三年生編

第33話 新春新学期スタート!


朝。

けたたましく鳴り響く目覚ましを止め、俺は目覚める。


上半身だけを起こし、伸びをする。

そして隣には――。


「おはよ♪ お兄ちゃん」


俺のベッドに一緒に横になっている楓の姿があった。


「はぁ…またか…」


これで何回目だろう…。

この春休み中、毎日俺のベッドに忍び込んでは身体を密着させてくるのだ。


正直暑い…。


「お兄ちゃん、今日から私も同じ学校だよ!」


早朝から楓の元気な声がこだまする。


「あぁ、知ってるよ。ちょっと実感がわかないがな」


「え? なんで?」


「だってなぁ、あんなにチビだった楓が今はもう高校生だもんなぁ。いろいろ感慨深いものがあるんだよ」


「ムッ! チビって言うなぁ!」


楓が怒った様子で頬をぷくーっと膨らませる。

俺はそれを見て苦笑する。


(全く、ヤンデレ部分がなけりゃ可愛い妹なのにな)



――――



俺と楓はいつものように通学路を歩く。

季節が季節と言うことで、至る所に立派な桜が咲き誇り、優しい風によって桜吹雪が舞っていた。


(この光景、渚とも一緒に見たかったな…)


「ねぇお兄ちゃん…」  


 隣を歩く楓から圧のある声が飛んできた。びっくりした俺は戸惑いながら返事を返す。


「な…なんだ…?」


「今…虫の事考えてたでしょ」

 

「え…? 虫?」


 俺は一瞬言ってる意味がよく分からなかったが、楓が虫呼ばわりする人物など残念ながら一人しかいない…。


「楓…人を虫呼ばわりするのは感心しないぞ」


「じゃあ泥棒猫…」


「名前で呼べんのか!」


「むり…!!」


即答だった…。そこには力強い意志を感じる。

俺はこれ以上は何も言わなかった。


「あれ? 親分じゃないっすか!」


その時、なんだが聞き覚えのある子分の声が聞こえた。


「アソラ?」


「はい! アソラっす!」


そこには相変わらずの元気な様子のアソラがいた。


「お前、なんだか久しぶりだな…。いろいろと…」


「はい? どゆことっすか?」


「あぁ…いや、こっちの話だ」


「そうすっか? あ! 楓さんもおはようっす!」


「う…うん。おはよう」


 楓はぎこちない様子で苦笑を浮かべていた。

そうだったな…。アソラも今年から俺達と同じ学校になるんだ…。


「それにしてもお二人さん、朝から何か言ってましたよね? 何言ってたんすか?」


アソラが急に話題を出してきた。


「いや…大したことじゃないよ。渚の事について話してただけ」


「あぁ! そうっすよ渚さん! 親分、渚さんとどこまで進んだんすか?!」


 アソラが前のめりになって渚との関係について聞いてきた。


 一応渚とは付き合うことになったが、そう言えばアソラにはまだ話してなかった。


 俺は渚と付き合うことになった事を包み隠さず話した。話してる途中、いろいろ思い出して少し恥ずかしくなったのは内緒である。


 そして俺が全てを話し合えると、アソラが顔を俯かせながらなにやら震えていた。


「アソラ…?」


「親分…」


アソラが短く俺の事を呼んだ。そして次の瞬間――


「おめでとうっすー!!」


アソラはどこから出したのか分からないクラッカーを道中でパァン!!っと放射した。


「うわ?!」


俺は突然のクラッカーにびっくりしてしまう。

てかなんでそんなモンを持っているんだこいつは。


「いやぁついにっすねぇ! ほんとようやくお二人さんが結ばれてくれて俺も嬉しいっすよ!」


アソラはまるで自分のことのように興奮した様子で喜んだ表情をしている。


ふとチラッと楓の方を見ると、楓は面白くなさそうに頬を膨らませていた。


「親分! これからは同じ学校っすね! いろいろお話は聞かせてもらいますから!」


「ははっ、あんま恥ずかしいから言いたくないんだがな」


催促するアソラに俺は苦笑する。


「ねぇアソラくん」


楓が突然アソラの名前を呼んだ。


「はい! アソラっす! 楓さんどうしたんすか? てか楓さんも一緒に聞きましょうよ! 親分の馴れ初め話!」


「あ…アソラ…ダメ…」 


俺は声を漏らすが、時すでに遅し…。


楓からはゴゴゴッっと聞こえてくるようなとんでもない圧が放出していた。


アソラもその圧を感じだったらしく、俺の顔を見た。


「親分…なんすかこれは…。楓さんなんか怖いっすよ…」


「察しろ…」


新学期の朝からまた一段と騒がしい。

俺はこれからの新たな学校生活を楽しみと同時に憂鬱に感じるのだった。




















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