テラ・インフェルナ
渡辺
第1話 運命に導かれて
思いも寄らないことは誰にでも起きる事実だ。足の速い人が常に競走で勝つわけでも、頭の良い人が常に成功するわけでもない。人にはいつ何が起きて災難が降り掛かってもおかしくないのだ。
この考えは俺が17年生きて知った結果だ。リンゴが地面に落ちるように1+1の答えが2で……。2+2の答えが4であるように法則や数学といった絶対的不変な事実と言っても過言ではないと思う。
それを踏まえて俺は目を開ける。地面に座り込み、床に手をつく。感触はザラザラと硬いアスファルトではなくひんやりと冷たいツルツルのものだ。どうやら、この目に映る光景は幻覚の類では無い事が分かった。天井から地面までゴツゴツとした岩肌で、所々にコケも生えてる。前後にはどこに繋がってるのか分からない通路………うん。
「これは流石におかしいだろぉぉぉぉ!!!」
俺こと石黒翔太は通学中に異世界転移したらしい。
◆
財布よし、スマホよし、モバイルバッテリーよし、スマートウォッチよし、熊撃退スプレーよし、ハンドグリップ(127kg)よし、オシャレ指輪よし、爪切りよし、絆創膏よし、ハサミよし、メガネよし、裁縫セットよし、体操着よし、教科書類よし、筆記用具類よし、弁当よし、水筒よしと。
「ひとまず持ち物はこのくらいか、チートが無いぶん持ち物だけはそこそこ充実させてくれて感謝」
しかも学ランだから、そこそこ防御力ある。あ、胸ポッケにラノベ入れよう。心臓撃たれた時に「君が守ってくれたんだね」って言いたい。なんの思い入れも無い借りた奴だけど。
あとは熊撃退スプレーを紐で括って首からかけて、水筒についてるでかい紐を取って腕に巻き付けて、ハンドグリップをエトセトラエトセトラ──
「──という訳で手札確認と戦闘準備終了。洞窟探索開始だ!」
とりあえず当てずっぽうで前か後ろか洞窟の進む先を決める。先に進むにつれ色々と分かれ道があるが、全て右を選択する。迷路と同じ原理だ。時間はかかるかもしれないが、必ず出口に辿り着く。
「気楽に行くかー」
ちなみに意味も分からず登校中に異世界に来た俺だが。実はここが異世界だという確証はまだ無い。予兆もなく突然転移したのだ。こんな超常現象、魔法に違いないって思ったが。
「この洞窟、なんか未来的だよな」
苔などが生えているが、よく見ると地面はブロックでできており、奥に進むたびはっきりとしてくる。そして、もう途中から洞窟特有の岩肌ではなく綺麗な人工タイルに全て変わった。作りかけの研究所か何かなのだろうか?
「しかも光源が無いのに不自然に明るい。もしかしてSF系か?という事はまだ地球にいる可能性もあるのか」
一瞬で人が転移する転移災害の類だと考える事も出来るわけだ。すると俺以外に同じ境遇の人物に会えるかもしれない。なら一応、電波届くか確認するか………やっぱ圏外。
──ウィー
左側の曲がり角から物音が響いた。人か?……よし慎重に行こう。俺は熊撃退スプレーを持ちながらゆっくり曲がり角の奥を覗きこんだ。するとそこには見るからにロボットがいた。背丈は俺の半分ほどで所々錆び付いてる。
「熱源反応を確認。該当データを参照……該当データ不明。侵入者と断定します。」
「は?」
ロボットの腕が一瞬で銃に変形し、蒼い二つの光が俺を捉えた。
──ピュン!!!!
有無も言わさず放たれる光線。だが俺は警戒してたおかげか、撃たれる前に顔を引っ込める事に成功した。だが次はどうする?後ろに逃げるにしても後ろの曲がり角まで距離がある。つまり逃げてる間は死角はない一本道を進む事になる。格好の的だ。なら──
──ウィーン、ガシャン!?
俺は逃げる事はせずに死角で待機し、ロボットが出てきた瞬間、学ランを被せ、すぐ後ろにまわり袖をしっかり結んでロボットが簡単に解けないようにした。さっきは熱でこいつにバレた。ならまだ温もりのある俺の学ランなら視界も熱も感知出来ないように出来るはず。多分!
