誰か、このラブコメを買取してくれませんか?

うちよう

誰か、この青春ラブコメを買取してくれませんか?

プロローグ:結論、金。結局、金。

 青空を見上げていると、ふと想い出す。

 遠い過去のようで、実は一ヶ月も経っていないことに驚きを隠さずにはいられない。


 俺――――――遊馬悠真あすまゆうまは恋をしていた。

 ちなみに、初恋だ。

 でも、その甘酸っぱい初恋も桜舞う卒業の季節と共に見事に散った。

 完全に、完璧に、砕け散った。

 本来であれば初恋ということも相まって、しばらく引きずってしまうところだろうけど、俺は違った。

 それもそのはず、断られた理由が「普通に経済力なさそうだから無理」だったからだ。

 そう、最初から分かっていた。

 趣味や遊び、そして恋愛……。

 生活を豊かにするにはどうしたらいいか。

 結論――――――金。

 そう、結局世の中金を持っているヤツが勝つように回っているのだ。

 だから俺は大敗した。金を持っていないからね。

 ただ金を持ってないだけならいい。

 我が家には、多額の借金があるのだ。

 昨年の一二月に会社が倒産し、その負債を支払わなければならなくなってしまったのである。

 両親から聞いた話によれば、どうやら並大抵の給料で精算できるような額ではないとのことらしい。

 金額を伝えないのは、きっと両親なりの気遣いなのだろう。

 だから、俺も詳しいことは聞かないようにしている。

 とりあえず、俺は自給自足で自身の生活の安定。両親は負債を支払うために出稼ぎで話は纏まっている。

 今頃、マグロ漁船に乗って海の上だろうな……。

 とまあ、話が大分それてしまったけど、つまるところ金がない上に多額の借金を抱えてる人とは付き合えませんというわけだ。

 そりゃそうだよね。もし、それでも大丈夫ですと了承してくれる奇特な方がいらっしゃるのならぜひお会いしてみたいものだ。

 にしても、最初から分かっていた結果を盲目にしてしまう恋愛という感情は非常に厄介だ。

 今度こそは、間違えないように、期待しないように、恋しないようにしよう。

 裏切られるのは、最初から分かっているのだから。

 そう胸に誓いを立てて、俺は大学の校門をくぐった。

 

 それから数日後、さっそく事件が発生した。

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