた!!)
「へ?」
カムイの慌ただしさに不安になっていたら、誘拐されたと知らされた。
「嘘だろ?!」
僕は急いで自分の部屋に入ると荷物を持って助けに行こうとした。すると…
(ゼオは来るな!)
(な、何でだよ!!)
(お前を誘き出すためかもしれない…もしくは、お前の親父さんを……だから、来るな!)
(なら、どうやって助けるのさ!)
(俺が行く)
「はぁ?」
僕は大きな声で叫んでしまった。
(何言ってんの?!お前こそ、戦えるのかよ!僕とかなり離れているのに!)
カムイの能力は契約者である僕と距離が近いと威力が上がるようになっている。これは、『絆』や『縁』などが関係してくる。僕とカムイは絆で繋がっているから、その距離が離れるとカムイは力を発揮できないのだ。
(大丈夫だ、俺の言うとおりにしてくれたら良い)
(でも……)
(頼む)
カムイが珍しく頼んできた。人に何かを頼むのが嫌いなあいつが…
(分かった。どうすれば良いの?)
(目を瞑って魔力を感じろ)
僕は急いで自分の部屋に入って、ベットに横になると、目を瞑って魔力を感じようとした。
すると、体の中から線みたいな細い何かが流れている感覚がして、ゾクゾクした。
(そして、俺を想像しろ)
(カムイを想像…)
カムイを想像したら、怒っている姿か、気持ちよさそうに寝ている姿が思い浮かんだ。
(何で、お前は俺を想像するとそんなのが思い浮かぶんだよ)
(え!カムイにも見えるの?!)
(当たり前だ……ったく)
呆れたような声を出しながら、続きを教えてくれた。
(想像したら、魔力をそいつに流すようにしてくれ、そうすれば魔力が俺の方に届く)
(了解!)
魔力を流すように…そう意識しながら、行った。
(お!来た来た!)
ちょっと嬉しそうなカムイの声が聞こえて来た。
(いけそう?)
(ああ…あとは任せろ)
それだけ言うと、カムイが魔力を使おうとしていた。
(グルルルル……ガァァァァアアアアア!!)
(頼んだよ?!)
(ああ、任せろ)
カムイとの連絡が途絶えた。
◾️マリア視点
「困りましたね…」
「……ですね」
買い物をしに行く途中で突然襲われ、気がつくとどこかのアジトみたいなところの牢屋に入れられていた。
どれだけ魔法を放ってもびくともしなかった。
「初日からこんなこと……申し訳ございません。」
「いえ、私の方こそ不注意でした。申し訳ございません。」
2人揃って謝った。
「どうしましょうか……」
「………助けなど来ませんからねー」
「ですよねー」
2人揃ってため息を吐いた。
ここから出る方法が分からず、ましてや、このアジトっぽいところがどこにあるのかも分からない。たとえ出られたとしても居場所が分からなければ、屋敷に帰ることさえ出来ないのだ。
すると……
「お目覚めかな?」
「「!!!」」
知らない男が入って来た。
「ふっふっふっ……とても体をしている!クックックッ…君たちを売り渡す前に味見だけでもしようか!」
男がゆっくりとこっちに来た。
(この男!何するつもり?!)
近くまで来たその男の顔は下卑た顔をしていた。まるで私たちの体を舐め回しているような目つきで。
「ここはどこですか?貴方は…」
「この状況で質問するとは……クックックッエルフってものは面白いな!」
「質問に答えなさい!」
「ふん!お前達が知る必要はねぇよ!お前達は商品だからな!…さて、ちょっと味見するかー」
そう言って男が牢屋の扉を開けた。
その瞬間だった。
「はぁぁぁぁぁあああああ!!!」
「ぐはっ!!」
男が吹き飛ばされた。ルラシルさんが魔法で吹き飛ばしたのだ。
「行きますよ?!」
「はい!」
私たちは急いで牢屋を抜け出した。
走って走って狭い通路も通って、他の仲間に遭わないように……
「多いですね」
「そうですね」
上から下を覗くと多くの人たちがいた。多分、酒場で、その下が人身売買を行なっている場所なんだと分かった。
「出られそうにないわね」
「え?」
「ほら、あそこの番人」
ルラシルさんが見ている方向を見ると、入り口付近に大きな男がいた。たくさん武装していて、武器も強そうなものだった。
「あの番人を倒さないとですか…」
「そうね…」
作戦を考えたが、良い方法は思いつかなかった。
「とりあえず、周りを倒して、道を作るしかないわね」
「……分かりました。」
戦闘経験はきっとルラシルさんの方が上だ。だから、彼女の言うことに従った方がいいと判断した。
「行きますよ?」
「はい」
「ウィンド・クロス!!」
「ハイス・バウンド!!」
ぶわぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!
