第3話 その背に背負うもの

「で? その翼の間に背負ってるもんのことぐれえは教えてくれるんだろうな?」

隕石探しを終えた俺らは、宇宙を見上げ寝そべっていた。


「なんだ、気づかれてたか」

ウォルスはそう言って身体を起こす。そして、背からでけえ鎌を取り出した。


「おい! 武器じゃねえかそれ! いいのかよ、持ってて!」

俺は慌てて起き上がり、周りに人がいないか確かめる。


争いが禁止されているこの国では、攻撃できるもんを持つこと自体、御法度だ。


だが、ウォルスは涼しい顔で立ち上がると、それを振り回して見せる。

「どうだ? かっこいいだろ?」


「……あ、ああ」

ウォルスのキラキラした笑顔に気押され、俺はそう言うしかなかった。


だが……正直かっこよさはわかんねえな。


「つーか、どこでそんなの手に入れたんだ?」

ウォルスに問いかける。


すると、ウォルスの視線が泳いだ。

「あー……」

鎌を背に戻し、ウォルスが俺の隣に座り込む。


そして、俺の目を見据えるとこう言った。

「貰ったんだよ、陸国人から」


俺は目を見開く。

どういうことだ? 陸国人と交流なんてできねえだろ、普通。


「……詳しく話せ」

俺が低い声でそう告げると、ウォルスは観念したように深く息を吐いた。


——ウォルスの言い分はこうだ。

陸国には、標高の高い、空国にとても近い場所があるらしい。


雲間にそれを発見したウォルスは、そこで一人の陸国人と知り合った。


金っつーもんが必要なその陸国人は、ウォルスに隕石を見たことがないかとこぼす。

なんでも陸国ではそれが高く売れるんだと。


隕石など知りもしなかったが、大見得を張ったウォルスは、次の雲間に持っていくと告げた。

そしてその代わりにと貰ったのが——


「……この鎌ってわけか」

俺は、「なるほど」とうなずく。


ウォルスは得意げに鼻を鳴らした。

「翼の間に背負えば、この国でも意外とばれねえもんさ」


俺は額に手を当てる。

「おいおい」


こいつの度胸はどうなってやがんだ。

「偉い人たちにバレたって俺は知らねえからな?」

ひらひらと手を振る俺。


だが、ウォルスはそんな俺を笑い飛ばしやがった。

話を終えたウォルスは、頭を枕に再び宇宙を見上げる。その顔はなんだか晴れやかに見えた。


「なあ。つーか……そいつ女だろ? その出会った陸国人」

「ああ!?」

俺の言葉にウォルスが飛び起きる。


「……だったら、なんだよ」

ウォルスは首に手をやり、平静を装っている。

だが俺は、ウォルスの耳が微かに赤くなっているのを見逃さなかった。


「ふっ。いーや、なんでもねえよ」

俺は口笛を吹きながら、雲に体を預ける。


……楽しそうでいいじゃねえか。


海国人やら、陸国人の徒競走を見るよりよっぽどいい。

「んで? 次の雲間はいつなんだよ」


「んー、多分もうすぐだとは思うんだけど」

ウォルスは雲に視線を落とし、手元の雲を掴む。


「わかんねえんだよなぁ」

ウォルスは掴んだ雲に息を吹きかけた。

雲はふわっと浮いて漂っていく。


「なるほど。しばらく時間がありそうだな……それまで何して過ごそうかねえ」


俺がのんびりそう言うと、ウォルスは凄い勢いで振り向いた。

「まさか、着いてこようとしてるんじゃねえだろうな?」


俺は片方の眉を吊り上げる。

「あん? そのまさかに決まってんだろ」


こんな面白そうなもん、放っておくわけねえんだよ。


「暇つぶしだっつって、俺を隕石探しに狩り出したのはどこのどいつだよ」

「ぐわぁ……! 俺だあ!」


俺はニヤッと笑い、体を起こす。

そして頭を抱えるウォルスの肩を叩き、こう言った。


「そういう訳だからしばらく頼むぜっ、ワル」

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