桐原冬子 生物としてあまりにも弱く、人間として気高い

 ※物語のネタバレとそこそこショッキングな内容が含まれています。







 ・元恋人:桐原冬子きりはらとうこの人間性


 本来なら、太一を部活に勧誘したみみみ先輩の話をするべきなんだろうけど、展開の都合上、彼女からいきます。


 桐原冬子は太一と同級生で、超絶のお嬢様だった。ですわとかおほほとか言い出しそうな彼女もまた、生き辛さを抱えている。


 適応係数46%。


 彼女はプライドが異様に高い。生まれ持ってのお嬢様。コンビニすら聞いたことがある程度という、常識では考えられない世界を生きてきた。


 けれど、お嬢様間でいざこざを起こしたことで、群青学院送りとなった。


 親に甘やかされ、祖父母にも甘やかされて育った彼女。


 どんな性格になるかなんて、決まっている。


 彼女にとって、生きるということは、ものなのだ。


 世界から人がいなくなり、一週間をループする世界に放り込まれた。


 8人が8人、各々自由に過ごすわけだけど、彼女の結末は大抵、





 餓死する。





 自分で食料すら手に入れられない。


 火の起こし方、調理の仕方、生きる術。一人では何も知らない。何もできない。


 彼女は、生物としてあまりにも弱い。


 渇きに耐え切れず商店で水をツケで持って行った時、誤って転んだことで水を全部こぼしてしまった。


 また商店に行って、新しいものを持ってくればいい。


 けれど、そんなことすらしない。


 だって、姿から。


 だから彼女は、ループする世界では大抵餓死する。生きる力のなさは、人類最弱レベルだ。


 でも、だからこそ彼女は限りなく人間らしい。


 犬や猫は、恥ずかしさで死を選んだりしない。生きることを優先し、プライドに縋ることはしない。


 生きていくことこそが、命だと知っているからだ。


 ただ恥ずかしいという理由だけで死ねるのなんて、人間くらいなものだ。


 彼女を象徴しすぎている台詞がある。



「うんざりする。ただ生きるためだけに、努力をしないといけないなんて」



 そんな彼女の弱すぎる、けれど人間でしかあり得ない美しいまでのプライドを、太一は綺麗だと思った。


 だから彼は、実験をすることにした。


 自分が人間として、どれくらい通用するのかを、試すことにした。






 ・依存という関係


 彼女の本性は、誰かに可愛がられたい、甘えたい、優しくされたいという、愛に似た扱いへの渇望だった。


 だって、家では何もかもやってくれる。尊重してくれる。可愛がってくれる。


 そんな風に育った彼女が、自分の力で生きるなんて無理に決まっている。


 だから、外部に求める。自分自身の全て包み込んでくれる優しさを。


 太一はそこに付け込んだ。


 誰とも話さない彼女に話しかけ続けた。


 放送部の部室に来てみなよと誘い、来てくれたら喜んでいる……フリをした。


 渇いていた体に、水を与えるかのように、太一は欺瞞ぎまんを注ぎ続けた。


 その結果、二人は恋人同士になった。


 太一はほくそ笑んださ。


 だって、自分の演技は、おそらく人間相手に通じるのだから。


 で、幸せな恋人ごっこは続く。最初だけ。


 冬子は徐々に、太一への依存を増していった。


 他の女性と話さないでとヒステリックとなり、見せつけるように人前でも性的なことを迫った。


 太一が気づいた時には、もう遅かった。


 甘やかしすぎた代償として、冬子との関係は恋人というよりも、依存の関係となっていた。


 だから太一は、関係をリセットすることにした。


 別れ話をして、嫌がり縋る冬子を振り払って、関係をリセットした。


 でも太一は甘く見ていた。


 冬子の人生をかけた依存心を。


 で、彼女がとった行動。




 わざと死ぬほどの傷を負って、太一の家に押し掛けた。


「死んじゃうかもしれない。痛い。私可哀そうでしょ?」


 腹部から漏れ出る血液。生命の飛沫よりも、執着のほうがよっぽど力強い。


 あまりにも弱くて。


 あまりにも人間らしい。


 こうして二人は、別れてまた不仲となったのでした。





 ・ループする世界になった後


 で、二人は恋人という関係をリセットした後に、一週間をループする世界に放り込まれる。


 どれだけ縋っても振り向いてくれなかった太一に、当然冬子はブチ切れているわけだけど、また太一がちょっかいをかけていくうちに、結局また甘えだす。


 そんなチョロいところが、けっこう男性から指示を得ているようだ。僕は他の子の方が好きだけど。


 でも太一も学習をしているから、冬子を甘やかしつつも、自分のことは自分でするようにと突き放すことも言い出した。


 でもこれは正しい。


 やってあげることで、相手は学習をするから。


「あなたはこんなことまでやってくれるんだ」


 それが続くと、人は堕落する。


 自分でできることをやらなくなる。だって相手がしてくれるから。


 それは生物として生きる力を削ぐことに他ならない。


 そこをわかっている太一はすげえとは思うが、少しだけ学習をしたことで、冬子との関係は甘いながらも、適度に距離もあるいい感じの距離となった。


 太一が冬子と交流すると、彼女は餓死するという展開から逃れられる。


 あー良かった。


 で、日曜日。


 仲違いをした放送部たちの諍いに巻き込まれて、冬子ちゃんは無事に射ころされちゃうのでしたー。






 また来週!






 ※これ着いて来られる人いるのかな……書き上げたら更新します。

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