第22話 2人パーティーじゃない

 一応、いくつか案を考えた。というか、そのためにトイレだと言って、避難してきたわけだからな。



「まず、一番いいのはウソをつかないことだ。ポポロが先にフクロウになって、これが真の姿だと説明する」

「ですね。私もそれが無難だと思います。私は後ろ暗いことは何もしていません」



 もっとも、問題はある。



「俺、職業は魔物使いじゃなくて剣士なんだよな。ものすごく、不自然ではあるんだ」




 一応、「ゲーレジェ」のゲームの仕様では魔物使い以外が魔物を仲間にできはする。極めて稀だが発生はする。




 でも、そんなイレギュラーを兵士が知っているかというと、かなり怪しい。

 俺が何か企んでいて、姿を変えた魔物とともに侵入を考えている――と思う確率のほうが高い気がする。



「そういえば、私のように人の姿になれるフクロウなんて普通はいませんよね」

「そういうことだ。つまり、兵士からすると、『なぜか剣士が魔物を仲間にしている』『なぜか魔物が人の姿をしている』という2つのイレギュラーが起きてるように見える。1つならともかく2つ重なると偶然じゃなくて、作為を疑われる」





 かといって、説明なしにポポロがタイルを踏むのはもっとまずい。魔物と判定されたら、兵士たちは即座に攻撃に来るおそれがある。



 というか、警備の兵士の仕事はそれだ。異常な存在が危害を加えないか慎重に確認して、王城に侵入されるぐらいなら、槍や剣で攻撃してくるだろう。





 ポポロも考えてはいるらしく、塀を見上げていた。


「フクロウになって私だけ一時撤退しましょうか? 私がフクロウになると知ってる人以外は真相は闇の中です」

「それもやっぱり怪しいだろ」



「何者かに誘拐されたとかはどうでしょうか?」

「俺はメイドが誘拐されたまま御前試合に出場するのか? 大貴族の家の名前も知らない召し使いが失踪したとかじゃなくて、一緒に旅してる人間が消えたんだぞ。観客からは冷血すぎる奴って思われる」



「じゃあ、1日後に無事に私が自力で脱出したことにしましょう」

「この世に存在しない誘拐犯を誰かが探し続けることになるだろ。それでこの城の兵士の一人が冤罪で捕まりでもしたら可哀想すぎる」





 難しいな。こんな空港内の金属探知機みたいなものがあるとは思ってなかった。




 あまりトイレに長くいてもおかしいか。そろそろ戻らないと。




「よし、ポポロの正体はフクロウだと説明しよう。人の言葉もしゃべれるほど知能の高いフクロウだから例外的に人の姿になれるし、魔物側から自発的に仲間になろうとしたからこっちが魔物使いかどうかも関係ない――きっとこれで行ける」

「明確なウソも言ってませんから、ウソで反応する仕様のタイルでも切り抜けられそうですね」





 ポポロもいけるという反応だ。

 よーし、これで!









 兵士たちはタイルの前で整列して待っていた。

 現時点で俺たちを疑う様子はまったくない。メイドが実はフクロウなんて想像しようもないしな。



「お疲れ様です。では、順番にタイルの上に立っていただけますか?」

「わかりました。まず俺から」




 俺はタイルを踏む。





 タイルから青色の風のようなものが吹きあがってくる。




「うわ! なんだ、この仕掛け!」

「あ、反応について説明してませんでしたね、すみません。問題がなければ青色、邪悪な心を持つ者や何かを偽っている者は赤色に反応します」



 兵士の一人が説明する。ということは俺は青だから無事ということか。ポポロをどうするかずっと考えてたから偽りの心があるとも言えたが、多分それぐらいの微細なレベルだとセーフなんだろうな。




 俺はタイルを降りた。


 さて、それじゃ、ポポロがフクロウだって伝えるか。

 罪は何も犯してないのだから、許されるはずだ。胡散臭いから、今回の宮廷御前試合出場は取り消しということだったら、それはそれで仕方ない。




 ポポロが兵士たちのほうに数歩歩いた。



「すみません、私はメイドとは申しましたが――」





 その時――




 タイルから緑色の光が強く現れた。





 えっ? 何が起きたんだ?





「どうしたんだ! なぜかタイルが起動しているぞ!」

「しかも、色が緑ってどういうことだ? 青でも赤でもないぞ!」




 兵士たちが驚きの声を上げる。

 俺も異常事態に混乱していた。






 なんだ、なんだ? これもレアイベントなのか!?







 と、無人のはずのタイルの上にうっすらと人の姿が見えた。





「おい! 誰かいるぞ!」

「いったい、何者だ?」




 兵士たちも叫んだから、誰の目にも見えたらしい。






 その姿を俺は知っていた。







 その姿はマヒア女神様だった。




「兵士たちよ、その場にひざまずきなさい。わたくしはこれでも神なのだから。マヒアの名、どこかで聞いたことぐらいはあるだろう?」




 兵士たちはその場に膝を突いた。

 命令に従っているというより、神の降臨を恐れて立てなくなったみたいだった。





「この場にいるポポロという者は人ではない。だが、邪念を持つ魔族とも違う。安心してこの先へ通すとよい」




 前にお会いした時とはまったく違う、あまりにも神聖で神々しいお姿だった。





「その……女神様……。通すか通さないかは我々一介の兵士では判断できず……」



「ならば、王にでも連絡せよ。神が来たのだから取り次ぐぐらいは誰でもやるだろう」




 その様子をポポロも呆然と見つめていた。



 マヒア女神様がちらっとポポロのほうを向いて、微笑んだ気がした。





 なんで急に助けてくれたんだと思ったが、ふと俺は自分のステータスを思い出した。



=====

アルク レベル22 冒険者ランクB

HP 122/122

MP 0/0

攻撃 132

防御 150

敏捷 141

知力  49

精神  19

容姿  39

幸運値999☆


スキル

超刺突・薙ぎ払い・這い上り斬り・みね殴り・一刀両断


仲間

クマ食いフクロウ(ポポロ)・マヒア女神

=====






 なぜか女神様が仲間の欄に増えてたんだよな。


 仲間なら俺の次にタイルを踏んだってなんらおかしくはないのだ。

 ポポロとの2人パーティーじゃなくて、マヒア女神様も含めた3人パーティーだったのだ。

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