風と岩が次々と下の階の人たちに襲いかかった。
多くの人が吹き飛んでいった。
「何だ?!……貴様ら!」
下に降り立つと、男達が驚いたあと、私たちの仕業だと気づいた瞬間、怒りを表した。
「ここから出させてもらいます」
「ふん!商品如きが勝てると思ったら大間違いだ!」
指示を出した張本人だろうか、店主らしいこの男は威勢よくそう言ってきた。
番人と数人の大男達が現れた。
「強そうですね…」
「何とかして生きて帰りましょう」
真剣な目でそう言ったルラシルさん。
私も気合いを入れ直した。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ……くっ!」
数人の大男達を何とか動けなくしたが、番人と店主が強かった。
私たちの魔力ももう底をつきそうだった。
「あと、どれくらいの魔力でしょうか?」
「…出せて1、2技ぐらいです。」
「なるほど……私も同じぐらいです、まずいですね……」
相手があまりにも悪すぎた。あの番人を魔法防御のアイテムを所持していた。
そのおかげで私たちの魔法の攻撃が効かなかった。
「諦めなさい!」
「「嫌です!」」
2人揃ってそう言うと、魔法を唱えた。
「アイシクル・バレット!!」
「フローズン・ラン!!」
氷の技で足を固定すれば逃げれる、そう考えたが……
「あまいわ!!」
氷の技を避けられてしまった。それと同時に私たちの魔力がなくなった。
「ここまでですかね……」
「そう…ですね」
ルラシルさんが前に出ると、
「私が目的なのでしょう?この体は明け渡しましょう。その代わり、この子は逃がしてください」
「なっ!!何言ってるんですか?!」
私は反射的に怒ってしまった。
「私よりも貴方の方が、ゼオ様の信頼があります。だから、貴方が彼のそばにいるべきなのです!私はまだ、話もまともに出来ていませんから…」
「ですが!!」
反論しようと思ったが、彼女の目は覚悟を決めていた。
「……いいだろう」
店主は私を外に出そうとした。
「なんて、言うと思ったか?」
「え?」
ドンッ!!
「!!!」
突然、店主が私を地面に思いっきり叩きつけて来た。
「何を!!」
「この女は俺の好みなんだーだから、俺がもらう」
「なっ!!話とは違うだろ!!その子は返すって!!」
「がはははは!!そんなこと言ったかな?」
「貴様!!」
ルラシルさんが襲い掛かろうとした。だが…
「がはっ!!」
番人に吹っ飛ばされていた。
「ああ…安心しろ、この子が終わったら次はお前だ!商品になる前に堪能してやる!」
店主はそう言うと、私の方に向き直した。
「さて、楽しませてもらうよ?メイドちゃーーーん!!」
「いやっ……!」
伸びてくる手が私の服に触れた。そして、
ビリビリビリビリ……
「おおおおお!!」
メイド服を破かれ、私の肌が見えてしまった。
(い、いや……やだ……)
涙がポロポロと溢れて来た。
「泣いている顔も可愛いなー!君の体をめちゃくちゃにしたら、どんな喘ぎ声を出してくれるのかな?グフフフ……」
下卑た笑い声で私の肌に触れようとして来た。
「いや〜〜〜!!」
必死に抵抗しようとしたが、力が強くて、抵抗できなかった。
(このまま……そんなの……)
その時、ゼオ様の顔が思い浮かんだ。
(助けて……ゼオ様)
そう思ったその時だった。
ドゴゴゴゴゴゴ……ドガッシャーーン!!!
「なっ……!!」
突然扉が吹き飛ばされ、何かが姿を現した。それは……白い狼だった。
とても大きくて、凛々しい姿だった。
「何だこいつ!!」
店主がすぐさま戦闘体制になった瞬間だった…
「死ね」
ドンッ!!
「がはっ!!」
店主が狼の一撃を喰らい、店の壁に激突した。そのまま、意識を失って倒れた。
狼はゆっくり私の方に来ると…
「リワインド・タイム」
すると、私の服がみるみるうちに、元に戻った。
「あ、ありがとうございます」
私が感謝を述べると…
「その感謝は、ゼオに言え」
「え!」
突然、狼の口から聞き覚えのある名前が聞こえた。
「ゼオ様を……知っているのですか?」
「……何を言っている、お前と私は会っているだろう…屋敷の方で」
「え?会っている?……お会いしましたっけ?」
「はぁ……カムイだ、私は」
「!!!」
その名前でこの狼が屋敷にいる白い猫だと分かった。
「…ど、どうしてここに…」
「ゼオから助けろって命令が来た。だから、来た。」
「!!!」
その言葉で私は心が温かくなった。
「って、話してる場合ではないな」
カムイが前にいる番人を睨んだ。
「そのエルフも返してもらおう」
「くっ……!」
実力が分かっているのか、カムイに攻撃などしなかった。
カムイはそのまま歩いて行き、ルラシルさんを背に乗せると…
「ほれ、帰るぞ?」
「はい!」
カムイの背に乗って、アジトを抜け出した。
「急いでいるようですが、何かあるのですか?」
ルラシルさんがそう聞くと……
「ゼオの魔力で私はここに来た。あまり私がこの姿で居続けると、ゼオの命が危ない。」
「「!!!」」
その言葉に私たちは驚いた。
「だから、急いでいる……」
ゼオ様の魔力は私より少ない。だから…
(ゼオ様!無事でいて……)
そう心の中で願った。
※あとがき
なんか、使用人の2人が誘拐されたんだけれど……
まあ、2人とも可愛いし、綺麗だから分かるけれど……
ってか、早く帰ってこないかなー……
ぼ、僕の魔力がそろそろやばいんだ……けれど
次回、社交界初参加
お楽しみにー
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