第21話 三学期スタート!!
冬休みが明け、今日から三学期が始まる。
冬休みは本当にいろいろなことがあった。
アソラとゲーセンで出会い、みんなでクリスマスに集まったり、そして、渚と少し拗れたりと、思い出としては十二分くらいだった。
「最後にしちゃ充実したな……」
俺は教室の窓から外を眺めながら呟いた。
周りは久しぶりの再開などで騒がしい。他にも、宿題をし忘れた奴や、年末の紅白の話などが聞こえてくる。
その中でも、もちろん俺に声をかけてくるやつも居て――。
「よぉ凪ぃ。相変わらずつまらなさそうな顔してるなぁ」
「どうしたどうした? 朝から辛気臭いぞぉ〜?」
「新学期早々お前らはうるせぇな」
開口一番失礼な事を言ってのけるこいつらに、俺はめんどくさそうな様子を見せる。
だがそれでも野郎どもは俺をからかうのやめない。
だが、俺もべつに嫌というわけではない。
こいつらとのこんなバカ騒ぎも日常茶飯事である。
「凪、お前どうした? なんか、スッキリしたような顔をしているな」
「え?」
「あぁ、それ俺も思った。なんかモヤモヤが晴れた? って感じ」
「あ〜、まぁそうかもな」
俺は軽く返事をしておいた。
実際、清々しい気分なのは本当だった。
あのデートで俺は自分の本当の気持ちに気づく事ができた。
正直、それを認めてしまえば、俺は必ず後悔すると思っていた。だけど、実際は俺の心はまるで霧が晴れたように清々しかった。
「凪、お前冬休み何したよ」
唐突に一人の友人がそんなことを聞いてきた。
それに乗って、他の奴らも面白そうに話始める。
「お、それ俺も聞きたいぜ。ちなみに俺は家でず〜っと勉強三昧だったぜ」
「分かりやすい嘘をつくな。どうせ書店に行ってはエロ本を買い漁ってたんだろ」
「流石に偏見だ!!」
「お前ら可哀想な冬休みを過ごしてたんだな。俺はかわいい彼女ができたってのに……」
「はいはいおめっとさん」
「良かったなお幸せに〜」
「もうちょっとリアクションしてくれても……」
バカ騒ぎをする野郎どもを尻目に俺は頬杖をついて空を眺める。
空は一面曇り空だが、所々に隙間から光が差し込んでいる。まるで絵になる神秘的な光景だった。
何か良いことが起こるといいな…。
「せんぱぁい!!」
突然教室にそんな大きな声がひびく。
俺含め、クラス全員の視線が教室の入り口の方に向く。
「来ちゃいました!!」
そこには相変わらずの笑顔の渚がいた。
俺は渚が来た途端、心臓の鼓動が跳ね上がる感覚に襲われた。
そして、無意識に顔を窓の方に背けてしまう。
渚はそのまま教室に入ってきてまっすぐに俺の方に向かってくる。
気づけば野郎どもも少し離れたところに移動してこちらを遠巻きに見ていた。
渚がついに俺の席の近くまできて前の方にまわる。
「せんぱい!!」
渚が明るい声で俺を呼ぶ。
俺は自分でもなぜ目を合わせようとしないのか分からない。
ただ、ひたすらに目を合わせないように逸らす。
「せんぱい? なんでこっち向いてくれないんですかぁ?」
(そんなこと俺が知りたいよ……)
渚の言葉に俺は内心でツッコむ。
渚は何回も俺を呼ぶが俺はその度に無視を決め込む。
「むーーー!!」
ついに怒った渚が両手で俺の顔をガシッと掴んで無理やり正面を向かせる。
渚の顔が至近距離に視界に入る。
俺の顔は渚に両手でガッチリ掴まれているので顔を背ける事もできない。
「ふふ、やっとこっち見てくれましたね。せんぱい♪」
渚と俺の視線が交わるたび、俺の鼓動が高速で脈うつのが分かる。
至近距離の渚から発せられるいい香りが鼻をくすぐる。
俺は言葉を発しようにも口を開くことができなかった。
「せんぱい、そろそろ私に落ちてくれましたか?」
渚がニヤニヤした表情で聞いてきた。
「な、そんなわけ……ないだろ。冗談もたいがいにしろ」
俺はいつものように渚の言葉を一蹴する。だが、いつものようなキレがないことは自分でもわかっていた。
「あれあれ〜? いつもよりキレがないですねぇ? ほんとは私のこと"しゅき"になっちゃったんじゃないんですかぁ?」
渚がニヤニヤしながら煽るように言ってくる。
「こんのメスガキぃ……黙って聞いていれば好き放題言いやがって…」
「あれぇ? 何ムキになってるんですか? こんな事で怒るなんて、せんぱいもおこちゃまなんですね♪」
こいつの生意気モードは健在だった。
久しぶりにこのように馬鹿にされるのはどこか懐かしい。
ただ、それはそれ。これはこれだ。
俺はらしくなくムキになる。
俺の顔を挟む渚の腕をガッチリと掴んだ。
「え……?」
そこで渚からニヤニヤした顔が剥がれ落ち、少し笑いながらも戸惑う表情を見せる。
「せ、せんぱい? あ、あの……」
「生意気な後輩にはせんぱいの威厳をわからせないとなぁ?」
俺の鬼気迫る様子に渚は危険を感じたのか汗をにじませる。
俺は不敵な笑みをうかべる。
「ちょっと、せんぱい?! まっ……」
もはや周りのことなど見えていなかった俺は、そのまま渚に手を伸ばそうとする。
だけど、その瞬間――、チャイムがけたたましく学校に鳴り響いた。
そこで俺は正気に戻る。
渚の腕を掴んでいる自分の手を見る。
(ま、まて……、俺今何しようとしていた……?)
俺は震えながら渚の腕を離す。
もしあのままチャイムが鳴らなかったら、俺は一体何をしていたのだろう。
俺が青ざめていると、渚は無言で教室を出て、自分の教室に帰っていった。
するとその瞬間、交代するように野郎どもが俺のもとまでやってきた鬼のような表情で取り調べを始める。
俺は初日から憂鬱に感じる今日この頃であった。
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