第18話 感傷的なジャン
————あの
あれから
それはそれとして、自分のものとは別にこやつらの分も獲物を確保するのは骨の折れる作業ではある。佑は素直になんでも口にするがジャンの馬鹿と来たら、やれ蛇は嫌だ、鼠は勘弁だの色々と文句が多い。そう都合よく兎や鴨ばかりいるものか。まったく、獲ってくる私の苦労も知って欲しいものだ。
……っと、いかんいかん。私としたことがつい愚痴をこぼしてしまった。
我が
◇
「————『
「やった! 『
雨が止んだのを見計らって、水辺のほとりの木陰からジャンが姿を現し喝采を送った。腹を見せて水面に浮かんでいるワニらしき生物の額にはその言葉通り、似つかわしくない真紅の巨大なツノが鈍い輝きを放っていた。
ワニ型『
「……ついでに食料も確保できたな。ありがたく頂こう」
水面にはワニ型『
◇ ◇
————夕暮れの河原では木串に刺された魚が焚き火の熱にあぶられ、その身から
「いやあー、どっちかっつうと肉派なんだけど、魚もこうやって食うと美味えモンだな!」
豪快にかぶりついたジャンが上機嫌で食べカスを飛ばした。一方、焚き火の向かい側に陣取るタスクは、
「俺は魚の方が好みだな。
「ヤマメ?」
「川魚だ。塩を振って食せば飯が何杯でもいける」
「へー……、なんでも黙々と食うアンタがそこまで言うなら、そのヤマメってのは相当に美味いんだろうな……!」
想像で垂れたヨダレを拭ったジャンは後ろを振り返り、焼かれていない魚をついばんでいるハヤブサに声を掛ける。
「シュウ! お前は肉と魚、どっち派なんだ?」
「そいつは肉の方が好みだ。与えられれば魚も食すが、好んで自ら狩ったりはしない」
「そっか。でも、人からもらったメシは美味えモンだろ?」
「ピピ……」
ジャンの言葉にシュウはクチバシを止め、「偉そうに、お前が獲った訳じゃないだろう」というような視線を送った。しかし、ジャンはその視線の意味を全く読み取れず、かたわらの真紅のツノへ顔を向ける。
「……それにしても『
「では当分、路銀には困らないということだな?」
タスクに尋ねられたジャンは傷つかないように『
「ああ。これで当分シュウちゃんにメシの調達を頼まなくて済むし、いい宿にだって泊まれるぜ」
「俺が言っているのは『
真剣に話すタスクの様子にジャンも真顔に戻って答える。
「……分かってるさ。アンタのおかげで今まで随分稼がせてもらってんだ。その分はしっかり働くぜ」
「…………」
「アンタの気持ちも分かるよ。ここまでフソウ人の『コミュニティ』をいくつか回ったけど、全部空振っちまったモンな。でも、他にいい作戦が浮かばねえ以上、数当たるしかねえよ」
腕を広げて話すジャンに、腕組みをしたタスクが口を開く。
「報奨金を出すというのは?」
「見かけた奴に金一封ってかい? やめときな。ガセネタ掴まされてスッカラカンになるのがオチだぜ」
「…………」
ジャンの言葉にタスクは無言で視線を落とした。代わりにジャンは夜の割合が濃くなってきた空を見上げる。
「……死んだ親父が言ってたんだけどよ。俺が生まれる前————『産業大変革』前までは
「…………」
「……ま、そういう俺も一攫千金を狙って『
「ジャン……」
タスクに名を呼ばれたジャンはハッとした表情を浮かべると、慌てて串をサッと掴んだ。
「……しゃべり過ぎちまったな。食おうぜ。冷めちまう」
「ああ」
珍しく感傷的になったジャンにタスクはそれ以上なにも訊かなかった。
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