「よし………、もう撃ってこない。しゃっ!」
俺は今のうちに全力で逃げた。右側しか進まないと決めていたが、そうも言ってられない。あのロボットから出来るだけ距離を取るのが先決だ。
「ハァ、ハァ、ハァ」
しかし、あんなロボットがいるとか、これは人にあっても信用して大丈夫だろうか?侵入者認定されて人知れず処分されるのがオチなのではないか?ていうかそもそも一体全体何処なんだここは?何かの研究施設?って今考えてもしょうがな──
「ハァ、ハァ、──マジか」
俺は立ち止まり、息を少し整えた。何故立ち止まるのか、理由は簡単だ。がむしゃらに逃げた先に数百の青い光があるからだ。
「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」「侵入者発見」
「全く最高の人生だな」
──ピュン
「あれ?………」
俺は脚に燃えるような熱さを感じ倒れる。どうやら後ろから撃たれたらしい。見ると最初に出会ったロボットだった。どうやらあれだけ全力で走ったのに数秒でもう追い付いたらしい。ハハッ、最初っから詰んでたなこれ。
世界がゆっくり進み、今までの人生の記憶が無理矢理引き出される。燃えるように熱い痛みはそれにより掻き消される。ありがたい。走馬灯の楽しい思い出を振り返りながら俺は今際の台詞を吐き出した。
「じゃあな俺、そしてありがとう世界」
「初めて聞く今際の言葉だ」
──ゴゴーン!!
言葉が聞こえたと同時に、目の前に雷が落ちたのかと思うほど光と地響きが轟く。眩しさから、とっさに目を閉じる。数秒後、開けてみると。──先程のロボット全てが真っ二つに切られていた。
「は?」
そのロボットの残骸の中ただ一人、立っている勇ましい女性がいた。銀色の髪は短く、顔や腕には無数の傷痕があり女の身でありながら壮絶な戦いに身を置いた歴戦の猛者だと一瞬で分かった。
「さて、世界に感謝を述べるものよ。お前は何者だ?」
そう言って彼女は俺に詰め寄り首に剣を当てる。まぁ、今の俺、完全に不審者だし警戒するのも当然か。俺は手を挙げて誠実に答える。
「石黒翔太、17歳、7月7日生まれの田中丘高校二年生。部活動は帰宅部、父健二と母由美子との間に産まれた長男坊、趣味は筋トレと体力作り、最近はバク転が出来るようになった。彼女居ない歴=年齢、だけど顔はイケメンだと自負して──」
「待て待て待て多い多い多い!名前とここにいる理由だけいい!」
「自分でも分かりません。気付いたらここに居ました」
「何?連れて去られたのか?」
「多分転移しました。ここって外国ですか?ロシアとか?」
そう言うと彼女は黙って俺をじっくり見つめた。やっぱりここは異世界の線が高いな。お姉さんの格好、ザ・女騎士って感じだし。さっきの雷も魔法みたいだったし。
「………なるほど。ホラ話だと一蹴するには貴様の格好は不思議なものだ。もしやあの黒い布地も貴様の物か?」
彼女はそうやって後ろにいたロボットに視線を向ける。ロボットだけ切られて学ランには傷が全くない。あっ嘘、ロボットに風穴開けられてる。けど、着る分には問題ない。
「はい、そうです」
「ふむ、……決めた。こういう時は専門家の元に連れて行くのが1番だ。その者に見せてから処遇を決めよう」
彼女はそう言って俺の首から剣を退ける。どうやらひとまず俺をどうするかは保留になったらしい。
「あ、はい。分かりました。……えーとお名前をお聞きしても」
「名も知らないのも当然か。私はアリア・アルヴァリアだ。アリアで構わない。よろしくなショータ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「さて、ゆっくりしたい所だが、奴らがそろそろ湧いてくる。さっさとここを離れるぞ」
彼女はそう言ってそのまま歩き出した。
「いや、ちょっと!?俺足怪我してるんですけど!」
それも太ももに風穴。一応、手元にある水筒についてる紐で全力で縛るが全く血が止まらない。このままだと普通に死ぬ。
「ん?あーすまないすまない。どれ見せて見ろ」
彼女はそうやって撃たれた俺の左太ももをじっくり見た後………一言も断りもなく剣で焼いた。
「ぎゃあああああ!!!」
「よかったな。骨は無事だ歩けるぞ。」
よくねぇよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます