第2話 優しいグリフォンと大満足の満腹ご飯
私は下を向く。確かにすこぶるお腹は空いているけれど、なにも今鳴らなくても良いじゃないか。恥ずかしいなぁ。ほら、また沈黙だよ。この沈黙、耐えられん……。と、1人で悶々としていると、鳥頭が話しかけてくれたよ。
『……お腹、減ってるのか?』
「……うん、ちょっと? ううん、しゅこぶるおなかぺこぺこ」
『しゅこぶる? すこぶるか? 何だその言葉は?』
ああ、すこぶるってこの世界にはない言葉なのか。
「とってもってこと」
『ふん。落ちてきたくせに、図太いやつだな。……まあいい。お前、なぜ落ちていたのかは分からんが、行く所はあるのか? 親や兄妹は?』
「……いましぇん」
『いないのか。ふむ、そうか……。よし、分かった。行く所がないのであれば、とりあえず私の巣へこい。ご飯を食べさせてやる。そしてご飯の後に詳しい話を聞こう』
「ごはん?」
え? 突然降ってきて、思いきり頭にぶつかってきた私に、ご飯をくれるの?
『何だ? 別に私は人間は襲わんぞ。敵対してくるのなら別だが、何より私は人と関わって生きているからな。お腹が空いているんだろう? どうする、私についてくるのか来ないのか』
「お、おねがいちましゅ!!」
『よしっ!! では行くぞ、しっかり掴まっていろ!!』
大きな鳥頭さんはカッコよくニッと笑うとそう言い、翼をさらに広げ、ぐんと上昇し始めた。私は急いで羽毛を掴み直す。羽毛が思っていたより温かくて、少し安心するよ。
数秒後、今度は下へと降り始めた鳥頭さん。ぐんぐん地上が近づいてきて、さっきまでは見えなかったもの、切り立った崖や山が、眼下にしっかりと見えてくる。向こうの方には村? みたいなものも見えてきたよ。
ちなみに鳥頭さんは、私を攻撃するどころか、助けてくれる優しい鳥頭さんだったから、さん付けにしてみたよ。鳥頭って呼び捨てだとちょっとね。
そうして鳥頭さんに乗ること20分くらいすると、今まで見た中で1番大きな森へと降り始めた鳥頭さん。
『この森の深い場所に、私の巣はあるのだ。仲間と共に暮らしている。私の仲間も人と関わって生きているからな、お前を襲うことはないから心配はいらんぞ』
「あい」
説明を受けながらさらに降りていけば、森の中心部分に、他とは違う場所が見えてきたよ。こう、木の葉の色が違うっていうか、他よりも高い木が多いっていうか、何しろ様子が違うの。
『あそこだ。降りるぞ』
急降下して、様子の違う場所へと降りていく鳥頭さん。そうして地上に降り立つと、そこにはたくさんの大きな巣があって。そしてその巣には、大きな鳥頭さんや、私よりも小さな鳥頭さんまで、たくさんの鳥頭さんたちがいたんだ。
というか、うん。後で確認するつもりだけど、鳥頭さんはグリフォンかな? しっかりとみんなの姿を見たら、よくライトノベルとか漫画に出てくるグリフォンにそっくりなんだよね。
『よし、降りろ……。いや、降りられるわけがないか』
『何だ、何で人間の子供が一緒なんだ?』
『あらあら、おちびさん、こんにちは』
続々と集まってくる鳥頭さんたち。
「こ、こんちゃ」
『空から降ってきたんだ』
『は? 空から降ってきた? 何だそりゃ』
『後で詳しい話を聞く予定だが、腹が減っているようでな。食べさせてやってくれ』
『分かったわ。人間だから、生肉はダメよね。軽く魔法で焼いて出してあげるわね。それから果物に木の実に……。さぁ、こちらへいらっしゃい』
ある鳥頭さんが、私の洋服を咥えると、そのまま歩き始めたよ。
『私もすぐに行くから。先にご飯を食べていろ』
「あい」
鳥頭さんと別れて連れて行かれた場所は、少し開けた場所で、小さな鳥頭さんたちがみんなでご飯を食べていたよ。
『この子たちも、今ご飯なの。ちょうど良かったわ。みんな、小さな人間のお客様よ。仲良くしてあげてね』
『わぁ、女の子!!』
『こんにちは!!』
『いっしょに、ごはん?』
『ええ、そうよ』
『わぁ!! こっち、こっちにきて。いっしょにたべよ!!』
中でも1番小さな鳥頭さんが私を呼んでくれて、連れてきてくれた鳥頭さんが、その子の隣に私を降ろしてくれたよ。ニコニコの小さな鳥頭さん。
それから連れてきてくれた鳥頭さんが、私の顔サイズの生肉や、果物、木の実を持ってきてくれて、お肉はその場で焼いてくれたの。そう、魔法でね。この世界には魔法が存在しているんだ。すぐに香ばしい、良い匂いが漂ってくる。
『さぁ、あとは食べやすいように切り分けて……』
そう言うと、大きな爪でササッとお肉を切り、私の前に出してくれる。お皿代わりに葉っぱが敷いてあるよ。
『さぁ、召し上がれ』
「あい!! ありがちょごじゃいましゅ!! いただきましゅ!!」
『いやだきますしゅ? なぁに?』
「ごはんたねるときの、ごあいさちゅ」
『ふへぇ?』
小さな鳥頭さんが、不思議そうに私を見てくる。なるほど、いただきますもこの世界にはないのか。
良い匂いのする、焼けたお肉を手で掴む。まぁ、手なのはしょうがないでしょ? そうして思いきりお肉を頬張れば……。
お肉は噛まなくてもすぐに口の中でとろけ、調味料なんてなくても、焼けた香ばしい匂いとお肉だけの旨みでとても美味しかった。何だったら、今までにこんな美味しいお肉を食べたのは初めてだったよ。
あまりの美味しさに、私は声に出していた。
「おいちい!!」
『そう、それは良かったわ。どんどん食べてね』
「あい!!」
本当に、ついさっきまで空を落ちていたなんて思えないよね。今はこうして、とっても美味しいご飯を食べさせてもらっているんだから。
『これもおいしいよ』
小さな鳥頭さんが果物を差し出してくれる。
「ありがちょ!!」
小さな鳥頭さんが選んでくれた果物も、とっても美味しかったよ。高級フルーツって感じかな。実がちょうどいい具合に熟していて、蜜もじゅるると溢れるくらいで、それが飲み物の代わりになるくらい。
ただ、他の大人の鳥頭さんが、硬い木の実の殻で私専用のコップみたいなものを作ってくれてね。その中にフルーツを絞ったジュースを入れてくれたから、それはそれで美味しいジュースを飲むことができたよ。
小さな鳥頭さんが顔を突っ込みすぎて、顔中フルーツジュースまみれになった姿が。なんか洗われてしょぼしょぼになり、別の生き物みたいになったみたいで、とっても可愛かったよ。
ほら、よくあるでしょう? ワンちゃんをシャンプーしたら、アザラシみたいに可愛い姿になるやつ。あんな感じでとっても可愛かったの。
と、こんな感じで、私は満足のいくまで、美味しいご飯をゆっくりと堪能したんだ。
そしてお腹がいっぱいになった私は……、うん、やらかしたんだよね。いつの間にか小さな鳥頭さんと一緒に、寝落ちしてしまっていたんだ。
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