第7話
状況に比して余りににショボい――もとい残念な己のスキルに暫しばし呆然となった俺だが、もう少し詳しく精査すれば状況改善できるかもしれないと思い直す。
心境的には「orz」を体現したい気持ちで一杯だが、例えそれをしても状況は変わらない。
とりあえず、ステータスを上から順に精査して行こう。
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『ハセ・タケユキ/人間族/♂/AGE:21』
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これは特に問題はない。
敢えて言うなら、種族を指すと思われる『人間族』の表記くらいか。
おそらく、人間族の他にも色々な種族が居るのだろう。それこそ、定番のエルフやドワーフ、獣人も居るのかも知れない。
――魔族なんてのも居そうではあるが…。居たとしても、出来れは会いたくないものである。
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『レベル:1
HP:320/320
MP:90/90
状態:良好
職業:無職』
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この辺は、ファンタジーっぽいというか、まるっきりRPGだ。
どうやらこの世界ヴァイスにはレベルの概念があるようで、日本のRPGの知識で言えば経験値を溜めてレベルが上がっていく感じなのだろう。
転生したばかりの俺は、当然レベル1だ。
せめてレベルがカンストしていれば状況打破も容易だったろうけど、そういった事は出来ないと女神様が言っていたし、仕方がない。
そして、HPやMPの概念。
それぞれ、ヒットポイントとマジックポイントの略なのは確定として、ひょっとしてHPが0になったら死亡という解釈で良いのだろうか?
逆に言えば、1でもHPが残っていれば死なずに済むという事でもありそうだ。……HP:1の状況って、ほとんど死んでるけどね!
MPに関しては、いかにも剣と魔法のファンタジー世界に来た! って感じで若干テンションは上がるが、肝心の魔法の使い方が分からない。
従って、これ以上の考察は不可だ。とりあえず、保留。
状態というのは、『毒』とか『麻痺』とかRPGの定番の事だろう。
健康そのものなので、状態は良好というわけだ。
そんなの言われなくても、知っているよ!?
――もしかして風邪を引いたら、『状態:風邪』とでもなるのか? そこは、ちょっと興味ある。
そして、職業。
無職。
つまりは、ニートである、と。
それは仕方ないよ。転生したばっかだもん!
なんなら、職業:遭難者(サバイバー)でも良いけどな!
ヤケクソ気味にそんな事を考えながら、ここまでの検証結果を振り返る。
状況は、まったく変わっていません!
やはり、託せる望みはスキルにしかないか。
やはり、肝はスキルなようだ。
俺はステータスの中にあるスキル一覧をもう一度確認する。
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『生命力強化』
『異常耐性』
『アイテムボックス』
『言語習熟』
『マッピング』
『鑑定眼』
『運命天秤ラックバランサー』
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この世界の平均やスキル自体の希少性を知らないから実際の所どうなのかはともかく、数の上ではなかなかのものだと思う。
ただ、そのラインナップがなぁ…。
使える使えないで言ったら、間違いなく使えるとは思う。
その上で、敢えて言おう。
「この状況じゃ、あんま役立たねぇ……」
漫画やアニメでよくあるどんよりとした空気を醸しつつ、呟く。
『生命力強化』や『異常耐性』は良い。
字面から推測するに、しぶとく生き延びられそうなスキルだ。
『アイテムボックス』。
これは異世界モノの定番と言える。
非常に便利なスキルであるのは間違いないが、現状において役立つとは思えない。
次、『言語習熟』。
多分、異世界の言葉が理解できるスキルなんだろうけど、肝心要の現地人が居ないこの場において、このスキルは無駄の一言だろう。
このスキルが活躍するのは、街や村など人がいる場所に行った時をおいて他にない。
樹海のど真ん中では、無価値である。
『マッピング』。
これは、地理を記録するスキル、かな?
目的地を設定したら案内してくれるようなナビゲーションシステムを搭載してないだろうか。
――――してたら良いなぁ。
『鑑定眼』。
これも、異世界モノでは定番。
見たモノの名前や情報を教えてくれる超便利スキルだ。
食用か否か、毒の有無を調べられれば、この危機的状況サバイバルにも少しは光明が、見えるか?
最後は、『運命天秤ラックバランサー』。
――――なんだ、このスキル?
これだけは、推測すら出来そうにない。
「もっと詳細が分かったりしないのかな」
ステータスが記されたプレートを眺めた後、思い切って手を伸ばす。
見た目がタブレットっぽいので、それこそタッチパネル式に操作出来たりしないだろうか、と思っての行動だった。
とりあえず、スキル一覧の一番上、『生命力強化』の表示に指で触れる。
果たして、その行動は正解だったらしく、表記が次の様に変わる。
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『生命力強化』
常時発動型(パッシブスキル)。
内外からの肉体的ダメージに対する耐性を高め、HPの減少を抑える。
致命傷を受けてもHPの残り1ポイントで生き残る確率が飛躍的に上昇する。
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なるほど。こうやってスキルの詳細を調べられるわけか。
さっきの考察は、他の異世界モノのラノベやRPGに照らし合わせた推測でしかない。
これは要検証、だな。
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