ママにもらった「命」と出会い

数金都夢(Hugo)Kirara3500

「大人」になった日

 今日は「長い中断」を除いて数えた十六歳の誕生日。それは待ちに待った「大人の体」になる日。明日、この街にあるメーカー認定の整備工場に行って首から下を交換しに行ってきます。わたしはパパとママが作ってくれた小さなケーキにたった1本のローソクに灯った火を人工肺から押し出した温かい空気で消しました。わたしはケーキも含めて何も食べられないので実家に帰っていたアラサー独身の妹のえりかが紅茶を飲みながら食べました。夜、枕にコードがささっているのを確認した後、ベッドに横になりました。後頭部から送られてくる電気からにじむ温かさが気持ちよくて、両親とえりかの笑顔を思い浮かべながらそのままぐっすり眠りました。


 次の日の放課後、わたしはその整備工場に立ち寄りました。うちの高校は制服がなく、その日はそれがあるのであらかじめダボダボのポロシャツを着て登校しました。白衣を着たエンジニアの一人に案内されてある部屋に入りました。そしてわたしは彼女の指示で作業台の上に横になって頭をなでられながら眠りにつきました。


 そして目が覚めると首から下が立派な体になっていました。豊かな胸とスラリとした手足。これで高校に通うのがちょっぴり恥ずかしくなる体つき。もうこれからは肉体的な「成長」をすることはないんだな、ということを実感させられました。「大人の体」なのでバッテリー容量も十分で、もうこれからは「早弁」と言ってモバイルバッテリーを持ち込んで授業中にこっそり電気を吸い込まなくても良くなったのは嬉しいです。


 わたしは帰り際にしまむらに立ち寄って今の体に合うスポブラを買いました。いつもと同じやつだけどサイズ違いの。まだまだランジェリーに手を出す勇気はありませんでした。わたしは家に帰って、鏡の前に立つとポロシャツの内側の胸が自己主張を始めていたので、それを見て「まだまだそんなに大人じゃないよ」とついつぶやいてしまいました。そして押し入れに死蔵されていたえりかの制服を着てみました。サイズがちょうどよかったのでそれを着て高校に行くことにしました。


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