第7話 記憶にございません

士郎が真紀ワタシとエッチしないのは外で美紀としてるからなの!?

美紀としてても真紀ワタシとだってできないわけじゃないでしょうに。

正当な理由もなく性交渉を拒むことは十分な離婚理由になるんだからね。

士郎は美紀と真紀ワタシを抱かないみたいな契約でもしてるのかしら。


「この後出かけるけど、19時ぐらいには戻れると思うから。」


本当に美紀に会いに行くのね。

16時に会って19時に帰ってくるってことは二時間休憩コースなのかしら。

淡白なのね、ってそんな問題じゃないわ。

後をつけて現場に乗り込んだ方がいいのかしら。


「お仕事?日曜なのに大変ね。」


素知らぬ顔で不自然にならない程度に聞いてみる。


「仕事…と言えばそうかな。ちょっと相談受けてて。」


「…ふーん、そうなの。夕飯は何がいい?」


「そうだね…久しぶりに外で食べようか。お義父さん亡くなってから、一回も外食してなかったよね。どうかな。」


美紀とやった後に真紀ワタシと食事?

てっきり食事は済ませてくるからいらない、とでも言うかと思ったから意外だったわ。

どういうことかしら。

冷静に思い返してみても日曜のこんな時間に士郎が出かけることはなかったと思うのよね。

だとすると、本当に仕事関係の相談をされている?

でも、相手は美紀みたいだし、「いつもの場所」っていうのがひっかかりまくりよね。

通知を見ていなければ特に何の疑問も持たずに士郎の誘いに乗ったことだろう。


「僕のところの看護師さんたちに人気の美味しい魚料理を出すお店なんてどう。秋になって脂ものってきているだろうし、気に入ってくれると思うんだけど。」


迷って返答せずにいると士郎がさらに具体的に提案してくる。

そうね、こんな気持ちで調理してたら美味しくないもの作っちゃいそうだし、せめて美味しいものでも食べて気分だけでも紛らせましょ。


「いいわ。何処に何時に行けばいいの?」


「タクシーで戻ってくるからそのまま出かけるようにしようか。近くまで来たら連絡するから19時目途で準備しておいて。」


士郎は本当にこういうところはそつがないのよね。

真紀ワタシを無下にすることなんてないし、大事にしてくれているのが十分伝わってくるわ。


この後、悪びれる様子もなく準備して出かける士郎を見送ってから改めて考えてみる。

もちろん士郎と美紀の関係のことだ。

士郎より以前に真紀ワタシに言い寄ってきた男性に美紀がちょっかいを出さなかったことは一度もない。これは間違いない。

事あるごとというか、何か始まる前には悉く美紀のいいようにされていったオトコたち。

いくら同じ容姿だからって、そんなに簡単に籠絡されてんじゃないわよ。まったく。

でも、美紀ってもしかしてアソコの具合がとんでもなく良かったりするのかしら。中にはミミズ千匹とか数の子天井なんてのがあったりするって聞いたことあるし。そうだとすると双子なんだから真紀ワタシにもその可能性が無きにしも非ずよね。未使用だから使用感を聞くこともできないけど、ってそんなことはどうでもよくないけど今考えることじゃないわ。

例外なく美紀が真紀ワタシといい関係になりそうな人を邪魔してたのに、士郎には何もせずに、少なくとも真紀ワタシの知る限りにおいては誘惑もせずに、交際が続けられて結婚するまでに至ったのよね。

でも、士郎は最初から一貫して真紀ワタシのカラダを求めてはくれない。気分良くはさせてくれるけど、性的な意味で気持ちよくさせてくれることはないの。

だとすると、やっぱり士郎も実はちょっかいをかけられていたって考えた方が自然ではあるのよ。

でも、そうなると何で士郎が真紀ワタシとそのまま結婚したのかが意味不明なのよね。

美紀と士郎が男と女の関係で、真紀ワタシを女として惨めなことになるように結託したなんてとんでもないことを考えはしたけど、本当にそこまでするかしらってのが正直なところなのよね。

別に真紀ワタシが病院を継ぐことが決まっているわけでもないし、そもそもうちの病院にそこまで資産があるわけじゃないから、真紀ワタシから奪えるものなんて高が知れてるんだもの。

病院が目当てなら普通に美紀と士郎が結婚して早々と後継ぎ産んだわよアピールすればいいわけだし。

わざわざ真紀ワタシと士郎をくっつける意味が分かんないわよ。

そうするとただの嫌がらせとしてしか意味がなくなってくるんだけど。そうなると真紀ワタシはどんだけ美紀に恨み買ってるのよってことにならないかしら。


でも真紀ワタシ、政治家の決まり文句じゃないけど全く身に覚えがないのよね。

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